ES-MEN 83

2007年9月1日
 慎吾は最後尾のドアで、思いをはせていた。
義理の父親の言葉が脳裏をよぎっていた。

<男は、家族により尽くしてこそ、よりいい仕事ができるのだ!>

「・・・・・家族か」

 どんどん小さくなる、病院前の見送りたち。
よりよく見るため、彼はバンとドアを開けた。
「俺の家族は・・・・」

 みな疲れたまま、あちこちに座り込んでいた。

 田中君はメモを僕に渡した。
「あ?えっ?」

<俺は残ることにした。もう失うものはない>

「これはだれの・・・慎吾か!」

 見渡してもいない。しかし予感はした。コンテナの中央廊下を走り、最後尾のガラス窓から見ると、向こうへ駆けてる人間がいる。

「慎吾!あいつ、残るのか!」
車内のみんなは、別段驚く様子もなかった。

僕は大きな揺れを感じながら、あの病院の行く末を占った。

「そっか。頑張れよ・・・!」

残りの文章。

<逆だ。男は、よき仕事に出会ってこそ・・よき家族を作れるものなんだ>

 手紙を握りしめた。

 そして、僕にもやり残したことがあった。

「事務長。ちょっと寄ってほしいとこがある。スパイ犬のビデオパネル、これで見れるか?」

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