ES-MEN 31

2007年8月30日
 当院に平和が戻った。

「事務長。何なんだあいつら・・・?」
「先生らを過労に追い込むためでしょう。救急隊はスミによってあちこちから呼ばれたようですが、ここに運ぶのは救急隊も本望じゃなかったんでしょう」
「失礼なやつらだ・・・」

 事務長はパソコンを操作し、ベッドの状況を確認した。
「ジェニー先生が来られたので、負担は減るでしょう」
「そ。そうだ!・・ジェニー!」
「医局へ行かれましたよ」

 僕らはまた束になって、医局へと走った。

 ドカン、と戸を開けたらいきなり着替え中だった。
「イヤーッ!」とは言わなかった。平然とシャツを脱いでいる。

「ん。いいよ別に」
「べべ、別にって・・・」
 相変わらずドアから顔で覗いたまま、僕は立ち尽くしていた。慎吾が押す。

「やめろ!慎吾こら!押すな!」
「入れよ!この!」慎吾が押して入ったときは、彼女はもう新しい白衣に着替えおわっていた。

 ジェニーは、医局中央のテーブルに腰かけた。
「ふ〜。しかしおじさんたち、あれはないんじゃない?」

「え・・・」続いて入った慎吾が照れた。
「そこのエリートさんも、そうだけど。患者、助からないよ。あたしが救命にいたときは・・」
 ジェニーは少し言葉を詰まらせ、天井を見上げた。

「あんなもんじゃないよ。あれがずっと続くんだからさ。延々と」
「おっ。標準語だなジェニー!」僕は少し突っ込んだ。

だが妙な間があった。

「ど?仲直りした?」
「仲直り?俺が?誰と?」後ろを振り向く。

「ハカセよ。ねーどうして?理想や出来は月とスッポンで違えど、仲良かったじゃない?」
「くっそれは・・・俺が知りたいよ。でも変わったのはアイツだ!」

「そっかな〜・・・逆かもよ?」
「くっ!こやつ。関東の気質だ!」

 そうだ。僕らは・・ジェニーにハカセ。みな一時期ではあるが同じ病院で働いた仲だ。鬼軍曹とかもいて非常に勉強になった。僕にとってのターニング・ポイントだ。

 でも僕は非常勤で人事撤退、ジェニーも退職し東京の救命へ。ハカセら一部の医者らが残った。あのあと、病院が経営重視となってかなりゴタゴタしたって事は聞いたが・・・・。

 僕の知らない間にも、万物は流転していた。

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