ES-MEN 52
2007年8月30日「そうだ!患者宅に電話だ!道を聞こう!」
ピッ・ポッと電話するが・・・携帯からはやはりつながらない。
「くそ・・ここまで計算してないよ!」
とたん、背後にまぶしい光が輝いた。
「うわっ?なんだ?」
「トラック・・トレーラー?車両の分だけ」ジェニーははるか後部座席まで走った。
「トレーラーが・・ついてきたのか?」
「まぶしい・・・!」
僕は、以前こういう目にあったことがあった。
「やめてくれよ・・・でも慣れた。よく考えたら脅しだけで、事故になるようなことではなかった」
「来るわよ?」
「急いで逃げようとしたら自分が臆病になってしまう。だからつけこまれるんだ。ないものと思って進めば・・・」
「何、いってんのよー!」
ガダン!と尻を前に突き上げられた。同時に後部のガラスが割れる音。
「いてええ!うわっ?本気か?」
ミラーの反射で、点灯している運転席が見えた。
「西川じゃないか!あいつ、いつトラック野郎に?」
「頭打った・・・でも大丈夫」ジェニーは首を押えた。
「血は?」
「ない。硬膜下とか大丈夫かな?」
「しかし、あいつトラック野郎か・・・ドラッグ野郎だったら分かるけど。田舎も不景気なんだな!」
「ほら後ろ!ピッタリついてる!」
「知るか!おい事務長!事務長!」呼び出しするが、全く返答なし。
「吐きそう!止めて・・・」
「ダメだよ!」
再び、今度はドガンドガンと2段階でぶつけられた。
西川は興奮し、幼少の頃に覚えた歌を、演歌調に口ずさんだ。
「♪ち〜ちよ〜は〜はよ〜フフフフよ〜・・・か〜ぜのうなりにフフフフフン〜ちからのかぎり〜ぶちあてる〜フフフ〜のきもち〜は〜!よ〜くわかる〜!」
無意識に歌が変わっていた。
ドクターカー車内は薬瓶がゴロゴロ転がった。
「ひいっ!これであいつ免停どころか取り消しだ!」
「ねえ!もうあやまろ!あやまろうよ〜!いやよ!」
「俺だって、いやよ!」
「なんで、あんたらのせいであたしまで!」
「何を!」
「こんなことが分かってたら、真田になんか来なけりゃよかった!」
「本音か!」
冷静になり、ナビを確認。正面は川が近付いている。
「このままじゃドボンだ!」
「止めなさい!」
「いやや!電柱越えて曲がるって事務長が!」
「止めてえ!」
「いやや〜!」ハンドル掴むジェニーを、そのまま突き飛ばした。
電柱など、目の前の光で見えない。
「殺される殺される・・・はっ?あれか!」
アクセルをゆるめた。
「ジェニー!つかまってろ!」
確認する余裕はなかった。
減速すると当然のように、トレーラーのバンパーがサイのように後部にドカンとめりこんだ。反動でトレーラーが引っ込む。
「ひいい!今だ!」
急加速すると同時に、ライトをふっと消した。
「見えた!ここだ!多分!」
電柱のようなうっすら見える棒。急ブレーキし、そこを右から反時計まわりに・・・
何度も何度も、パチパチパンチのように回した。
西川はぎょっとのけぞった。
「消えた?真田の医者は手品師か?」
目を凝らしたが、遅かった。彼のはトレーラーの巨体もろとも、宙を舞った。
「あっ・・・」
キンタマが縮みあがる浮遊感。彼は人生そのものを諦め、苦痛のないことだけを願った。
「あっ俺・・・飛んでる」
<戻ってきて・・・>昔、捨てた女の声が聞こえた。
「また行かなきゃ。仕事が」
<もういいのよ・・・>
「俺は。俺はやったのか?精一杯・・・」
<おいで・・・>
「よかった・・・!」
女の手の導くまま彼はハンドルから両手を放し・・・身を任せた。
コンテナを積んでないトレーラーは何度もキリモミし、スローで大きな川へ・・・頭から突っ込んだ。
