ES-MEN 61
2007年8月31日 慎吾は自転車で、ようやく走るベッドに追いついた。
ベッド挟んで反対側、ヘルメットをした兵がニヤケている。
「もうじき放す!とっておけ!」
聞こえなかった慎吾は、ポケットの聴診器を思わず投げた。それは全くの的外れで兵の足元からも外れた。
「へたっピ!なにわあ!」聴診器はとぐろ巻きで車輪に偶然ひっかかり、急ブレーキ状態でサイドバイクを横転させた。接続がベッドから外れた。
「あっ大丈夫!じゃないよな」
なんとかベッドに手を伸ばし、自転車のブレーキとともに減速し始めた。
「あいつら!」
玄関は目の前だ。自動ドアで、急には開かない。2階へ向かって、腕を左右に振った。
開けてくれという合図は届かずブレーキの切れる音。慎吾とベッドはそのまま自動ドアに・・いや。
「イヤア!」横綱が立ちはだかり、受け止めた。
ただベッドの端が横綱の腹をえぐった。
「グエエ!」
慎吾はまた立ち上がり、ベッドを院内へ。
「ありがとうよ!横綱!」
「たた・・・だ、大丈夫ですか?」
慎吾はベッドを持ち、玄関内に入った。
「いけますか?私が来たからには、もう大丈夫・・・」
「くく・・・この役立たずどもめが!」衝撃で外れかけた抑制を、町議は強引にほどいた。
「重症じゃないな。よかったよかった」
「よくあるかコラァ!」
モニターにつなぐ。慢性、虚血の変化があるとみた。
「体型からして、狭心症はあるだろな・・・」
ポンポンポン・・とヘリは病院背後を旋回していた。
スミは下を見下ろした。
「ダメ押しにわが軍よりご褒美をつかわす言われた通りにせい!」
ヘリはいきなり垂直に降りてきた。砂埃が周囲上空に巻き上げられた。
真下では、長細い瓦の建造物の、託児所。瓦がガタガタと揺れだした。
やがてそれは1つずつ解放され、紙のようにヒュンヒュン、と病院裏面へと飛んで行った。
まず1枚目がボールのように、余裕で医局のガラス窓を突き破った。
また1つ、また1つ。避難した患者の大部屋や控室などへ。
ガシャン、ガシャンと勢いを増していく。
スミは腕組みして見とどけた。
「外してるぞ!それでイラクが倒せるか!」
加速のついた瓦は2・3部屋分までも貫き、それまでも超えていった。
事務室で指揮を執る事務長の右上腕に、何かが擦れた。
「った・・・!何!血?」
計器類に当たって砕けた物体を冷静に見下ろした。
背後でバキ、バキと飛んでくる音。
「また動物か?いや、これは・・・」
事務長はマイクをつかんだ。
『1階救急室!ガラスが降ってくる!全員!ふせ・・・!』
怒涛のように、前方正面のガラスがバリバリバリ!と割れていった。
一気に飛んできたのだ。
「うわー!」
そう叫んだのは、寝て天井見上げてた町議だった。ガラスの雨が降ってくる。
「なに?ええっ?」慎吾は恐怖で凍りつき、振り返る余裕はなかった。
いや、あった。横暴患者を置いて、自分は逃げるか。それとも・・・
慎吾は母親のように、町議に覆いかぶさった。
ベッド挟んで反対側、ヘルメットをした兵がニヤケている。
「もうじき放す!とっておけ!」
聞こえなかった慎吾は、ポケットの聴診器を思わず投げた。それは全くの的外れで兵の足元からも外れた。
「へたっピ!なにわあ!」聴診器はとぐろ巻きで車輪に偶然ひっかかり、急ブレーキ状態でサイドバイクを横転させた。接続がベッドから外れた。
「あっ大丈夫!じゃないよな」
なんとかベッドに手を伸ばし、自転車のブレーキとともに減速し始めた。
「あいつら!」
玄関は目の前だ。自動ドアで、急には開かない。2階へ向かって、腕を左右に振った。
開けてくれという合図は届かずブレーキの切れる音。慎吾とベッドはそのまま自動ドアに・・いや。
「イヤア!」横綱が立ちはだかり、受け止めた。
ただベッドの端が横綱の腹をえぐった。
「グエエ!」
慎吾はまた立ち上がり、ベッドを院内へ。
「ありがとうよ!横綱!」
「たた・・・だ、大丈夫ですか?」
慎吾はベッドを持ち、玄関内に入った。
「いけますか?私が来たからには、もう大丈夫・・・」
「くく・・・この役立たずどもめが!」衝撃で外れかけた抑制を、町議は強引にほどいた。
「重症じゃないな。よかったよかった」
「よくあるかコラァ!」
モニターにつなぐ。慢性、虚血の変化があるとみた。
「体型からして、狭心症はあるだろな・・・」
ポンポンポン・・とヘリは病院背後を旋回していた。
スミは下を見下ろした。
「ダメ押しにわが軍よりご褒美をつかわす言われた通りにせい!」
ヘリはいきなり垂直に降りてきた。砂埃が周囲上空に巻き上げられた。
真下では、長細い瓦の建造物の、託児所。瓦がガタガタと揺れだした。
やがてそれは1つずつ解放され、紙のようにヒュンヒュン、と病院裏面へと飛んで行った。
まず1枚目がボールのように、余裕で医局のガラス窓を突き破った。
また1つ、また1つ。避難した患者の大部屋や控室などへ。
ガシャン、ガシャンと勢いを増していく。
スミは腕組みして見とどけた。
「外してるぞ!それでイラクが倒せるか!」
加速のついた瓦は2・3部屋分までも貫き、それまでも超えていった。
事務室で指揮を執る事務長の右上腕に、何かが擦れた。
「った・・・!何!血?」
計器類に当たって砕けた物体を冷静に見下ろした。
背後でバキ、バキと飛んでくる音。
「また動物か?いや、これは・・・」
事務長はマイクをつかんだ。
『1階救急室!ガラスが降ってくる!全員!ふせ・・・!』
怒涛のように、前方正面のガラスがバリバリバリ!と割れていった。
一気に飛んできたのだ。
「うわー!」
そう叫んだのは、寝て天井見上げてた町議だった。ガラスの雨が降ってくる。
「なに?ええっ?」慎吾は恐怖で凍りつき、振り返る余裕はなかった。
いや、あった。横暴患者を置いて、自分は逃げるか。それとも・・・
慎吾は母親のように、町議に覆いかぶさった。
コメント