ES-MEN 72

2007年9月1日
 真田第二。サイレンが鳴り響く。

 事務員の1人がいきなり走り出し、玄関手前の緊急赤ボタンを押した。ゲートの開閉ボタン。

「きっ!きっ!」頑なに押さえたままで、ゲートは完全に開いた。
「何するんだ!」事務長が抑えたが遅かった。
「ふう!ふう!」高齢の事務員はギラギラ目を光らせた。
「あなたは・・買収されたんですね!」

事務長は轟音に気づいた。
「し!しまった!」

 トレーラーはゲートをくぐりぬけ、ドカーンと現れた。遠くで横付けになる。7台のコンテナが圧巻だ。

「ドクターは?ドクターは何やってんです!」

 田中君ら事務員5人、横綱もすでに駐車場へ走っていた。
横綱は相変わらず鈍足だった。

「ほい!ほい!ほい!ここで待つわ。はあ・・・」

 横綱目がけ、ベッドが1台サイドバイクとともに走ってきた。
「うお!どう!」
 田中君が拳を握った。
「横綱先生!気をつけてください!」

 横綱はいきなりバイク正面からぶつかり、靴底のふんばりでそのまま背後にズルズルと引きずられた。

「わしを押すなど・・・」
「ひ・・」
 
 横綱はベッドも止め、バイクの接続部を外して・・・バイクだけを投げ飛ばした。

「ひゃあああ!」
「100年早いタイ!」
「うわあああ!」また1人投げられた。

 横綱はベッドの端をガシッと握った。

「大丈夫ですかあ!」
「ああなんとかな!」60代じいさんが力なく答えた。
「もう1台か?ふん!」

 もう片腕でもう1台が止められ、背後がまた1台転倒した。

「ま、待て!」
 近寄ってきた小児科医を、あやうく平手打ちする寸前だった。

「藤堂ちゃん!何をしとるんで?」
「事務長や皆に伝えてくれ!入院させた小児の数名を、これ以上ここでは診ることはできん!」

「見捨てるのか!わしらを!」
「しょうがないだろ!ここは危険だ!知り合いの病院へ運ぶ!それに俺は処置の自信がない!」

「人にあんだけガミガミ言うといて!」

うしろむきの小児科医はピタッと立ちどまった。
「す!すまん!」
「今、言うたことは聞いてなか。もういっぺん考えるとよか!」

 小児科医は子供・親らを乗せたドクターカーに乗り込み、ギューンと出発した。

 事務長は状況を確認、捕獲した犬どもの監視カメラで把握した。

「しまった!切り離された2台がもうこっちに向かってる!」

事務長は滑り台を降り、砂地へモロに着地した。
「うぶぶ・・・まだ間に合う!」

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