ピッ・ポッと電話するが・・・携帯からはやはりつながらない。
「くそ・・ここまで計算してないよ!」
とたん、背後にまぶしい光が輝いた。
「うわっ?なんだ?」
「トラック・・トレーラー?車両の分だけ」ジェニーははるか後部座席まで走った。
「トレーラーが・・ついてきたのか?」
「まぶしい・・・!」
僕は、以前こういう目にあったことがあった。
「やめてくれよ・・・でも慣れた。よく考えたら脅しだけで、事故になるようなことではなかった」
「来るわよ?」
「急いで逃げようとしたら自分が臆病になってしまう。だからつけこまれるんだ。ないものと思って進めば・・・」
「何、いってんのよー!」
ガダン!と尻を前に突き上げられた。同時に後部のガラスが割れる音。
「いてええ!うわっ?本気か?」
ミラーの反射で、点灯している運転席が見えた。
「西川じゃないか!あいつ、いつトラック野郎に?」
「頭打った・・・でも大丈夫」ジェニーは首を押えた。
「血は?」
「ない。硬膜下とか大丈夫かな?」
「しかし、あいつトラック野郎か・・・ドラッグ野郎だったら分かるけど。田舎も不景気なんだな!」
「ほら後ろ!ピッタリついてる!」
「知るか!おい事務長!事務長!」呼び出しするが、全く返答なし。
「吐きそう!止めて・・・」
「ダメだよ!」
再び、今度はドガンドガンと2段階でぶつけられた。
西川は興奮し、幼少の頃に覚えた歌を、演歌調に口ずさんだ。
「♪ち〜ちよ〜は〜はよ〜フフフフよ〜・・・か〜ぜのうなりにフフフフフン〜ちからのかぎり〜ぶちあてる〜フフフ〜のきもち〜は〜!よ〜くわかる〜!」
無意識に歌が変わっていた。
ドクターカー車内は薬瓶がゴロゴロ転がった。
「ひいっ!これであいつ免停どころか取り消しだ!」
「ねえ!もうあやまろ!あやまろうよ〜!いやよ!」
「俺だって、いやよ!」
「なんで、あんたらのせいであたしまで!」
「何を!」
「こんなことが分かってたら、真田になんか来なけりゃよかった!」
「本音か!」
冷静になり、ナビを確認。正面は川が近付いている。
「このままじゃドボンだ!」
「止めなさい!」
「いやや!電柱越えて曲がるって事務長が!」
「止めてえ!」
「いやや〜!」ハンドル掴むジェニーを、そのまま突き飛ばした。
電柱など、目の前の光で見えない。
「殺される殺される・・・はっ?あれか!」
アクセルをゆるめた。
「ジェニー!つかまってろ!」
確認する余裕はなかった。
減速すると当然のように、トレーラーのバンパーがサイのように後部にドカンとめりこんだ。反動でトレーラーが引っ込む。
「ひいい!今だ!」
急加速すると同時に、ライトをふっと消した。
「見えた!ここだ!多分!」
電柱のようなうっすら見える棒。急ブレーキし、そこを右から反時計まわりに・・・
何度も何度も、パチパチパンチのように回した。
西川はぎょっとのけぞった。
「消えた?真田の医者は手品師か?」
目を凝らしたが、遅かった。彼のはトレーラーの巨体もろとも、宙を舞った。
「あっ・・・」
キンタマが縮みあがる浮遊感。彼は人生そのものを諦め、苦痛のないことだけを願った。
「あっ俺・・・飛んでる」
<戻ってきて・・・>昔、捨てた女の声が聞こえた。
「また行かなきゃ。仕事が」
<もういいのよ・・・>
「俺は。俺はやったのか?精一杯・・・」
<おいで・・・>
「よかった・・・!」
女の手の導くまま彼はハンドルから両手を放し・・・身を任せた。
コンテナを積んでないトレーラーは何度もキリモミし、スローで大きな川へ・・・頭から突っ込んだ。
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