サーガマニュアル2007秋 あ-1
2007年9月17日□ アカウンタビリティー=説明責任 ・・ 処置・治療などをするにあたって、患者側が納得のいく十分な説明をしておかねばならない、という内容。
□ アキレス腱断裂
・ 走行・跳躍中に足関節後方に突然打たれたような疼痛を自覚。歩行は可能だが跛行である。
・ 腹臥位で診察。視診・触診でアキレス腱に陥凹。Thompson test:膝を直角にして腓腹筋部を握ると足関節が屈曲しない(正常では屈曲する)。このテストは健側でも行うこと。これで不明ならエコー・MRIで診断。
・ 保存治療はギプス(8週間)・シーネ固定。
・ 若年・運動選手は手術を。
□ 悪液質 ・・ 通常は末期がん患者の状態を指す。低栄養、つまり低アルブミンが進行して、血管から漏れた水分が内臓の外に貯まった状態。腹水がその一例。
□ 悪性症候群=Syndrome malin=サンドローム・マラン<実はフランス語!英語では(neuroleptic) malignant syndrome>
死亡率が高いことから<悪性>の呼び名がある。向精神病薬の過量投与によるほか、抗うつ薬、パーキンソン病薬のいきなりの内服中断でも起こりうる。
またそれを来たしやすい背景というものも存在し、身体の疲弊、脱水、錐体外路症状が多いなどの患者側要因というのもありうる。こういう背景があれば特にこれの発症に注意する必要がある。
発症に関連した薬剤を統計的にみると、ハロペリドール、レボメプロマジン、クロールプロマジンが上位を占める。投与開始後2週間での発症が最多だがいつでも発症しうる。
錐体外路症状=EPS<筋固縮、無動、振戦、嚥下困難>、自律神経症状<高熱(38℃以上。初期は37℃台)、発汗、頻脈、尿失禁・尿閉>、ひいては意識障害(80%以上の頻度)まできたしうる。合併症は横紋筋融解、筋固縮からの呼吸不全、嚥下困難からの誤嚥性肺炎が重要。
血液でCPK上昇(大半が1000以上)も診断の手がかり。放置されれば命にかかわる。高熱による組織の高度障害によりアシドーシスをきたし高度の脱水も起こすことある。鑑別すべきは脳炎・髄膜炎(髄液検査で除外)。
まずは原因薬剤の中止となるが、中止後も症状は5-10日持続することを知っておく。
高熱に対しては全身冷却とともに、十分な輸液を行う必要がある。横紋筋融解→高ミオグロビン血症→腎不全が出現した例では血液透析を行うことになる。なのでミオグロビン尿の確認が必要。
なお悪性症候群に効果が確認されている薬剤はダントロレン(商品名ダントリウム)とブロモクリプチン(商品名パーロデル)。
こう(悪性症候群)ならなぬよう、投与前に臓器障害などがないか評価しておく必要がある。しかし実際は患者自身の服薬量そのものに問題がある場合も多い。
早期の発見が重要で、向精神薬を内服している患者で重度の錐体外路症状を認めたなら検温してみるというのも大事だ。
あとこれは落とし穴だが、悪性症候群が軽快しても、内服の早期再開でまた再発する恐れがあるということだ。では再投与はどれくらいの期間をおくべきかだが、全身状態回復から2週間以上は期間をおくことが原則。また再開する薬剤は低力価のほうが再発が低いことがわかっている。がどうしても同じ薬剤でないといけないなら、投与開始は少量から慎重に行うべきだ。
※ 悪性症候群でない場合でも、向精神病薬によりCPKは上がりうる。それどころか精神病患者の半数以上がこの薬なしでもCPK上昇を認めるという報告もある。
※ CPK 1000以上の場合は横紋筋融解症も念頭において治療にあたる。
□ アグレッシブ ・・ 攻撃的、反抗的。
□ アサイティス=ascites=腹水 ・・ 肝硬変などで、低アルブミン(蛋白の一部)血症のため腹部臓器周囲に貯留する水。当然、お腹が腫れ体重も増加する。増加してくるかどうかは腹囲を毎日測定したりして評価する。
□ アシスト ・・ 補助として手伝いに回ること。人であったり機械の場合もある。
