ES-MEN 38

2007年8月30日
僕は提案した。

「ここからゲートのほうな。あっちまで走ってこっちへ戻る。先に戻ったほうが勝ち」
「ゲートまで50メートルしかないが・・・ははそうか。長距離だと逆転が狙いにくいか!」

 スポーツマニアの彼は眼を輝かせた。どうやら彼は・・・自分の本領をここ最近発揮できてないらしい。

 僕は腹に、何か手ごたえを感じるのを待った。
「うん!うん!うん・・・・!よし!くるくる!腹の力が!」
「腹筋が強くなったのかい?あっはは!」スーパーマンは屈伸をやめた。

「もしアンタが負けたら、願いがかなうのか?」
「もちろん」
「そうか。じゃ、辞めろ」

(沈黙)

「やめるだと・・・?」
「ここから去れ。うっとうしいんだよお前らは」
「誰にものを・・・!」
「ふざけんな民衆の心もつかめんくせに。お前は所詮一生、上のケツなめて生きていくんだ自分のケツさえ拭けずにな!」
「よく言った。大恥かかせてやる」

 これで準備が整った。相手の口数をまず増やし、会話のリズムを途中で乱暴に崩す。このやり方は汚いが、確実に相手のマイペースを乱れさせる。

 僕らは適当なラインに並んだ。

 ジェニーが号令を。
「えっと・・・ヨーイドンって言えばいいの?」
「(2人)はやくやれ・・・・」うずくまって、しんどい。

スーパー男は見上げた。
「こんな美人がいるんだね。猫に小判とはこのことさ」
「ジェニー!はやくやれっ!しんどい!」

「えっとじゃあ。ヨイドン」
「(2人)えっ?ああ!」

 唐突な号令にバランスを崩し、僕らはダッシュした。やはりスーパーマンが飛び出した。

(大歓声)

 スーパーマンの背中がどんどん向こうへ。あっという間に彼はゲートに達し、片足をついてそのまま反転した。こっちはゲートまでまだまだだ。

「ヒャホ!大恥かかせてやるよ!」
「何がっ!」すれ違いざま、彼の真横でブオオオン!と轟音が鳴り響いた。

「む!」

 大歓声で、みな何も気づいてない。

 轟音はコミカルに断続的に響いた。

 プッ!ピッ!ポッ!

「くははは!ちょと待て!」彼は洋八のように笑い転げそうになった。

「くわあ!」僕は必死でゲート手前で反転した。

「ききき!そんな!ききき!」笑いでバランスを崩したスーパー医師。

 僕は真剣そのもので走り、そのまま奴を追い越した。

 ジェニーは旗を何度も振り、手を口に当てていた。
「やったすごい!勝った!なんでえよ?」
 両脚でピョンピョンと跳ねる。

 僕は旗を取り上げ、無意味に砂場に突っ込んだ。
「イエアー!」
 何度も振りまわす。

(大歓声)

 スーパー医師は、そのままうなだれた。

 僕は情けはかけなかった。
「約束、守れよコラア!」

 かけつけたレジデントらが、彼を引きずるように連れていく。
上空でポンポンポン・・と飛んでいるヘリ。どうやら見学者のようだ。

 しかしそれがスミだったとは知らなんだ。

「待てよ。ベイスンは血糖降下剤・・・」
上空が白くなり、僕はそのまま倒れた。
「ふぎ!ぎぎ!しし、慎吾!はっぷはっぷ!」

慎吾は見下ろした。
「オナラに低血糖発作か。副作用情報に登録すっか!」
「ルパンザサード!・・・だるっ(気絶)」

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