ES-MEN 74

2007年9月1日
 事務長は次々とベッドを救急室に集め、置き場所を指導した。

「そこ!置いていい!それは関係ないから大丈夫!よけて!」
田中君が、横綱を背負ってきた。

「ひい!ひい!重いよこの医者!いったい何食ってるんだろ!」
「ちゃんこじゃないか・・」

 事務長は、遠方のトレーラーを睨んだ。

 外線を受け取ると、ちょうど運転手席のキタノからだ。

<どうだ品川!俺たちを怒らせたから、こうなるんだ!>
「くそ・・・もう患者はないか!」
<ゼロだ!ご苦労さん!投票まではよろしくな!俺たちはもう引き揚げる!バイビー!>

 近くで師長が悲鳴を上げた。
「酸素飽和度が足りない人が多いわね!ドクターが来るまで、動脈血の測定を!」

 師長が仕切り始めて、頼りがいのある雰囲気が出てきた。

 トレーラーは再び轟音を上げ、ゆっくり駐車場を周遊した。

 他にもナースらが降りてきて、バイタルやライン確保を行う。

 やがて慎吾が降りて、呼ばれた重傷を確認中。
「この人は呼吸ない・・・そこ、バイタルは!ああ・・・」

 あっちこっちでシューパー、ピロピロ、現場は混乱を極めた。

 慎吾はちこちからコールされ、聖徳太子状態になった。

「マテ!待ってくれ!・・・そうだY字だ!Y字に集中してくれ!」

 田中君らの迅速な手さばきで、円陣が組まれた。慎吾・処置台などが円の中心に。放射状にベッドが並べられた。

「よし!バイタルのメモをベッド頭側に貼ってくれ!検査値も全部!」

 田中くんが声をあげた。
「イーハー!これぞ中央集権治療だ〜!」

 気管支鏡を台に取り付け画面確認、まず1人を挿管。画面見ながらもう1人の重傷を指導。
「ナース!マッサージ弱いぞ!何習ってた!」
「これ動脈血ガス・・・」ナースが1人、横の機械の画面を見せた。

「その人ナルコーシスだよ!酸素しぼって!なるべく!」

近くでナースが指示をとり、またベッドに貼り付け。
「はがれんようにな!たあ!」

 吐血患者のSBチューブをナースが用意。

「先生!暇ないですよね!しますよ!ひゃ!」
 溢れ出す血を両前腕に受けながら、ナースはチューブを進めた。
「見ててくださいよ!」

 ナースの上着がはだけ、慎吾は思わず照れた。

「・・その。あたしじゃなくて!」

ベッドの横綱は起き上がって指さした。

「うおおお!徐脈だろがその人!」
「きゃあ!」周囲のナースが驚いた。
「硫アト用意せい!ペースメーカーあるんだろな!入れて・・・その。もらえ」

 復活した横綱は、またその場に倒れた。

 僕は4人部屋を2つ回り、再び町議のいる部屋へ。
「この人も、いっこうによくならないな!」
「痰で詰まってる!」とナース。
「チューブが?なれば!」

 背中からバシュー!と挿管チューブを取り出した。ドレーンなどがこぼれた。
「町議!すみませんが再び!」

 ジェニーのごとく、2つのライトでバシュバシュ瞳孔確認。
「未だ反応いまいち!呼吸もだ!」

 意識を失っている町議の口を喉頭鏡で観察・・・チューブ挿入。
「ナース!アンビュー押してろ!」

 人工呼吸器設定、装着し今度は止まりかけた脈へのボスミン用意。
「くそっ!くそっ!くそっ!プラズマ足したのかよ!」

 検査技師が入ってきた。

「院長代理!菌の結果が!それが・・・」
「マッサージ開始!そこボスミン行かんか!なんだ!」

「イノシシからVREを検出!」
「イノシシの培養結果なんか聞きたくな・・・なにVRE?」

「慎吾先生が、基礎医学的に興味があったので培養に出してたんです・・・」
「で、この患者さんらのグラム染色でも同じ印象が?」

「大いにあると思います!」
「ではそこから来たっていうのか?」

「先生。なんでイノシシから・・・」
「ハカセらのことだ。どっかで<培養>されてたんだろ!手、放す!」

 両手を宙に浮かすと・・・心拍はまだ徐脈ぎみだが戻った。
「戻ったが。でもこれはまた止まりそうだ!」

指示を書き、ナースへ。
「服を全部着替えて、1階慎吾の応援に行く。頼むぞ!」

 廊下へ走り、動悸を感じつつ滑り台のところへ。
すると足元をすくわれた。
「わあ!」
 転がり、かろうじて落下は免れた。

 そこに・・・ミリタリー服が立っている。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索