ES-MEN 45
2007年8月30日 真田第二の事務室。バリアフリーの下を見下ろし、藤堂は慎吾に延々と喋っていた。
「そこで俺は言ったんだ!あと2億!あと2億なんとかしてくださいって!そしたら俺!働きますから!働きますからって!仲間も都会から呼びますしって!」
額に血管を浮かし、彼は血便を、いや熱弁を奮った。こういう
熱いタイプを取り込むには・・・聞き上手に限る。
慎吾とジェニー、横綱は立ち替わりにローテーションし、話を聞いた。
だがジェニーはワゴトニーを起こし、ベッドで横になってしまった。
横綱はけいこの練習をしたくて、離れたがっている。
僕が医局から現れると、慎吾が振り向いた。
「ええ、ええ・・・・お!来た来た!さ!院長先生!」
「どある・・・!」
「さ〜さ〜!どうぞここへ!院長先生だからね〜なんせ!」
構えた椅子に腰かけたとたん、慎吾は1階を見下ろした。
「おっと来た来た!急患だ!行ってくる!」
「どこが急患だ!あの人歩いているじゃないか!」
言葉をよそに、慎吾は滑り台へと走った。
藤堂は大汗いっぱいで喋る。
「で。どこまで話しましたっけ?」
「子どもたちの・・」事務長は優しく促した。
「そうそう!子供たち!子供たちに罪はないんだ!親にかなり責任がある!何回説明してもダメなんだ!」
「田舎の子育て親というのは・・・・」
「金持ちならとっくに都会に出てる!なら残るのは!農業引き継いだ同居の嫁か!母子家庭だ!これがまたすごいんだ!」
どことなく気まずく、僕と事務長は目が合った。近くで看護部長が聞いているのだ(姿は見えない)。
「なるほど・・・」事務長は話にピリオド切った。
「そうだ!それと!こんなのがあった!これがまたひどい親で!」
「すみません先生!こちらから1点!」事務長は会話を切った。
「はい?」
「こちらからお願いしたいことが・・・実は前々から」
「前々から?気持ち悪いな。男からそんな・・」
何か、変な受け止め方をしているようだ。
「前々から。先生にお願いしたかったのです。当院には医師が4名。ユウキ院長代理。慎吾医長。銭亀医長。横綱医長」
「院長以外は、全部医長なわけですか?」
「力均衡のため、どこでもやってることです。彼らはいわゆる世間知らずで、経営面での配慮がなっていません。お金の観念がかけています。どうりで貯金がないわけです」
「なっ・・・こいつ!」少し癇に障ったが、それはまあよかった。
「そこで、あのですね。当院はこれから、内科だけでなく幅を広げたい」
「は・・・?」
「先生の小児科の経験を生かして、ぜひうちでも!」
こいつ、わざとらしい・・しかし作戦だった。
「小児科?僕がまた1人で?」
「いえいえ。先生は常勤でも、以前ほどの束縛はありません」
「というと?」
「先生は平日と土曜日一部勤務。当直は週に1回」
「俺がいないとき、小児が来たら?」
「彼らが」
事務長は渋り顔の僕らを指さした。
「彼らはやる気満々です。<小児だってしょせん小さな大人だ>って言ってました」
「おい!それって・・・はい。言いました」と繕い、僕は引き下がった。
事務長は攻勢し続ける。
「年俸制。まずは<2>ってことで。先生のみ破格です。横に官舎あり。もちろんタダ。当直のときはそこで待機で結構です!」
「当直はしかし。内科の患者は・・」
「内科が来れば、内科のドクターを呼びます。何なら副直として。給与はないですが。あたりまえですよね!ははは!」
僕やジェニーは、憮然とした態度で聞いていた。
藤堂は視線を感じ、ハンコを取り出した。
「ま・・・そこまで配慮してくれるのなら」
いとも簡単に、ハンコが押された。事務長は契約書を裏返した。
「裏にもま、いろいろ走り書きありますけど。毛が生えたようなもので。あとでごゆっくり」
「え!裏ページがあったなんて!祭日当直手当はなしって?おい!」
事務長はニヤつき、みな散らばった。
