ES-MEN 37

2007年8月30日
パン!と銃声が鳴ったとたん、子供らのかけっこが始まった。


病院駐車場はこれまでにない盛り上がりを見せていた。少しでも町民に慣れ親しんでもらうために企画した運動会。

ガチャピン・ムックのバッタモンのハリボテ人形が、あちこち子供らにどつかれては、転ぶ。

観衆の中、スーパー医師は手を挙げて運営席へ近づいた。
「いいですか?」
「は?」ヤンママに囲まれご機嫌の事務長が見上げた。

「ここのスポーツは、やけにレベルが低い!」
「スポーツ?運動会ですよこれ。余興ですよ?」
「子供はね。この頃から競争は始まってるんです。ここで差がつく!」

スーパー男は、ズバッと上着を脱いだ。たくましい腹筋が割れていた。
みな歓声をあげ、種目が中断された。

「ここの代表者!おい代表者!」
スーパーマンはあちこち見まわした。
「院長はいるか!マヌケの院長!」

みな騒然となった。

「この僕と、勝負しろ!運動会など開く余裕があるのなら!・・・条件をやるよ!もし僕に駆けっこで勝てたら・・・1つ願いをかなえてやる!死ぬ以外ならね!あっはは!」

また騒然。

ガチャピンはムックに近づいた。
「はあはあ。暑いよ。慎吾」
「おい。どうするんだ?」

「駆けっこで、勝つ自信は?」
「ネットで調べたけど。あいつ記録保持者だぜ」
「願いをかなえてくれるとよ」

スーパー男は、審査員役の横綱を引っ張ってきた。まわしで裸。
「くるんだよ!そうら!」
「やめてでごわす!いたいでごわす!」

「そら、僕を押しだしてみろ!」
「ぬぬ・・てや!」
「ふん!」

横綱が両手で押し出しにかかったが、ポンと突き出た腹筋に飛ばされた。
「ぐわあ!」

ズデン、と横綱は後ろに倒れた。子供らは固まった。

「情けない!子供たちのヒーローは所詮、この程度の力か!」

僕はまたムックに近づいた。
「慎吾。ベイスン、持って来い」
「ベイスン?」
「薬だよ。はよ!」
「ちょっとまて何ゆえ?」
「はよ行け!」

その大声で、遠くのスーパーマンが振り向いた。

「ウェルウェルウェール・・・・!」
僕は観念し、頭の部分を外した。汗だくの頭が現れた。
「ぷはっ!どある!」

スーパーマンは握手を求めた。
「院長!探したぞ〜!」
「これより!院長命令をくだす!」
「はい?どうぞ!」

僕は振り向き、彼の差しだした手に向かって・・・

「ブリブリブリ!」下痢のフリ。
「(子供ら)あっははははは!」
「くだした!どある!」

スーパーマンの顔がひきつった。

後ろから慎吾が薬。渡された水で飲む。
「ごくごく・・・・慎吾。もうちょっと水!」
「・・・・・」
「ご主人に従わんか!」
慎吾は淡々とやかんで注ぐ。

僕はスーパーマンに近づき・・・
「ぷわあ!」
「わっ!」
彼は濡れた顔を振り払い、殴るポーズをとった。

「1度に5人倒したことがあるよ!」

「待って待って!わかったから!競技すりゃいいんだろ?俺が決めてもいい?」
「何でもいいよ!院長先生の好きなスポーツなら!」

事務長がテント下で腰を振る。

「(クチパク)それは、交尾だろうが・・・!」

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