ES-MEN 51

2007年8月30日
ドクターカーは暗闇を走る。

「だんだん・・細くなるな」

 僕はナビを見ているが、わけがわからない。というか、この田舎は登録されていない。右側に大きな川があることくらい。

 川は、月の明かりでキラキラ光っている。
「困ったな。そろそろ左折のはずだが・・・」

連絡がなおにが不安になった。

「事務長!ホントにこの道なのか?」
『地図で見たら、ここも車でも通れると思ったんですが。あ、この地図1970年のだ』
「バカヤロー!」

 トウモロコシ畑のように長く延びた草を踏みながら、ドクターカーは茂みを進んだ。目の前の高い草が、ミシミシと踏み倒されていく。

「自然破壊じゃないよね。ジェニー・・」
「さ、さあ。でも人間ってそうやって道を切り開いたんでしょ?田舎といえど、結局は自然を破壊してるのよ!」
「なんか説得力あるよな。ジェニー!」

 彼女と話すたび、僕はどこか無力感を感じていた。互いに変に成長して、長年たっていざ話をするとそれが以前のものではない。以前の感触がない。それ以外の他人と話しているようだ。

 昔の仲間だと思ったら大間違い。医者になってよく分かったことだ。

 あくまでも前方を見据えながら進む。あたりは暗闇で、視力もおぼつかなくなってきている。

「ライト。上げる!」ハイビームで照らす。奥までは見えず。

『先生。大丈夫で?』事務長。
「じゃないよ。方向はこれでいいか?」
『ええ・・・あの』
「なに!なんだ!」

『ニューヨークで、大変なことがあったらしいです』
「こっちも大変だよ!あとで教えてくれ!」
『・・・・っこう被害が・・・もう1つの・・・も』
「おい?もしもーし!」

 思わず耳を手で覆ったが効果なし。電波はずれていった。

「おーい!」
『はい』

「道だよ道!右は川だ。どんどん左に曲がってる。いったい、いつ左に寄ったらいいんだ?また川にぶつかるぞ?」
『ええっと・・・こちらも照らし合わせてますが』
「もしもーし!」
『大きな電柱・・・見える・・思います。それを越えたら・・・』
「もしもーし!うっ?」

 完全に交信が途絶えた。偶然か、環境音楽も止まった。カセットテープがゆるやかに回転する。不吉なものを感じだ。

 ジェニーは大きな目をキョロキョロ動かした。
「出そう・・・出そう」
「幽霊なんか!怖くない!」
「出そう!はは、早く!」
「なに?」

 そっちのほうか!

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