ES-MEN 14

2007年8月29日
 
 ハカセがのぞく窓の外、林道を外車がゆっくり登っていく。真夜中だ。

「・・・・僕の病院だよ!僕らの・・・!お前らのじゃない!」
机の上には、かつての勇士たちの姿があった。
「僕はあなたとは違いますよ・・・沖田さん!」

 大型病院を車助手席から真横に見る女医レイカ。スーパー男が運転。

「相手の病院は弱小なんでしょ?」
「こちらは200床。あちらは100床。こちらはインビトロ研究設備もあるよ。どう考えたって結果は分かってる。天地がひっくり返らない限り。実に価値のない練習問題だよ。偏差値40くらいのね。高価な治療薬は議員が税金からこっそり捻出するし、いいことづくめさ」

 ハンドルを余裕で切りながら、スーパー医師は呟いた。

 レイカは両腕で伸びをした。
「田舎だから、外来は固定客だけど・・でもうちはビップで稼いで楽勝ね」
「たちの悪いビップもいるよ・・・」
すると女医がうかない顔で、一瞬だが睨んだ。

「・・・・・」
「ん?あっははは。町議は。君の父上は別だよ。別。さ、パーティーといこうか!」

「あなた、口数多くてどこかイライラしてる」
「ん?さすが心理学も専攻しただけあるね」
「嫌なことでもあったの?」

「ちょっとね。血を見たんだ」
「血なんて。こんな仕事してたらいつもでしょう?」

 自分の血、とは言えなかった。

 スーパー男は黙り、密かに心で呟いた。
「(私の血を少しでも流させた者は、これまでの流儀と同様恥をかかせてやる!一生のトラウマを負わせる!)」

 心はスーパー狭かった。

 スポーツカーはやがて月の見える山頂を昇りつめ、降りていった。

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