ES-MEN 71
2007年9月1日 昼間の真田第二では、久々の警告音が鳴り響いた。
『スタッフは全員、事務室へ集合して事務長の支持を待て!』
田中くんらは、駐車場で乗用車に歩行可能な患者を1人ずつ運んでいた。病棟をなるべく空けておくため軽症は往診扱いとしたのだ。
僕は医局から走った。
「チキショー!院長代理の権限はないのかよー!」
途中、慎吾と合流。怪我はほぼ治ってる。
「慎吾!頼むぞ!」
「記憶が少し飛んだかも・・・」
「どある!外傷のせいにすんな!」
ドカドカ、とみな事務室に集まった。
事務長が立っている。まるで出撃前だ。
「放ったスパイ犬らの映像によると、たった今真珠会第二から例のトレーラーが出撃したようです!」
事務長の前に大勢の職員。厨房の人たちさえいる。田中君は遅れて到着した。事務長はリストを受け取り、続けた。
「困ったのは、町民投票が今日の夕方ってことです。このまま忙しくなれば、我々は投票に行けません」
「だが、病院存続のためなら手段を考えないといけない」
田中くんが堂々と答えた。
「そういや。町議が投票をするってメッセージを?」僕は疑問がった。
「ええ」と田中。
「偽造じゃないか?」
「でも確かめようがないです。役所ではもう準備が」
「町議に確認してみる!」
ダッシュした。今はトレーラーの来る気配はない。
慣れない横綱は、ビビって参考書を何度も読んでいた。
僕は手帳を渡した。
「おっ。なんでっかこれ?」
「ここ7年くらいの蓄積が書いてある」
「すんげえ!要点だらけだ!<ナトカリ・クオール・フォルテシモン・・・>おお今覚えましたってよ!」
「すごいだろ!」
「くれます?」
「あかん。あとで返せ!」
PHSが鳴る。
『病棟です!先生!重症患者さんがみんな一斉の高熱で・・・!』
「わかった!行く!横綱!頼む!」
シャー!とカーテンを開ける。
「えええ?」
町議が・・・真っ青な顔でで震えている。
「コールドショックだ・・・!」
グアアアアアア・・・と濡れた路面を走っていくトレーラー。
ジェニーはコンテナ中央を通り、両側の2段ベッドを順々に観察。
「呼吸・循環管理もできてる。すごい・・・ハカセは現代のレオナルド・ダビンチね」
各所、レジデントらが記録。しかし1人がペンで頭をかいてる。
「う〜ん・・・」
「何か!報告を!」
「あっ。銭亀先生!これは失礼しました!実はコンプレッサーの調子が・・・でしょうか?患者の酸素飽和度が下がってるんです」
「人工呼吸器の患者?」
「ええ」
ジェニーは呼吸器回路のチェックも行ったが・・・
「酸素が・・酸素濃度が足りないのよ」
「酸素供給タンクは、車底にあるんですが・・そういやメンテナンスで水が入ってるかもと」
「ど!どうして上に報告しなかったの!」
「上には伝わりました!しかし現状のままで出発せよとスミ医官が!」
ジェニーは青ざめた。確かにこの地域の人間は嫌いだが・・命に不利なことがあってはならない。それは医者の本能だ。
「ううう・・・どうなるんですか。私はどうなるんですか」
一方で、酸素マスク吸入中の患者が呻いた。ジェニーは目線を合わせた。
「て。転院です・・・」
「てんいん・・・」
「病院を代わるだけです。私たちはそれのつなぎです。だから・・・だから」
ジェニーは、カンカンカン、と運転席へ走った。
キタノとスミが大笑いしている。
「酸素が不調よ!急ぐか引き返して!」
2人はくるっと振り返り、ギラッとした表情で睨み返した。
「う・・今さら邪魔するなってこと?」
背後のレジデントらがくくくと笑った。
コンテナに戻ったジェニーは揺れに抵抗し、片手をベッド横にかけた。
「(そうよ・・・!あたしは補助してるだけ。あたしは悪いことはしてない・・・!よりよい自分を創り出すための・・それに今は繋ぎの時期にすぎないんだから!)」
『本番前の演習うう!』スミのアナウンス。
ジェニーは各患者のモニターや線、カテーテルなどを外線→ベッド中心に切り替え始めた。
「はっ!はっ!それと・・・これ!」
「最後尾!サイドバイク用意!」
コンテナ最後尾で、バイクのエンジン。暴走しそうな音。
ジェニーはレジデントに聞いた。
「サイドバイク?」
「ベッドが出されたら接続して、運転するマシンのことです!」
「凄いわね。わざわざ運んでくれるの?」
「まだ知らないんですか?あれで患者を高速度でリリースするんです。なるべく玄関前で」
ちょっと信じられないと思ったジェニーだが、すぐに楽天的に解釈した。
「ふふふ・・・あっはは!結構楽しいじゃないの!」
運転席よりアナウンス。
『医療は?』
「(一同)戦争!」
『我々は?』
「(一同)戦士!」
『手段は?』
「(一同)選ぶな!」
『患者は?』
「(一同)選べ!」
『治すは?』
「(一同)われ医者!」
『情けは?』
「(一同)無用!」
『有意差?』
「(一同)あり!」
「いつまでやってんの・・・?」
ジェニーはペンライトを左右計6本バシュバシュ光らせチェックした。
『守るは?』
「(一同)我々!」
『イーエス!』
「(一同)メーン!うおおおおおおお!」
高らかな拳がいくつも挙げられた。
