ES-MEN 22
2007年8月29日事務長の言葉に、慎吾は言葉を失っていた。
「慎吾、流しとけ」僕は近くで本を読んでいた。
「何を?」
「こいつは経営者の言いなりだから。怖いんだよ。裏切られるのが」
「下克上か?」
搬送を終えた救急車が、次々と引き揚げていく。おかげで病床はかなり埋まってきた。
僕は続けた。
「でも・・・俺も賛成ではあるよ。力の大小はピラミッドの流れに従順でないといけない。中間層に力を持たせたら、水面下で何をするか分らない」
「お前らしくない言い方だな・・・」
「オレが大学で中間どころを演じてたとき、大学の医局の雰囲気をなんとか変えようとした。ノナキーって奴に、<もうちょっと下に優しくせんかい>って。でも結局は混乱を招いて傷つく人間が増えた。いろいろ学んだよ」
「なんだよユウキ。お前もなんだかんだ言って、今の日本の堕落を作ってるんじゃないか!」
「日本だと!大げさな!」
横綱が、ずっと聞いて笑っていた。
「うはは!うはは!あんたら見てると、あきんわ!職、間違えたんちゃうか?」
「(2人)うるさい!」
事務長は僕の肩をもんだ。
「でも。学びましたね!成長した先生!」
「お前が言うとやらしいんだよ。でもお前から学んだことが多いんだよ実は」
「身内が一番!」
「そこまで気は許してない!」
昔、野球の試合でこの男に八百長試合を仕組まれた。僕はずっと根にもっている。
田中君が当直表を持ってきた。
「今日の当直は、ユウキ先生。はは、当直ばっかし!」
「どれ。見せろ・・・おい!なんだこれ!」
慎吾ものぞきこんだ。
「今日から3連続って、どういうことだ!」
「だ。だって当直はドクターがすべきだし」田中君は的外れしてた。
「それは知ってら!新しいドクターはどうなったんだ!もう1人来るって話は!」
「らら、来週には。しかもじょ、女医です。先生の好きな」
「なんと!」
「すい・・・」
「性格がよかったらいいや・・・」
「またまた!」
事務長の冷たい視線を受けて、田中君はうなだれた。
「事務長すんません。女医さんは来週には来ます」
「本当なんだろな!もいっぺん、確認しろ!」
2階から見下ろす、バリアフリーの1階待合。落ちたら確実にアウトだなと思いつつ、ガラス越しに思いを馳せた。
この下で救急処置が行われるんだな・・・患者が来たらの話だが。今はポツポツとしか来ない。
「な〜田中くん。どんな感じの女医なのか、教えろよ」
「関東の救命で修業した先生です。先生もご存知では・・・」
「関東の救命で修業?そんな女医、いたかな?」
ついに思い出せず、事務室に張ったテントの中で熟睡に入った。
「呼ぶなよ〜呼ぶなよ・・・どうかグウ」
東海道。
夜行が、波打ち付ける静岡の岸壁を沿って走っていた。
眠れず、波を見下ろす女性。
いつか海に降りた、駐車場・・・誰かがいたような気が。
何やら考えているようだった。
ハンカチを持った拳を、グッと握りしめ・・・。
列車はガタタン、ガタタンとトンネルに入って行った。
「慎吾、流しとけ」僕は近くで本を読んでいた。
「何を?」
「こいつは経営者の言いなりだから。怖いんだよ。裏切られるのが」
「下克上か?」
搬送を終えた救急車が、次々と引き揚げていく。おかげで病床はかなり埋まってきた。
僕は続けた。
「でも・・・俺も賛成ではあるよ。力の大小はピラミッドの流れに従順でないといけない。中間層に力を持たせたら、水面下で何をするか分らない」
「お前らしくない言い方だな・・・」
「オレが大学で中間どころを演じてたとき、大学の医局の雰囲気をなんとか変えようとした。ノナキーって奴に、<もうちょっと下に優しくせんかい>って。でも結局は混乱を招いて傷つく人間が増えた。いろいろ学んだよ」
「なんだよユウキ。お前もなんだかんだ言って、今の日本の堕落を作ってるんじゃないか!」
「日本だと!大げさな!」
横綱が、ずっと聞いて笑っていた。
「うはは!うはは!あんたら見てると、あきんわ!職、間違えたんちゃうか?」
「(2人)うるさい!」
事務長は僕の肩をもんだ。
「でも。学びましたね!成長した先生!」
「お前が言うとやらしいんだよ。でもお前から学んだことが多いんだよ実は」
「身内が一番!」
「そこまで気は許してない!」
昔、野球の試合でこの男に八百長試合を仕組まれた。僕はずっと根にもっている。
田中君が当直表を持ってきた。
「今日の当直は、ユウキ先生。はは、当直ばっかし!」
「どれ。見せろ・・・おい!なんだこれ!」
慎吾ものぞきこんだ。
「今日から3連続って、どういうことだ!」
「だ。だって当直はドクターがすべきだし」田中君は的外れしてた。
「それは知ってら!新しいドクターはどうなったんだ!もう1人来るって話は!」
「らら、来週には。しかもじょ、女医です。先生の好きな」
「なんと!」
「すい・・・」
「性格がよかったらいいや・・・」
「またまた!」
事務長の冷たい視線を受けて、田中君はうなだれた。
「事務長すんません。女医さんは来週には来ます」
「本当なんだろな!もいっぺん、確認しろ!」
2階から見下ろす、バリアフリーの1階待合。落ちたら確実にアウトだなと思いつつ、ガラス越しに思いを馳せた。
この下で救急処置が行われるんだな・・・患者が来たらの話だが。今はポツポツとしか来ない。
「な〜田中くん。どんな感じの女医なのか、教えろよ」
「関東の救命で修業した先生です。先生もご存知では・・・」
「関東の救命で修業?そんな女医、いたかな?」
ついに思い出せず、事務室に張ったテントの中で熟睡に入った。
「呼ぶなよ〜呼ぶなよ・・・どうかグウ」
東海道。
夜行が、波打ち付ける静岡の岸壁を沿って走っていた。
眠れず、波を見下ろす女性。
いつか海に降りた、駐車場・・・誰かがいたような気が。
何やら考えているようだった。
ハンカチを持った拳を、グッと握りしめ・・・。
列車はガタタン、ガタタンとトンネルに入って行った。
コメント