ES-MEN 50

2007年8月30日
ブオーン、とドクターカーが橋上に差し掛かった。

ガタンガタンと僅かな振動だが尻をむず痒がらせる。

僕はジェニーと往診に向かっていた。

「あー事務長。聞こえるか?」
『ええ。寄り道しないように!』

「するかいな。胸痛の呼び出しだ!この前の相原じいさん!見てみろ!やっぱり家族が電話してきた!」
『今回は夜間の出撃です。道は覚えてませんよね?』

「田舎道は昼間と夜間では全く異なる。誘導を頼む!」
『この前の道は、土砂崩れで通れません。他のルートを確認。次の角を斜めに入って。林道へ』
「おし。林道に入るんだな・・・」

 ハンドルをきり、林道へ。近く、ライトをつけた車とすれ違った。
「あの車・・・」
 ハカセのとは気付かず、そのまま林道へと進んだ。

 ラジオは。音入りが悪い。

<ジジ・・ただいま2機目の・・・・・炎が・・を>
「うるさいだけだな。消すぞ」

 ライトを消して、ゆっくり追いついてくるトレーラー。コンテナはない。

 大きなハンドルを鷲掴みにする西川。

「私の計算では、ヘタすりゃ真田に追い抜かれる・・・あいつらを甘く見てはいかん!」

 GPSナビで、ドクターカーの位置を確認。

イヤホンに雑音が入って、やがてクリアに。

『仮に売り上げがあちらに追い抜かれようと、病院は存続しませんよ』
イヤホンからハカセの声。考えはお見通しだった。

「どういう意味で?」
『あの病院がですよ。職員には疲れがかなり見えてる。これからもっと忙しくなるんですから。スミやキタノがやってくれます!』

「しかし・・・」
『うちのスタッフ数は彼らの4倍。体力的にははるかに優位。町議が予算を組まなくとも、この勝負はとりあえず持久で勝てる』

「ハカセ先生。民間ヤマトの患者がほとんど取られたんですよ?当院のベッドも空きが出てきた。みな真田に向かっているんです!」
『こちらが後々回収する。それまでのレンタルですよ!』

「本気でやる気、あるんですか!」
『だからこそ。早く実験病棟の予算を組んでくださいよ!』

連絡が途絶え、西川はアクセルをゆっくり踏んだ。
「ディスポが・・・!偉そうな口きくな!」

 キャタピラのようなタイヤが、ゆっくり林道の濡れた地面を踏み始めた。

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