ES-MEN 47

2007年8月30日
 忙しい。

 その日の午後は検査結果の問い合わせ電話サービスだ。つまり検診を受けた人たちは、当院より家の電話・携帯で聞くことができる。

「ええ!尿タンパクがそうなんですよ?え?ワンパク?」
『また行かんといかんかね?』

「大丈夫!まずはもう1回するだけです!気軽にどうぞ!寄って寄って!」
『先生がきちんと診てくれるわけやな?』

「ええ!僕をご指名ください!しょうがないな・・・万が一の携帯を!」
『うおっほそこまで?』

「よかったら、家族の皆さんも!」
『受けたほうがよかですか?』
「みんなで家族を支えなきゃね!」
『?よ、よっしゃ!連れてくるわ!明日にでも!』

 僕はこうやって巧妙に患者をネズミ算式に増やしていった。

 なお教えた携帯番号は業務用。昼間だけオンにしてる。みな必携だった。

電話を切ると、向こうで事務長がピース。

「オケイ!ノルマ達成!」
「ま、これも試練だよな・・・!」

 こうして、僕らは顧客集めにも奔走した。

 電話サービス中は、彼らはリラックスしている。心が通じやすい。そこが狙い目だ。

 外来の集客は成功、商店街の人までがお忍びでやってきた。

「ジェニー!君もやってくれよ!」僕は受話器を伸ばした。
「イヤ。頭下げてたら、バカにされるんじゃない?」
「今は収穫、いや集客のときなんだよ!」
「そんなゴマすってたら!医療の未来は患者主導になるわよ!」
「僕らは未来より・・・今だよ!今!」

 ジリリン、ジリリンと電話は鳴りやまない。

 診療、サービス、診療・・・事務長はパターンを変えることで、飽きのない仕事内容としていた。これはつまり、医者のプライドを逆手に利用したものだった。

 診療(ストレス↑)→電話サービス(使命感↑)→検査(充実感)→診療(またストレス↑)→勉強会(多弁による不眠効果)→診療(ストレス)→書類仕事(ストレス↑)→差し入れ(満腹感)→褒め言葉(連帯感)→口約束

 あいつはまさしく、孔明だ。

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