ES-MEN 68
2007年8月31日 ハカセはその<経費>で買ってもらった外車で公民館を目指していた。
平気で路上駐車し、警備員に袖の下。
「頼みますよ」
楽屋の方角に行くと、段の司会者が横から見える。
ハカセは原稿も用意せず、<発表>の心の準備にかかった。
臨時で行われた、町内のイベント。
『これからは町民のみなさんも、賢くなることができると。そんな願いをこめた医師からのメッセージをここでお届けしたいと思います!』
ハカセはネクタイをギュッとしめた。
『ハカセ先生!』
大拍手とともに、ハカセは壇上に現れた。司会者とすれ違いざま、また寸志をポッケにしのばす。
キーン!というマイク音が止むと、ハカセは全町民を見回した。有力な商店街の人々は最初から前列を陣取る。
『どうも。ハカセといいます。地域医療を発展させるため、この地に来ました。開院して間もないですが・・・皆さんのお力で日々精進しております。さて妙な噂が流れてますが・・・最先端の知識・技術をもつ我が病院が、患者を実験台にしてるとの心ない指摘が』
商店街の人々は微妙に頷く。強力なバックアップだ。
『そのような指摘があったため、当院としましても一般性をもたせるため・・しばらくの間、民間病院としての通常の治療に戻しまして』
「ちょっとおお!それ違うでしょ!」
田中君が真ん中の階段で立っていた。
「ニューヨークのテロで海外から薬品が入らなくなって・・・それで一時的に諦めざるをえなくなった・・・なぜそうやって正直に言わないんですか!」
ハカセはいきなり真田病院をターゲットに切り出した。
『テロ?テロは偶然です。我々はちょうど、方向転換する予定だった。町民のみなさんと協力してやっていきたい姿勢は変わりない。それを何ですかあなたは。名誉棄損で訴えますよ!』
「そうだ!」と商店街の誰かが叫んだ。
『これからはむしろ、町民のみなさんが手本を示さなければ。一方的に治療を受けてほしくなんかはない。理解をして欲しい。そのためには正面から取り組むのです!具体的には、医療スタッフに教育を受けてもらいカンファレンスを重ね、共にディスカッションしそれを治療に反映させる・・・僕が夢見ている医療はそれなんです!・・・・真田の事務員さんには、そういう展望があるんですか?』
撤回したその内容は、僕らが将来的に目指していた内容だった。おそらくジェニーがばらしたんだろう。
田中君は振り向く大勢の視線に戸惑った。
「そそ、それでもじじ、人体実験するんだろっ!」
「頭、ダイ・ジョーブツですか?」
「(会場全体)わっはっはっはっ!」
田中君は会場全体に笑われた。
「オブジェクション!異議あり!」
群衆の中、1人立ち上がった。正面中央のゆるやかな階段を降りてきた男・・・品川事務長は、パンフレットを丸めて拡声器代わりにした。
『今のは利己的な発言だと思います!みなさん、騙されないように!』
『へえ今度は、事務長のお出ましですか!』
『一言余計なんですよあなたは・・・!』
『真田病院。この間はイノシシが突っ込んできて大変だったようですね。厨房の匂いにつられたのでは?』
「(会場全体)わははははははは!」
品川は手で制した。
『ハカセ。おみやげ、ありがとう』
『なにっ?』
『病院収益で争うなんてバカな挑戦を受けていた本院ですが、先はもう目に見えてます!そんなアピールしても、そちらは今さら患者さんを集められないはずだ。だいいち救急の体制も敷いてない!』
『う・・・』
『こっちはある。なのでもう!ここで降伏したらどうですか!病院どうしがシノギを削るなんておかしい。民主主義的に、平和に解決してもいい!話し合いで!』
ハカセはうつむき、しばらく考えた。
『そっちの手口は知ってます。この間みたいに患者さんらを大勢<転院>させるんでしょう?やめなさい子供みたいな考えは!』
『うーん。品川さん。でしたよね?』
『ええ』
『分かりました。そのやり方は私も反省してます。やめましょう』
『よかった。では経営統合の話・・』
『民主主義なら民主主義らしく、いこうじゃありませんか』
『パードン?』
『あんた。今そう言っただろ!』
ハカセは司会者に耳打ちし、用意していた町議のメモを手渡した。
「はっ。これは・・・!こんな用意が?」
司会者は動揺し、メモを真っすぐに伸ばした。
「双方病院の存続は・・・!に、3日後の!町民投票にょって行われる!」
「(会場一同)ざわざわざわざわ・・・・」
事務長は茫然と立ち尽くしていた。
「ええっ・・・決まってたの?」
横の婆さんも、ぽかんと口を開けてみていた。
ハカセは町議を転院させる前に・・・前もって用意していた。
