ES-MEN 27

2007年8月30日
 ムスッとしたナースらをくぐりぬけ、カンカンカン、と滑り台前まで駆けて行った。聞くところによれば、これは破綻した遊園地プールのリサイクルだそうだ。そういや病院横にテニスコートもある。

 視野が上下に激しく揺れていく。

「でや!」

 勢い余り、足裏でレールに着地。微妙なバランスで脚を前後に。

 そのままスル〜と勾配を下り始めた。左右後方にも着地音が聞こえる。左の轟音は横綱だ。

「基本から、教えてくださいや!サルでも分かるように!」
「どあるう・・・しっかりせいよお前!」

 途中小さくワンバウンドし、また着地。救急車のサイレンが、早くも聞こえてくる。

「ヘタな治療だったら、怒るでマンモス!」
 ズザザザ・・・・と砂埃をまき散らしながら着地。若干、左に回った。

 白衣はすでに2人向かっている。横綱はズドドンと鈍足。他の職員はカートなど物品の確認。

 背中の細長ポケットに、挿管チューブやドレーンを入れてもらう。
 後ろからウエストポーチをつけてもらい、出来上がり。
「おい!今アソコに当たったぞ!気をつけい!」

 すかさず拡声器。

<俺はここで待つ!慎吾と横綱は、玄関口で振り分けろ!>

「先生!」田中君が走ってきた。
「なんだ?」
「ファックス来ました。で、見ました!」
「どんな患者が?」
「字が汚くて!」
「うぬら!これじゃ何も分らんわ!たわけ者がっ!」

怒りでビリビリと破ろうとしたが、田中君が取り上げた。

「大丈夫!日ごろから慣れてます!」
「よしっ!」
「先生の字で!」
「だる!」

PHSを鳴らす。

「慎吾!救急車がここまで来ないが?手招きしたか?」
『それが来ないんだ!』
「行って来い!」
『横綱にやらせろ!』
「あいつは足が遅い。お前行け!」

(間)

『ちと偉そうなんじゃないか?院長だと思って』
「たまには院長らしく、させたらどうだ!」

 PHSを切り、慎吾は彼方へと走った。

 

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索