ES-MEN 57

2007年8月30日
 真田第二の2階事務室、電気が点った。

「救急依頼か。うう・・・起こさなきゃな」
 事務長はソファで脚を伸ばしたまま、当直医師を呼び出した。

『慎吾だ。悪いが救急はひどいのは・・・』
「今日は当たりですよ先生。真珠会から来ます」

『受けるなよ!ゲートを閉めとけ!いっそ朝一番の外来に・・・病名は?』
「それが珍しいことに。落ち付いてる患者さんのようで」

『本当か?』
「これまで紹介状すら送らなかった真珠会がですよ?やっぱハカセ先生は違うんですかね」

『今、病棟診てるからオレ』
「ウソおっしゃい。5分後ですよ!よろしく!しかし、どういう風の吹き回しだ?」

 事務長は反動をつけて、飛びあがった。

 近くのパソコンで売り上げ状況を確認。溜息。
「あと一息なんだけどなあ・・・」

 テレビをつけると・・・事務長はチャンネルを次々変えた。
「え?これは・・・・」
 どれも煙のニューヨークだ。
「いや、それはもう知ってるが・・・<各国に警告を発令>・・日本も来るのか?」

ポンポンポン・・・と響く天井を、彼は見上げた。

 民放でもパニックした記者が喋りたてる。
<日本でも厳重な警戒が必要です!機体が向かってるという情報も!>

「なに!じゃあ、あの音は?」

ポンポンポン・・音は次第に大きくなる。
「なんで僻地が狙われるんだ?そ、そうか・・・日本発祥の地だからか」

 ヘリはライトを点灯し、真下の斜面に当てた。イノシシが興奮ぎみに走っている。病院にはまだまだ距離がある。

 しかしその先の進路は病院からはずれる。

「おおっとイノシシ君そこは違うんじゃないかな君は人と違って・・・決められたレールを走るのが苦手らしい」

 操縦士を無視し、模擬弾の照準を合わせた。
「総長!駄目ですよ!違反です!」
「これから戦争なんだぞ間抜け!その前に演習しておいても軍には保険が通る!」

「演習・・・」
「ただの模擬弾だ誰も死なんよ」

 ボタンを押すと、底部から米袋のようなものが3つほど落ちて行った。

 ズドーン、という重低音で、病院大部屋の患者らはみな飛び上がった。
「うわあ!地震や!」

すぐさま1人がカーテン外の閃光に気がついた。
「あれ!あれ!今光ったよ今!」
「何が見える?」もう1人の中年と窓に張り付いた。
「何か、走ってた。小さいのがこっちへ・・・おいみんなも!」

 しかしその皆は、反対の端のテレビにかじりついていた。
「あ!あちこちで戦争だってよ!わしら病人は行かんでええよな?」
「ならやっぱ・・・これがそうか?」外を見てた1人がカーテンをめいっぱい開いた。

ズドーン・・・と天井が揺れるたび、事務長は青ざめた。

「待てよ・・・あの方向は確か」
ナースが2人、降りてきた。

「き、君ら!病棟はカラでいいのか?」
「何か分らないけど!託児所は大丈夫なのかなって!」
「託児所!ごめん!まだ新装してない託児所!」

 事務長はナースを率いて、2階通用口へと向かった。
その間にも、事務長はあちこち携帯をかけまくった。

「ユウキ先生。ジェニー先生・・・圏外?」

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