ES-MEN 24

2007年8月30日
事務当直とある程度会話して、母親はようやく落ち着いてきた。

「先生。さっきは私のほうも取り乱しました。でも子供でも診てもらわんと・・ったくこの病院は以前から・・・(舌打ち)」

僕は、事務当直に聞いた。
「小児科はないの?この近くは・・」
「ありますが、たいてい昼間ですな」

「夜間対応は・・町議はそのうち作るって話らしいな」
「あ。それ口先だけなんで」

「でも個人のとこが夜間も診てくれるんだろ?さっきあの母親が」
「でもこっからけっこうありますよ。車で20分かな。となり町です」

「遠いよなあ・・・」
「ここらの人は、車はないですから。タクシーも走っとらん」

「今まで、どうしてたんだ・・?」
「さあ、待つしか。でもそこの小児科も近いうち・・」

「えっ?そこか!潰れるとこってのは!」
「いい先生らしいけど、結局たたむみたいやね。所詮、都会から来た医者はそんなもんでっせ」

 翌日、そこら開業医の小児科受診として、僕は診察室をあとにした。
「ああ〜。今日はハズレの日だな・・・ぶつぶつ」

 テントに入る前、言葉がよぎった。

<アンタがするんやろ!医者やろ!医者やろいしゃやろしゃやろややろやろやややろ!>

 とにかく、よぎる。

 女特有のヒステリー。時代とともにクレームが多くなり(そりゃ理由はあろうが)、僕はこれが大の苦手になっていた。

 そうだよ。だから余計、小児科は嫌なんだ・・・。

「はっ?」
起きると、テントの周囲は足音がサラウンドしていた。

「なんだこれえ?」田中君がテントをふんづけた。
「いてえ!てめえ、わざとだろ!」

 起きてテントをたたんだ。

「今日は外来か・・・その前に病棟を」
事務長がピカピカのスーツで参上した。1階を見下ろす。

「お!ちょっとは増えてきたね!ん?電話か?」
女性職員が、子機を渡す。

「ええ。ええ・・・はい」
事務長は僕を凝視している。

「ええ。ええ・・・いけますいけます!」
声がなんだか興奮している。

 電話中のスタッフに流し目されるのは、あまりよくない兆候だ。

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