□ アシドーシス ・・ 血液が酸性ということ。つまりペーハー(pH)が低い。肺炎や心不全など、全身に悪影響をもたらす病気が進行した場合起こしやすい。中枢機能(大動脈など)を生かすため、末梢組織の血管が収縮してしまう。つまり末梢組織の虚血、あるいは循環不全を意味する。なので体は冷たい。重炭酸(メイロン)で補正することが多いが、二酸化炭素分圧上昇時はするべきでない。
□ アシナジー=asynergy ・・ 心臓超音波で通常使用される用語。左心室の周囲の壁の動きの異常をさす。『アシナジーはないです=ノーアシナジー』→『動きの悪いところはありません』→『心臓収縮力は正常です』
□ 亜硝酸剤(あしょうさんざい) ・・ 冠動脈の血管を拡げるための薬剤。点滴と飲むのと貼るのがある。飲む分の中には速効性のための舌下錠(ニトロペン)かスプレー(ミオコールスプレー)がある。点滴の長期使用は、次第に効きにくくなるといういわゆる「耐性」を生じる点に注意。頭痛の副作用にも配慮を。
□ アジ化ナトリウム ・・ 20世紀末に混入事件があり以後毒物指定に。自動車エアバッグ、パラシュートなどの起爆剤のほか生体試料の防腐剤などで使用。吸入・経口だけでなく経皮でも吸収される。高濃度だと1-2時間内に死亡する。摂取直後に低血圧症状が出現。重症では不整脈・心不全・循環不全。消化器症状もあり。毒物摂取後、急に低血圧・循環不全が出現した場合は強く疑う。証明は胃内容・血液・尿を採取。治療としての解毒剤はない。中毒に対しては一般的処置となる。胃洗浄、活性炭、下剤投与など。ただし催吐は痙攣や循環虚脱を誘発するので絶対に行ってはならない。血液浄化法の適応ではない。経口摂取例ではスタッフへの感染(特に眼と皮膚)に注意。
□ アスピリン喘息 ・・ なにもアスピリンだけに限らず、すべての酸性NSAIDsで誘発されうる喘息。成人(男<女)>小児(まれ)。成人喘息の1割。非アトピー型>アトピー型。9割以上に鼻関係の疾患(鼻茸、副鼻腔炎など)の既往。鼻症状は嗅覚低下>鼻閉>鼻汁。典型例では酸性NSAIDs内服後1時間以内に鼻閉・鼻汁が出現し、続いて喘息発作が出現する。発作時の治療ではステロイドを使用することになるが、本症はコハク酸エステル(サクシゾン・ソルコーテフ・ソルメドロール・水溶性プレドニン)に過敏であるため使用せず、リン酸エステル(ハイドロコートン・リンデロン・デカドロン)のほうを点滴で投与する。ビソルボンは悪化の可能性あり使用しない。本症の合併症として?好酸球性(鼻茸)副鼻腔炎(鼻茸の重症度と喘息の重症度は相関。易再発性・多発性。通常の副鼻腔炎と違いマクロライド無効)、?好酸球性胃腸炎(まれ。消化器症状に特徴なく胃カメラ生検で確定)、?好酸球性肺炎がある。
□ アセチルコリン負荷試験 ・・ 冠動脈内にアセチルコリン(Ach)を注射、低濃度より注入していく。検出感度は80-90%。注入後もしばらく効果が持続することがあるので検査中の閉塞・不整脈などに配慮を。9割以上の狭小化があれば冠痙縮性狭心症(冠動脈の痙攣による狭心症)と診断される。カルシウム拮抗薬が必須となる。
■ アスベスト肺
2005年夏に一気に社会問題になった健康被害。検査・治療の手順を筋道立てるガイドラインの作成が急がれている(アスベストの専門医は日本に20人ほどしかいないという)。
アスベストは髪の毛5000分の1ほどの細い繊維状天然鉱物。成分の9割以上がクリソタイルという石成分。
吸入されたアスベストは気道表面において活性酸素を産生し、それに反応した貪食細胞が集合しそれらから化学物質(サイトカインなど)が放出され炎症が起きる。特にNF-κB(NFカッパB)によるものではTNF-αが増加し線維芽細胞が増殖、肺の線維化が進行する。また肺胞マクロファージの活性化によっても線維化を促進する。
※ 細気管支周囲での線維化が中心になるのがアスベストの特徴で、珪肺はリンパ行性に病変が進展する違いがある。
アスベスト関連の病気は以下の4つ。
?石綿肺=アスベスト肺・・塵肺(じんぱい)の一種
