ES-MEN 12

2007年8月29日
「った〜!なんちゃってへへ!」

 軟弱者は、驚愕した女を気にしつつゆっくり立ち上がった。

「なめとんか、おのれは・・あ、なめられるんか、ってとこか?」
 僕はタウンページを、もう1回振り下ろした。
「なんか怖くなってない?でっ!」また叩かれた。

「そうだよ。パワーを得た。俺は暴力医者だよ。どうせ」

 何度か叩き、<キタノ>はへたっと地面に座り込んだ。

「てて・・・もう!もう!何なんだよー!下手に出りゃいい気になりやがって!」
「俺らを騙しやがって・・それにこの仕打ち。人殺しかお前ら?」

「おれはな!おれは!ただ言われたことを!やってただけ!理想のために!」
「りそう?うそう?」

「そうだよ。アンタにゃないだろ?理想のため!目をつぶってやらなきゃならない事だってあんだよ!でもおれは潜入医師という役目でそれをこなした!それだけだ!」
「目的は金か?そうだろ?」

「先生・・マジでやるの?あの病院を?えっ?恥かくよ?」
「知らないよ。流れでそうなったんだよ!」

「えっ?うっ?あっ?」
「やると決めたんだよ。だってお前らに負けたくないもん。これ今思いついたけど」
「無理だと思うけどなーやめてやめて!」振りおろそうとすると遮った。

 僕は周囲を見回した。病院後方に巨大な山。病院前方は商店街の寂れた看板。

「真珠会病院のわがまま医者らが乗っ取ったとしても、地域に根差せない」
「売り上げで決めるんでしょ。目に見えてまーす」

「海外の薬品で金持ち相手に治療して成績上げる・・・もっと基本をやったほうがいいぞ。きほんを!」
「うちはバックがリッチだから!」

「るさいよ。消えろ」
「こっちには・・・強力なメンバーがいますよ。院長に・・」

「ハカセだろ?あいつは以前から知ってる」
「だったね」
「話し合えば、きっと分かる」
「さーどーでしょ?アンタのことはけっこうボロクソに言われてるよ」

<キタノ>はビビりながら運転席をパタンと開け、素早く飛び乗った。
 沈黙していた女はやっと破った。
「このチ●コヤロー!」

 煙を噴き上げながら、スマートな外車は破れたゲートへ向かっていった。砂埃が舞い上がった。

 ガルル・・・と吠えそうな犬を見かけたが、一瞥すると逃げた。
 だがその犬の首輪には・・・小さなカメラがある。

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