『スタッフは全員、事務室へ集合して事務長の支持を待て!』
田中くんらは、駐車場で乗用車に歩行可能な患者を1人ずつ運んでいた。病棟をなるべく空けておくため軽症は往診扱いとしたのだ。
僕は医局から走った。
「チキショー!院長代理の権限はないのかよー!」
途中、慎吾と合流。怪我はほぼ治ってる。
「慎吾!頼むぞ!」
「記憶が少し飛んだかも・・・」
「どある!外傷のせいにすんな!」
ドカドカ、とみな事務室に集まった。
事務長が立っている。まるで出撃前だ。
「放ったスパイ犬らの映像によると、たった今真珠会第二から例のトレーラーが出撃したようです!」
事務長の前に大勢の職員。厨房の人たちさえいる。田中君は遅れて到着した。事務長はリストを受け取り、続けた。
「困ったのは、町民投票が今日の夕方ってことです。このまま忙しくなれば、我々は投票に行けません」
「だが、病院存続のためなら手段を考えないといけない」
田中くんが堂々と答えた。
「そういや。町議が投票をするってメッセージを?」僕は疑問がった。
「ええ」と田中。
「偽造じゃないか?」
「でも確かめようがないです。役所ではもう準備が」
「町議に確認してみる!」
ダッシュした。今はトレーラーの来る気配はない。
慣れない横綱は、ビビって参考書を何度も読んでいた。
僕は手帳を渡した。
「おっ。なんでっかこれ?」
「ここ7年くらいの蓄積が書いてある」
「すんげえ!要点だらけだ!<ナトカリ・クオール・フォルテシモン・・・>おお今覚えましたってよ!」
「すごいだろ!」
「くれます?」
「あかん。あとで返せ!」
PHSが鳴る。
『病棟です!先生!重症患者さんがみんな一斉の高熱で・・・!』
「わかった!行く!横綱!頼む!」
シャー!とカーテンを開ける。
「えええ?」
町議が・・・真っ青な顔でで震えている。
「コールドショックだ・・・!」
グアアアアアア・・・と濡れた路面を走っていくトレーラー。
ジェニーはコンテナ中央を通り、両側の2段ベッドを順々に観察。
「呼吸・循環管理もできてる。すごい・・・ハカセは現代のレオナルド・ダビンチね」
各所、レジデントらが記録。しかし1人がペンで頭をかいてる。
「う〜ん・・・」
「何か!報告を!」
「あっ。銭亀先生!これは失礼しました!実はコンプレッサーの調子が・・・でしょうか?患者の酸素飽和度が下がってるんです」
「人工呼吸器の患者?」
「ええ」
ジェニーは呼吸器回路のチェックも行ったが・・・
「酸素が・・酸素濃度が足りないのよ」
「酸素供給タンクは、車底にあるんですが・・そういやメンテナンスで水が入ってるかもと」
「ど!どうして上に報告しなかったの!」
「上には伝わりました!しかし現状のままで出発せよとスミ医官が!」
ジェニーは青ざめた。確かにこの地域の人間は嫌いだが・・命に不利なことがあってはならない。それは医者の本能だ。
「ううう・・・どうなるんですか。私はどうなるんですか」
一方で、酸素マスク吸入中の患者が呻いた。ジェニーは目線を合わせた。
「て。転院です・・・」
「てんいん・・・」
「病院を代わるだけです。私たちはそれのつなぎです。だから・・・だから」
ジェニーは、カンカンカン、と運転席へ走った。
キタノとスミが大笑いしている。
「酸素が不調よ!急ぐか引き返して!」
2人はくるっと振り返り、ギラッとした表情で睨み返した。
「う・・今さら邪魔するなってこと?」
背後のレジデントらがくくくと笑った。
コンテナに戻ったジェニーは揺れに抵抗し、片手をベッド横にかけた。
「(そうよ・・・!あたしは補助してるだけ。あたしは悪いことはしてない・・・!よりよい自分を創り出すための・・それに今は繋ぎの時期にすぎないんだから!)」
『本番前の演習うう!』スミのアナウンス。
ジェニーは各患者のモニターや線、カテーテルなどを外線→ベッド中心に切り替え始めた。
「はっ!はっ!それと・・・これ!」
「最後尾!サイドバイク用意!」
コンテナ最後尾で、バイクのエンジン。暴走しそうな音。
ジェニーはレジデントに聞いた。
「サイドバイク?」
「ベッドが出されたら接続して、運転するマシンのことです!」
「凄いわね。わざわざ運んでくれるの?」
「まだ知らないんですか?あれで患者を高速度でリリースするんです。なるべく玄関前で」
ちょっと信じられないと思ったジェニーだが、すぐに楽天的に解釈した。
「ふふふ・・・あっはは!結構楽しいじゃないの!」
運転席よりアナウンス。
『医療は?』
「(一同)戦争!」
『我々は?』
「(一同)戦士!」
『手段は?』
「(一同)選ぶな!」
『患者は?』
「(一同)選べ!」
『治すは?』
「(一同)われ医者!」
『情けは?』
「(一同)無用!」
『有意差?』
「(一同)あり!」
「いつまでやってんの・・・?」
ジェニーはペンライトを左右計6本バシュバシュ光らせチェックした。
『守るは?』
「(一同)我々!」
『イーエス!』
「(一同)メーン!うおおおおおおお!」
高らかな拳がいくつも挙げられた。
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