?胸膜刺激による良性アスベスト胸水
?びまん性胸膜肥厚
?肺癌や胸膜中皮腫の合併
潜伏期間は曝露量が多いと5-20年、少ないと30-40年。症状なしで検診レントゲンで指摘されるケースはこれからも増えるだろう。
初期だと呼吸機能検査で異常がないのでそこも盲点だ。また、暴露環境から離れたとしても進行は引き続き継続する。
なおアスベスト吸引歴のある人の肺癌にかかる率は、そうでない人の5倍。さらにアスベスト吸引歴に加えて喫煙歴のある場合は50倍にまで膨れ上がるという事実がある。
症状としてはまず労作性呼吸困難が出現することが多く、乾性咳も特徴で、やがて安静時呼吸困難へと進む。進行に伴い背部のラ音(fine crackle)は下肺→上肺へと拡がっていく。喀痰中のアスベスト小体の確認で確定診断となる。
レントゲンでは暴露後早くて2-3年、多くは10年以上して両側下肺野中心の不整形陰影を認めるようになる。前述の細気管支病変を反映しての線状・網状影が目立って粗大になっていく。また著明な破壊の所見である輪状の蜂巣肺(IPFより網目は小さめ)を呈することも。胸膜は肥厚・プラーク・石灰化があれば特徴的。これら胸膜病変、前述の末梢病変の早期発見にHRCTが有用。呼吸機能検査では拘束性障害が中心で(%肺活量が60%以下なら労災認定対象)、特に全肺気量、努力性肺活量が低下する。
以下の除外診断が必要。慢性間質性肺炎、他の職業性の塵肺、細気管支レベルの間質性肺炎(RB-ILDやDIP)、NSIP、膠原病肺、サルコイドーシス。
治療は対症療法が主体。内服と在宅酸素など。死因は呼吸不全のほかに肺癌がある(死因の20-40%)。
□ アーチスト(←<カルベジロール>の商品名) ・・ 慢性心不全の治療薬の1つ。DCM(拡張型心筋症)やICM(虚血性心筋症)など、心臓収縮力がかなり低下している心臓の収縮力増強を図る。βブロッカーなので増量は心機能をみながらゆっくりで。外来なら最初は毎週通院させたほうがいいが、くれぐれもそれで心不全にさせないように。最近この薬剤で微量アルブミン尿の改善とインスリン抵抗性の改善(←骨格筋の血流増加によるらしい)が報告された。これにより心血管イベント発生の減少を期待できるといわれている。
□ アタP=アタラックスP ・・ 鎮静剤。不穏が強い場合や胃カメラ前によく使用される。
□ アダムス・ストークス発作 ・・ 徐脈による失神発作。
□ アダラート・カプセル ・・ 急な降圧目的に使用されることのある速効性の降圧剤。以前はよく使用されていたが、急な降圧そのものが臓器に悪影響をもたらすということで使用されない方向にある。だが夜間救急など、どうしてもその場をしのぐためやむを得ず使用されているのが現状。その場合舌下投与30分後に血圧を再検。
□ アテレク=アテレクターシス=無気肺 ・・ 肺炎、気道の閉塞や、片側の肺からの圧迫などで片方・または一部の肺が<密封された>状態。菌が閉じ込められているので必然的に肺炎を起こしやすい。肺炎が治ったが肺の真ん中で縮んで押しつぶされ、板状に固まる板状無気肺、肺の外側に銀河系のように部分的に認める円形無気肺などもある。後者は肺腺癌と間違えやすい。巻き込み像のあるなし等で鑑別する。
□ アキレス腱断裂
・ 走行・跳躍中に足関節後方に突然打たれたような疼痛を自覚。歩行は可能だが跛行である。
・ 腹臥位で診察。視診・触診でアキレス腱に陥凹。Thompson test:膝を直角にして腓腹筋部を握ると足関節が屈曲しない(正常では屈曲する)。このテストは健側でも行うこと。これで不明ならエコー・MRIで診断。
・ 保存治療はギプス(8週間)・シーネ固定。
・ 若年・運動選手は手術を。
□ 悪液質 ・・ 通常は末期がん患者の状態を指す。低栄養、つまり低アルブミンが進行して、血管から漏れた水分が内臓の外に貯まった状態。腹水がその一例。
□ 悪性症候群=Syndrome malin=サンドローム・マラン<実はフランス語!英語では(neuroleptic) malignant syndrome>
