ES-MEN 15

2007年8月29日
 昼間。

 真田第二では、大幅な工事が進められていた。
 正面の1階・2階は覆いがしてあり、職員・患者は裏口から入っていた。
 その裏口はつまり病棟の2階にあたる。2階から外は山の斜面が続く。

 病院横の医師宿舎から、出勤。

 階段を通じて、開放したベランダ(2階)を経由し、僕らは病室をかすめながら仮の入り口に入って行った。この仮の入り口は医局になる予定。

「おはようございます」
「ます」(自分)
「おはよっございます!」
「ます」(自分)

 ガヤガヤ・・・と2階のフロアをくぐりぬけ、正面の覆いをしてある・・・事務室へ。

「なんだよ。ここはもう出来てんだな」荷物を机に降ろす。
「あ。どうも」
タバコの上がる煙で、事務長が窓際にいることは分かる。

「町にも、金があると見えるな」
「地域の活性化です」

「活性化?町の金を使ってか?」
「事業ですよ。事業を起こすことが、活性化につながるんです。銀行は喜んで金を出す」

「銀行ってそんなに金貸すか?」
「銀行は生き残りをかけてますから。どんどん貸さないと困るんです」
「そうやって、いらん道路とかできたりするんだよな・・・!」

 一度田舎を経験した僕は、妙に毛嫌いした。

 田中君が、縮れた小さい紙を持ってきた。

「はあはあ先生!あ、おはようございます!」
「取ってつけたような挨拶・・」

「病棟はまだ寂しい状態なので、今日はここへ行ってもらいます!」
「どこ・・う?」

紙を見ると・・・
<クリーニング15%オフ>

「あんだあ、む?」
「ああっ!違った裏裏!」

 左に氏名、横に住所がある。患者の所在一覧だ。

「16名も・・・?借金の取り立てか?」
「ええそうで・・・んなわけないでしょうが!んも〜!訪問ですよ!ホウモン!」
「ホモ?」

 殴られそうになる前に、ダッシュした。
 そのまま走ると、エスカレーターのようなものが。勢いで飛び込んだ。

「う!うわあ!」
 なんと、水鳥拳だった。巨大なカラーのすべり台。つるっと足もとがすべり、そのまま尻もちついて滑った。
「ジーザス!やめてくれ!」

 見上げる工員たちの冷たい視線を受け、どんどん加速。ガラス張りの正面窓は覆いでいっぱいで外は見えない。

 スポーン、と滑り台から飛ばされ、そのまま床の上を滑った。
「ぎゃああああ!」
 工員が慌ててドアを開け、僕はそのまま直進した。

 正面の外では、ピラミッドのような砂が盛り上がっていた。
慎吾が役人と相談している。

「強固なゲートを作っていただかないと・・」
「でも予算がですね・・ん?」

 振り向くと、ズサササ・・・・と噴煙を上げながら、何かがピラミッドにぶつかった。
 慎吾はゆっくりふもとに近づいた。

「・・なんだ。ユウキか。何をしてるんだ?」
「ぷ・・・ぺっ!ぺっ!砂だらけだ!」
「あ。危ないよ」
「なに?」

 ガガガ・・・と大きな音がしたと思ったら、ブルドーザーの影で陰になった。
「うわあ!言えよ!」
 砂だらけで横転し、遅れてシャベルがピラミッドに突っ込んだ。

「はあ、はあ・・・」ヨダレを垂らしながら、足元をはたいた。歩み寄る慎吾。

「着任早々調子に乗って、僕への院長交代では困るよ!」
「うるサイヤ人!」

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