ES-MEN 10

2007年8月29日
「3人ともバイタルは不安定のよう!こっちは呼吸促迫に・・・」
 わずかな記録、付きナースの情報を頂きつつ・・

「こりゃ、挿管が必要!」
「動脈血は分らないのか?」僕はその右の患者を確認。左はまだ軽症っぽい。

「ニップネーザルは厳しい。アンブーは?アンブー!」
「アンビューだろが!オヤジの医者かお前は?」
 慎吾はアンビューを頻回に押し始めた。

 横綱は、顔を真っ赤にしたまま立ち尽くす。

 僕は中間の患者の瞳孔などを確認。
「血圧がすごく高い!呼吸はむしろ・・脈も・・遅いな!瞳孔はと!」
 左右差が著しい。レベルも低い。

「CT行こう!CT!おいお前!」
 酸素吸入開始、点滴を取り終わり、近くの不慣れそうな横綱医者を指さす。

「そうだよお前!CT撮ってこい!頭部!」
「ういっす!」
「だる・・・」

「このバッグ!破れてんぞユウキ!」慎吾はパニクった。
「いちいち言うな!」
左の患者、身体所見を確認。
「脱水がひどそうだな・・・著しい高熱が!」

 慎吾は僕の背中から挿管チューブを抜きとった。
「かせ!」
「いて!やさしくやれ!」

 点滴を取り、モニター装着し見る。
「T波は高くはないな。中枢への影響は・・おい!CT行くぞ!慎吾!俺、あっち行くから!」
「(無視)看護師さん、あれ取ってください!」
「どある・・・!」

 CTへベッドを運び始める。冷酷に見つめる<キタノ>。童顔ではあるが、冷やかな表情だ。他人を見下すときの、あれだ。

 スーパーマンは本を読み終わり、呆れたとばかりに両手を挙げた。
「敵さんは間に合ったわけですね。こちらも居る意味がなくなった。では私はこれで」

 スミが歯を食いしばって立ち上がったとき、スーパー男はもういない。

 ベッド搬送を、2人のナースが手伝った。
「看護師さん。モニター見とけよ!あれ、ドクターは?」

 横綱の姿が消えたようだ。CTは終わって患者は戻ってる。
「なあ?さっきのドクターも呼んでくれよ!申し送りが・・」

 慌てて、事務員らしきカッターシャツが走ってきた。ハンコを押しそうになった事務長だ。

「はいはいはい!」
「ドクターだよ!さっきの横綱!・・」
「あはい。でも今後は、今後先生が」
「おれ?それは知ってる!アホかお前は!」
「あ、横綱の先生を・・よ、呼べばいいので?」
「あ?ああ」

 鈍い奴は、疲れる・・・!

1人目のCTができあがるとこ。

「予想では、クモ膜下かな・・」
「先生。白衣の着替えなどは自前で」事務長が何事もなかったようにふるまう。
「役人みたいに、振舞うな!」
慎吾は人工呼吸器管理を開始した。
「COPDだろうな・・たぶん肺炎を」

 近くのナース数人はろくに手伝わず、うつむいている。
「看護師さんたち。きちんと仕事をしてくださいよ!」と事務 長。
「チッ」うち1人の中年ナースが舌打ちした。
「頼みますよホントに!」

「ああ。でも田舎のスタッフてのはな」僕は田中くんに答えた。
「ボーッと眺めてるだけ!何もしてない!うちのオーク軍団よりひどい!」
「お前も結構言うよな・・・」
「能力は大丈夫ですかね?」
「田舎のスタッフに多くを求めたって無駄だよ!」
「ええっ?なんでもう諦めるかなあ!ドラマみたいにホラ・・・俺に任せろ!みんな叩き直してやるって!変えてやるって!」

(間)

「すべて、無駄」
「でも今後、救急がドンドン来たら」
「そうだよ。やれる奴がやるしかないだろ!俺達で!」
「いややっぱりそこはドクターが」
「どある!そこで突き放すか!」

 向こうから笑った白衣(キタノ)が近づく。スーパー男に続き、スミは去っていた。

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