ES-MEN 42

2007年8月30日
 僕は外来で、CTを眺めていた。

「このCTは、真珠会第二の?」
「ええ。コピーですんで、ここに置いといてください」中年女性は呟いた。
「肺門部に、影がある。これは今の段階ではどうとも・・・」明らかに肺癌だ。
「肺癌ですわ先生。診断はもう受けました。気管支鏡で」

「では、治療は?」
「治験やら何やら言われて、その薬飲まされた。1日1回」
「イレッサの類かな・・・」
「で、治療効果の判定とやらのCTをしたらな・・・もうええって」
「もうええ?」
「あなたの治療は終わりましたって」

「それってどういう?」
「で、あたし聞きましたねん。今後あたしはどうなるんですかって」
「そしたら・・?」
「もう、安らかに死ぬんでしょうねって。今から好きなことしていいよって」

「なんやて・・・?」
「そんな言い方。そりゃびっくりしました。あたしも何もい、言えません。もしあの病院だけがこの町に残ったら・・・残るかもしれないし!」

 医局で拳が大きく、机に叩きつけられた。

 しかし何か思いついた。

人間ドック用のワゴン車が発車し、僕は横に飛びついた。

「開けろ開けろ!」
「何だよ?遊びじゃないぞ?運転はオレだからな!」慎吾がドアをスライドした。
「乗せろ!山間部に行くんだろ?」
「1人で行きたいんだ!」
「あいつらに負けたくない!負けたくない!行動する!」
「何をすんだか・・・」

慎吾がボタンを押すと、アナウンスが流れた。
<こちら、真田第二。大阪より進出してきました真田第二。日頃より、お勤めご苦労さんです!>

「なんだこれ・・・」
助手席に座り、ベルトしながら聞き入った。
「役人に、声を入れてもらったんだよ」
「ださ・・・」
「ユウキは戻ってサッサと外来しろよ」
「終わった。数人は薬のみ」
「院長がそんな、出張ばかりしていいのか?」
「代理だから、いいんだよ」ナビをセット。
「どこ行く?」
「山間部行くついでに、寄りたいとこがある!」

慎吾は訝った。
「小児科なんたら言って騒いでんのに、真珠会に殴りこみか?」
「・・だと思ったか。そうちゃう。というか、ポジティブに早く解決させたい」
「?」
「潰れかけの小児科・・・」
「撤退は今日だぞ?」
「そうだ。だからそこに行くんだよ!」

 事務長と話し合ってそのまま流れそうな企画だったが、真珠会に立ち向かうためには、小さなことからコツコツやるしかなかった。

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