ES-MEN 78

2007年9月1日
 駐車場に立ち、ゴーグルで確認するジェニー。彼ら何人かは置き去りにされた。

「命令が来ない・・・あたしの出番は」

トレーラーには、まだ数台のベッドが残されている。

 キタノは狂ったようにあちこち走り回り、近くの公園や散歩道、銅像などあらゆるものを破壊していった。
「キエヘヘヘヘ!」

 バイクが1台ずつ走ってくる。

「おいジェニー!引き上げだ!スミがくたばった!自衛隊に突き出される!トレーラーに戻ろう!」
「あんたら降参すんの?あたしはいやよ!」

「僕らは終わりだ。投票したって先は見えてる。今後は地道な民間病院の道もある!」
「ならあんたは居る価値ないわ!またどっかで利用されたらいいわよ!」

 ジェニーはPHSで連絡。

「キタノ・・・」
<あいよ!>
「残りの患者、いるでしょ」
<ちょっとくらいキープしとこうぜ?>
「こっちにきなさい!」

 ジェニーは負けを覚悟した。こうなれば・・・患者を全て託す必要がある。

 トレーラーはジェニーらのほうにやってきた。キタノはボタンを押し、残り全ての8ハッチを開いた。

 バイクは次々とベッドと合体させられ、はるばる玄関へ向かって飛び出した。

 事務所。

 事務員が状況を報告。事務長と田中くんは戻ってない。

「ベッド8台、新たに接近中です!」外の横綱に報告。

「事務の司令塔がいないとは、どういうこつか!」

 4名ほどの事務員も、連絡がつながらない。

 電源が戻ったものの、僕らは1階の重症患者の急変対応に追われていた。

「できるかいな!俺たちは診療だけで手一杯だ!慎吾!喉頭鏡パス!」
「あいよ!」尻を向け合った背後から、手渡し。僕らは常に円陣の中心だった。

 放射線技師がポータブルで入ってくる。

「ここで撮るんですね?」
「ああ!いいって!」他の職員が僕らに防護服。
「いきますよ!」
トン!とレントゲンが1枚ずつ撮影。

 慎吾はスワンガンツのモニターデータを確認しつつ、鎖骨下よりゆっくり挿入。
「右心系がやや負荷だな。何だと思う?」
「見えないから、分らん!」

「肥大閉塞型の心筋症なんだが・・・さっきの超音波ではここまでだったか?よほど心不全が進行して」
「ブツブツ言うな!集中できん!」

 バイクで最前列のジェニーが独りつぶやく。

「ここで接続外して。彼らが対応に追われるうちに、帰りましょう!」
 一斉に接続が外され、ベッドが8隻そのまま玄関へ直進した。

「キタノ!いつまで遊んでんの!」

 フラフラの横綱が、玄関前に立った。8台まとめて向かってくる。

「うわ!うわ!これは複視でっか?どど、どれをどうしたらええんだあ?」

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