死亡率が高いことから<悪性>の呼び名がある。向精神病薬の過量投与によるほか、抗うつ薬、パーキンソン病薬のいきなりの内服中断でも起こりうる。
またそれを来たしやすい背景というものも存在し、身体の疲弊、脱水、錐体外路症状が多いなどの患者側要因というのもありうる。こういう背景があれば特にこれの発症に注意する必要がある。
発症に関連した薬剤を統計的にみると、ハロペリドール、レボメプロマジン、クロールプロマジンが上位を占める。投与開始後2週間での発症が最多だがいつでも発症しうる。
錐体外路症状=EPS<筋固縮、無動、振戦、嚥下困難>、自律神経症状<高熱(38℃以上。初期は37℃台)、発汗、頻脈、尿失禁・尿閉>、ひいては意識障害(80%以上の頻度)まできたしうる。合併症は横紋筋融解、筋固縮からの呼吸不全、嚥下困難からの誤嚥性肺炎が重要。
血液でCPK上昇(大半が1000以上)も診断の手がかり。放置されれば命にかかわる。高熱による組織の高度障害によりアシドーシスをきたし高度の脱水も起こすことある。鑑別すべきは脳炎・髄膜炎(髄液検査で除外)。
まずは原因薬剤の中止となるが、中止後も症状は5-10日持続することを知っておく。
高熱に対しては全身冷却とともに、十分な輸液を行う必要がある。横紋筋融解→高ミオグロビン血症→腎不全が出現した例では血液透析を行うことになる。なのでミオグロビン尿の確認が必要。
なお悪性症候群に効果が確認されている薬剤はダントロレン(商品名ダントリウム)とブロモクリプチン(商品名パーロデル)。
こう(悪性症候群)ならなぬよう、投与前に臓器障害などがないか評価しておく必要がある。しかし実際は患者自身の服薬量そのものに問題がある場合も多い。
早期の発見が重要で、向精神薬を内服している患者で重度の錐体外路症状を認めたなら検温してみるというのも大事だ。
あとこれは落とし穴だが、悪性症候群が軽快しても、内服の早期再開でまた再発する恐れがあるということだ。では再投与はどれくらいの期間をおくべきかだが、全身状態回復から2週間以上は期間をおくことが原則。また再開する薬剤は低力価のほうが再発が低いことがわかっている。がどうしても同じ薬剤でないといけないなら、投与開始は少量から慎重に行うべきだ。
※ 悪性症候群でない場合でも、向精神病薬によりCPKは上がりうる。それどころか精神病患者の半数以上がこの薬なしでもCPK上昇を認めるという報告もある。
※ CPK 1000以上の場合は横紋筋融解症も念頭において治療にあたる。
□ アグレッシブ ・・ 攻撃的、反抗的。
□ アサイティス=ascites=腹水 ・・ 肝硬変などで、低アルブミン(蛋白の一部)血症のため腹部臓器周囲に貯留する水。当然、お腹が腫れ体重も増加する。増加してくるかどうかは腹囲を毎日測定したりして評価する。
□ アシスト ・・ 補助として手伝いに回ること。人であったり機械の場合もある。
□ アシドーシス ・・ 血液が酸性ということ。つまりペーハー(pH)が低い。肺炎や心不全など、全身に悪影響をもたらす病気が進行した場合起こしやすい。中枢機能(大動脈など)を生かすため、末梢組織の血管が収縮してしまう。つまり末梢組織の虚血、あるいは循環不全を意味する。なので体は冷たい。重炭酸(メイロン)で補正することが多いが、二酸化炭素分圧上昇時はするべきでない。
□ アシナジー=asynergy ・・ 心臓超音波で通常使用される用語。左心室の周囲の壁の動きの異常をさす。『アシナジーはないです=ノーアシナジー』→『動きの悪いところはありません』→『心臓収縮力は正常です』
□ 亜硝酸剤(あしょうさんざい) ・・ 冠動脈の血管を拡げるための薬剤。点滴と飲むのと貼るのがある。飲む分の中には速効性のための舌下錠(ニトロペン)かスプレー(ミオコールスプレー)がある。点滴の長期使用は、次第に効きにくくなるといういわゆる「耐性」を生じる点に注意。頭痛の副作用にも配慮を。