平気で路上駐車し、警備員に袖の下。
「頼みますよ」
楽屋の方角に行くと、段の司会者が横から見える。
ハカセは原稿も用意せず、<発表>の心の準備にかかった。
臨時で行われた、町内のイベント。
『これからは町民のみなさんも、賢くなることができると。そんな願いをこめた医師からのメッセージをここでお届けしたいと思います!』
ハカセはネクタイをギュッとしめた。
『ハカセ先生!』
大拍手とともに、ハカセは壇上に現れた。司会者とすれ違いざま、また寸志をポッケにしのばす。
キーン!というマイク音が止むと、ハカセは全町民を見回した。有力な商店街の人々は最初から前列を陣取る。
『どうも。ハカセといいます。地域医療を発展させるため、この地に来ました。開院して間もないですが・・・皆さんのお力で日々精進しております。さて妙な噂が流れてますが・・・最先端の知識・技術をもつ我が病院が、患者を実験台にしてるとの心ない指摘が』
商店街の人々は微妙に頷く。強力なバックアップだ。
『そのような指摘があったため、当院としましても一般性をもたせるため・・しばらくの間、民間病院としての通常の治療に戻しまして』
「ちょっとおお!それ違うでしょ!」
田中君が真ん中の階段で立っていた。
「ニューヨークのテロで海外から薬品が入らなくなって・・・それで一時的に諦めざるをえなくなった・・・なぜそうやって正直に言わないんですか!」
ハカセはいきなり真田病院をターゲットに切り出した。
『テロ?テロは偶然です。我々はちょうど、方向転換する予定だった。町民のみなさんと協力してやっていきたい姿勢は変わりない。それを何ですかあなたは。名誉棄損で訴えますよ!』
「そうだ!」と商店街の誰かが叫んだ。
『これからはむしろ、町民のみなさんが手本を示さなければ。一方的に治療を受けてほしくなんかはない。理解をして欲しい。そのためには正面から取り組むのです!具体的には、医療スタッフに教育を受けてもらいカンファレンスを重ね、共にディスカッションしそれを治療に反映させる・・・僕が夢見ている医療はそれなんです!・・・・真田の事務員さんには、そういう展望があるんですか?』
撤回したその内容は、僕らが将来的に目指していた内容だった。おそらくジェニーがばらしたんだろう。
田中君は振り向く大勢の視線に戸惑った。
「そそ、それでもじじ、人体実験するんだろっ!」
「頭、ダイ・ジョーブツですか?」
「(会場全体)わっはっはっはっ!」
田中君は会場全体に笑われた。
「オブジェクション!異議あり!」
群衆の中、1人立ち上がった。正面中央のゆるやかな階段を降りてきた男・・・品川事務長は、パンフレットを丸めて拡声器代わりにした。
『今のは利己的な発言だと思います!みなさん、騙されないように!』
『へえ今度は、事務長のお出ましですか!』
『一言余計なんですよあなたは・・・!』
『真田病院。この間はイノシシが突っ込んできて大変だったようですね。厨房の匂いにつられたのでは?』
「(会場全体)わははははははは!」
品川は手で制した。
『ハカセ。おみやげ、ありがとう』
『なにっ?』
『病院収益で争うなんてバカな挑戦を受けていた本院ですが、先はもう目に見えてます!そんなアピールしても、そちらは今さら患者さんを集められないはずだ。だいいち救急の体制も敷いてない!』
『う・・・』
『こっちはある。なのでもう!ここで降伏したらどうですか!病院どうしがシノギを削るなんておかしい。民主主義的に、平和に解決してもいい!話し合いで!』
ハカセはうつむき、しばらく考えた。
『そっちの手口は知ってます。この間みたいに患者さんらを大勢<転院>させるんでしょう?やめなさい子供みたいな考えは!』
『うーん。品川さん。でしたよね?』
『ええ』
『分かりました。そのやり方は私も反省してます。やめましょう』
『よかった。では経営統合の話・・』
『民主主義なら民主主義らしく、いこうじゃありませんか』
『パードン?』
『あんた。今そう言っただろ!』
ハカセは司会者に耳打ちし、用意していた町議のメモを手渡した。
「はっ。これは・・・!こんな用意が?」
司会者は動揺し、メモを真っすぐに伸ばした。
「双方病院の存続は・・・!に、3日後の!町民投票にょって行われる!」
「(会場一同)ざわざわざわざわ・・・・」
事務長は茫然と立ち尽くしていた。
「ええっ・・・決まってたの?」
横の婆さんも、ぽかんと口を開けてみていた。
ハカセは町議を転院させる前に・・・前もって用意していた。
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