ES-MEN 17

2007年8月29日
 真珠会第二病院。

 病棟回診。白くて強固な病棟を、数十人の水色白衣が埋め尽くす。先頭はもちろんハカセ・・ではなかった。一見ヤクザ風のサングラス、長身。さきほどの墨(スミ)というドクターだ。白衣の下はミリタリー服。

「わあざわざハカセ院長が出向くほどのことではない現在の入院は珍しい症例がそこそこあるそれも一通りな新薬新薬使いまくりだ少なくとも専門医取得の症例数にも困るまいさて・・・!」

 呼び鈴をピンポーン、と押し、入る。
「入ります。回診を」
 前もって入っていた若いドクターが待つ。

 患者は中高年といった感じで人工呼吸器がついている。

「抗生剤が効いてきたようです。DICも免れ・・」
「病気は治すためにある。わあれ我はそれに手を貸しているにすぎん自分のおかげで治してると思ったら大きな間違いだ子育ても同じ親が子育て愛情なくとも子供は育つ・・」

 スミは聴診器を当てながら経過表を参照した。

 若ドクターは満足げに、ボーイのごとく立っていた。

「今後の問題点ですが、耐性菌が・・」
「そうだそれは今から私が言おうとしたことだこれだけ入院が続けば菌を育てるのといっしょだそれはつまり菌を甘やかせた誰だそれは主治医だ人間の命を中途半端な志で引っ張った治療の白黒をつけずにな!」

「白黒・・」
「そうだ治療は白黒だそれもつけられぬ医師はノラクロだよ若先生!君らも少し甘やかせたのが悪かったそして耐性菌とおぼしき医者が増えたならば!」
「・・・す、すみません」

 いきなり中堅ドクター2人が引っ張った。

「うわ!やめてください!どうして!」
「態度が気に入らん従って特訓を受けてもらう!独房で延々説教だ頭を冷やせえ!」

 スミはカルテに記入し、大きく笑った。

「ははは!ここは何でも研修できるそうやって君たちは来ただがもっと大事なことがあるのを忘れたか!君主に尽くすことだよ分かるかね若先生!」

 回診の最後尾、スーパー医師は軽蔑の眼差しで見ていた。

「このドクターがいなければ、もっとまともな病院だろうに」

 スミは、真珠会から送られてきたドクターだ。もとは軍の関連病院からのスカウトだ。実際の実力はひどく、ワシントンマニュアルをそのまま応用する男だ。しかしこの男にはカリスマが潜み統率力がある。西川にそこを買われた。

 VIP病棟といわれる部屋に差し掛かった。1部屋15畳ほどの部屋が30ほど。スミとナース以外は3歩ほど後ろにさがった。

「さあてここからが大事だ我々の予後を決める最重要因子だ」
 ピンポーン!の呼び鈴、続いて入る。

 中ではものともせず大型テレビが鳴っている。豪華な食事が載っていたと思われるトレイ、機密文書のような書類の山。老人はベッドから顔を上げ、悔しそうにイヤホンを外した。町議の風格がプンプンする。

「ああ、ああ。またかける」携帯を切ったようだ。
「もおしわけありません回診でしてこはいかに」
「変わりはない。聴診もせんでいい。で!」

 途中、女医が走ってきた。
「お父様!」
「ん!」

レイカは父親のもとに立った。どうやらスミを警戒している。

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