ES-MEN 34

2007年8月30日
 慎吾が養育費・・・?家を買ったばかりのアイツが?幸せそうな家庭に見えたが・・・。

ハカセは続けた。
「その先生がわざわざやってきたのは、金のためなんですよ」
「まさか」

「金を稼がないと、養育費が払えない」
「バカ言うな!」

「バカ?僕は違いますよ。宮川が大阪の真田病院を乗っ取って、従来の職員の給与がガクンと落ちた。慎吾先生はかなり反発した。受け入れられず彼は自主的に退職」
「そんな事情があったのか・・・」

「住宅ローンとか、大変みたいですよ!家を追い出されて・・はは、割に合わない」

 ハカセは立ち上がり、札を余計に渡していた。ばあさんは深く礼。
 ラップを頭に巻いたまま、僕は追いかけようとした。
「おい待て!」

 外のベンツが、勢いよく駈け出した。
 運転席は、あの西川事務長だ。

「くそ〜!むかつくヤツ・・・!」

 ベンツの後部座席には、レジデントが数人座っていた。中央にスーパー医師。

「ご無事でしたか?ハカセ先生!」
「む?なにしに・・」
「お迎えに、ついてまいりました!先生の身の上にもしも・・」
「論文もろくに作成できない人間が、ウロチョロしないように!」
「はっ・・・!ははっ!」

「君は陸上部出身だよな。記録は山ほどある。実験でもいい成績を出してもらわないと」
「はっ!」
「そうだ。今度、あちらの運動会でひとつ。恥をかかせてみたら?」
「よろしいのですか?」

ハカセは脚を広げて座りなおした。

「それを今後の評価に入れてあげるよ」

 待ってましたとばかり、スーパー男にチャンスが来た。

 ポンポン・・と頭上をヘリが飛ぶ。サンルーフをずらすと轟音になり、また閉める。

 ハカセは天を仰いだ。
「スミか・・・逸脱してるな彼の行動は。そんなに戦争したいのか?」
「血気盛んな男です。医者か軍人か、どっちか選べばいいのに」

 スーパー男は、ハカセを上げるためならいくらでも周囲を蹴落とした。

「彼は高校同級のよしみで、ついてきたんだよ。黒板に<北方領土返せ>とか書いて、よく先生に怒られてたよ」

「(一同)あっははははは!」

 不機嫌な西川は昔のように無言で運転し、ほぼ毎日行われるパーティーへと向かっていった。

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