ES-MEN 67

2007年8月31日
 豪華な室内プールが微かに波打つ。

 伸ばした細い足でバシャバシャ・・・とその秩序を乱しつつ、黄色い水着のジェニーは横に寝そべるハカセを見た。

「金持ちなスポンサーね」
「礼なら真珠会の理事長に言ってよ」

「そっか・・・昔の仲間で純粋に残ったのは・・・あたしたちだけだったのね」
「今のスタッフは、現状に醒めて集まってきた1匹狼・・・ただし万能の能力をもつことが条件だけど」

「あたしはないわよ。そんな能力」
「あるさ。あるとも・・」

 ハカセを虜にするまでの能力だ。

 ハカセは起き上がり、逆さまにプールに飛び込んだ。
 視界の右端から左端へ泳ぐハカセを、ジェニーはずっと目で追った。

「ねえこれって、運命かもしれないね」
「これからは、君も安定した暮らしだ。小遣いも自由に使える」
「こづかい・・?」

 近くの派手な寝イスで寝そべっている<キタノ>がサングラスでつぶやく。

「僕らは1人ずつがね、真珠会の<支社>っていう名目になってんだ〜。1人1人が会社の名義なんだよ。すごいでしょ!」
「会社?あたしたちが・・・?」

「各人の部屋が、その会社の<事務所>なんだよ。会社って簡単に作れるんだよ?」

「ああ。それで、各部屋にパソコンが何台も置いてるの?」
「会社となれば、その経費は自由に使える。僕は車代や食事、衣服・・・何なら、君に宝石をプレゼントしてもいいよ」

 ハカセに睨みで、キタノは泳ぎに歩いて行った。

 気まぐれに歩くジェニーのヒップラインを眺め・・・水面上のハカセはストローをすすった。

 ジェニーは飛び込むため、高所に登ってかがんだ。

「経費で買ったジュエリーなんて・・」

 飛び込もうとしたジェニーの姿を、周囲の何人もが見上げていた。

「いらない!」

 ズバーン、と高らかなシブキが舞った。

 キタノは水面上のグラスで乾杯した。

「さあ今度はトレーラー、僕が運転するからね!今度こそ最後の戦いにしましょうねみなさん!」

 エリートたちは無言で、次々とプールへ飛び込んでいった。

「そうだよ!へへへ!僕たちはESメンだからな!生き残るさ!」

 だがハカセとしては、まだ示しがつかなかった。

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