「そこで俺は言ったんだ!あと2億!あと2億なんとかしてくださいって!そしたら俺!働きますから!働きますからって!仲間も都会から呼びますしって!」
額に血管を浮かし、彼は血便を、いや熱弁を奮った。こういう
熱いタイプを取り込むには・・・聞き上手に限る。
慎吾とジェニー、横綱は立ち替わりにローテーションし、話を聞いた。
だがジェニーはワゴトニーを起こし、ベッドで横になってしまった。
横綱はけいこの練習をしたくて、離れたがっている。
僕が医局から現れると、慎吾が振り向いた。
「ええ、ええ・・・・お!来た来た!さ!院長先生!」
「どある・・・!」
「さ〜さ〜!どうぞここへ!院長先生だからね〜なんせ!」
構えた椅子に腰かけたとたん、慎吾は1階を見下ろした。
「おっと来た来た!急患だ!行ってくる!」
「どこが急患だ!あの人歩いているじゃないか!」
言葉をよそに、慎吾は滑り台へと走った。
藤堂は大汗いっぱいで喋る。
「で。どこまで話しましたっけ?」
「子どもたちの・・」事務長は優しく促した。
「そうそう!子供たち!子供たちに罪はないんだ!親にかなり責任がある!何回説明してもダメなんだ!」
「田舎の子育て親というのは・・・・」
「金持ちならとっくに都会に出てる!なら残るのは!農業引き継いだ同居の嫁か!母子家庭だ!これがまたすごいんだ!」
どことなく気まずく、僕と事務長は目が合った。近くで看護部長が聞いているのだ(姿は見えない)。
「なるほど・・・」事務長は話にピリオド切った。
「そうだ!それと!こんなのがあった!これがまたひどい親で!」
「すみません先生!こちらから1点!」事務長は会話を切った。
「はい?」
「こちらからお願いしたいことが・・・実は前々から」
「前々から?気持ち悪いな。男からそんな・・」
何か、変な受け止め方をしているようだ。
「前々から。先生にお願いしたかったのです。当院には医師が4名。ユウキ院長代理。慎吾医長。銭亀医長。横綱医長」
「院長以外は、全部医長なわけですか?」
「力均衡のため、どこでもやってることです。彼らはいわゆる世間知らずで、経営面での配慮がなっていません。お金の観念がかけています。どうりで貯金がないわけです」
「なっ・・・こいつ!」少し癇に障ったが、それはまあよかった。
「そこで、あのですね。当院はこれから、内科だけでなく幅を広げたい」
「は・・・?」
「先生の小児科の経験を生かして、ぜひうちでも!」
こいつ、わざとらしい・・しかし作戦だった。
「小児科?僕がまた1人で?」
「いえいえ。先生は常勤でも、以前ほどの束縛はありません」
「というと?」
「先生は平日と土曜日一部勤務。当直は週に1回」
「俺がいないとき、小児が来たら?」
「彼らが」
事務長は渋り顔の僕らを指さした。
「彼らはやる気満々です。<小児だってしょせん小さな大人だ>って言ってました」
「おい!それって・・・はい。言いました」と繕い、僕は引き下がった。
事務長は攻勢し続ける。
「年俸制。まずは<2>ってことで。先生のみ破格です。横に官舎あり。もちろんタダ。当直のときはそこで待機で結構です!」
「当直はしかし。内科の患者は・・」
「内科が来れば、内科のドクターを呼びます。何なら副直として。給与はないですが。あたりまえですよね!ははは!」
僕やジェニーは、憮然とした態度で聞いていた。
藤堂は視線を感じ、ハンコを取り出した。
「ま・・・そこまで配慮してくれるのなら」
いとも簡単に、ハンコが押された。事務長は契約書を裏返した。
「裏にもま、いろいろ走り書きありますけど。毛が生えたようなもので。あとでごゆっくり」
「え!裏ページがあったなんて!祭日当直手当はなしって?おい!」
事務長はニヤつき、みな散らばった。
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