ES-MEN 32

2007年8月30日
 昼間の休日。

 僕は散髪屋で、ヒゲを剃ってもらっていた。商店街のど真ん中。
 僕らの顔はまだ知られてない。

 商店街に出かけたのはそれなりの理由があった。ハカセのいる病院は、官僚・議員だけでなくここ地域にもきちんと根ざしている。ここの人たちはたくさんの資産、そう土地も・・持っている。

 田舎では、土地を持つものが幅を利かせる。かなりの発言力を持つ。当然、そういった人種は力を集める。不安が不安を呼び疑心暗鬼となると、人間はいい条件で集落を作り、絶えず周囲を警戒する。そう、また<水面下>の話だ。

 この伝統は長持ちする。親から子へと、確実に伝授される。なぜならそれは・・・揺れ動いてはならぬものだからだ。

 なので田舎でも格差は確実に存在する。この商店街も、町議のコネがあるハカセ病院のほうが都合がいいに決まっていた。利己者には<徳>など形のないもので、<得>がないと魅力を感じない。

 僕らはそんな彼らの、ハカセへの盲目的従属心を・・・見極めておきたかった。

「眉の下は・・」
「お願いします」
 眠りかけたまま、僕は答えた。華奢だが正確に、じいさんは作業する。

「よその方?」
「え?ええ・・・ところで」
「ふむ?」
「体の調子が悪いんですよ。どこの病院がいいですか?」
僕は毎度のように、調査を始めた。

「うーん。病院ね。今はあちこち潰れて・・」
「最近、引っ越しました。山の向こうの川に近いとこ」

「川の近く・・ああ、ああ。真珠会病院はどうやろ?」
「真珠会病院ね・・・」

「最近、できたとこや。日本の優秀どころが集まってきてる」
「優秀?」

「頭のええ先生らが集まって、研究兼ねて海外の新薬で治療してくれるんや!」
「実験台にされないかなあ・・・」

「頭のええ先生らやで?最先端の治療で長生きさせてもらいますわ!そしてこの町が学会報告されるんやって!わしら世界で有名人や!邪馬台国ゆかりの地に近いし!」
「あれって九州かもしれんのでは?」

「そんなこたあない!ぜったい奈良や!けったいなこと言うな非国民がっ!」
「ひっ・・はい、そうです」

もう、どっちでもいい。

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