□ アジ化ナトリウム ・・ 20世紀末に混入事件があり以後毒物指定に。自動車エアバッグ、パラシュートなどの起爆剤のほか生体試料の防腐剤などで使用。吸入・経口だけでなく経皮でも吸収される。高濃度だと1-2時間内に死亡する。摂取直後に低血圧症状が出現。重症では不整脈・心不全・循環不全。消化器症状もあり。毒物摂取後、急に低血圧・循環不全が出現した場合は強く疑う。証明は胃内容・血液・尿を採取。治療としての解毒剤はない。中毒に対しては一般的処置となる。胃洗浄、活性炭、下剤投与など。ただし催吐は痙攣や循環虚脱を誘発するので絶対に行ってはならない。血液浄化法の適応ではない。経口摂取例ではスタッフへの感染(特に眼と皮膚)に注意。
□ アスピリン喘息 ・・ なにもアスピリンだけに限らず、すべての酸性NSAIDsで誘発されうる喘息。成人(男<女)>小児(まれ)。成人喘息の1割。非アトピー型>アトピー型。9割以上に鼻関係の疾患(鼻茸、副鼻腔炎など)の既往。鼻症状は嗅覚低下>鼻閉>鼻汁。典型例では酸性NSAIDs内服後1時間以内に鼻閉・鼻汁が出現し、続いて喘息発作が出現する。発作時の治療ではステロイドを使用することになるが、本症はコハク酸エステル(サクシゾン・ソルコーテフ・ソルメドロール・水溶性プレドニン)に過敏であるため使用せず、リン酸エステル(ハイドロコートン・リンデロン・デカドロン)のほうを点滴で投与する。ビソルボンは悪化の可能性あり使用しない。本症の合併症として?好酸球性(鼻茸)副鼻腔炎(鼻茸の重症度と喘息の重症度は相関。易再発性・多発性。通常の副鼻腔炎と違いマクロライド無効)、?好酸球性胃腸炎(まれ。消化器症状に特徴なく胃カメラ生検で確定)、?好酸球性肺炎がある。
□ アセチルコリン負荷試験 ・・ 冠動脈内にアセチルコリン(Ach)を注射、低濃度より注入していく。検出感度は80-90%。注入後もしばらく効果が持続することがあるので検査中の閉塞・不整脈などに配慮を。9割以上の狭小化があれば冠痙縮性狭心症(冠動脈の痙攣による狭心症)と診断される。カルシウム拮抗薬が必須となる。
■ アスベスト肺
2005年夏に一気に社会問題になった健康被害。検査・治療の手順を筋道立てるガイドラインの作成が急がれている(アスベストの専門医は日本に20人ほどしかいないという)。
アスベストは髪の毛5000分の1ほどの細い繊維状天然鉱物。成分の9割以上がクリソタイルという石成分。
吸入されたアスベストは気道表面において活性酸素を産生し、それに反応した貪食細胞が集合しそれらから化学物質(サイトカインなど)が放出され炎症が起きる。特にNF-κB(NFカッパB)によるものではTNF-αが増加し線維芽細胞が増殖、肺の線維化が進行する。また肺胞マクロファージの活性化によっても線維化を促進する。
※ 細気管支周囲での線維化が中心になるのがアスベストの特徴で、珪肺はリンパ行性に病変が進展する違いがある。
アスベスト関連の病気は以下の4つ。
?石綿肺=アスベスト肺・・塵肺(じんぱい)の一種
?胸膜刺激による良性アスベスト胸水
?びまん性胸膜肥厚
?肺癌や胸膜中皮腫の合併
潜伏期間は曝露量が多いと5-20年、少ないと30-40年。症状なしで検診レントゲンで指摘されるケースはこれからも増えるだろう。
初期だと呼吸機能検査で異常がないのでそこも盲点だ。また、暴露環境から離れたとしても進行は引き続き継続する。
なおアスベスト吸引歴のある人の肺癌にかかる率は、そうでない人の5倍。さらにアスベスト吸引歴に加えて喫煙歴のある場合は50倍にまで膨れ上がるという事実がある。
症状としてはまず労作性呼吸困難が出現することが多く、乾性咳も特徴で、やがて安静時呼吸困難へと進む。進行に伴い背部のラ音(fine crackle)は下肺→上肺へと拡がっていく。喀痰中のアスベスト小体の確認で確定診断となる。
レントゲンでは暴露後早くて2-3年、多くは10年以上して両側下肺野中心の不整形陰影を認めるようになる。前述の細気管支病変を反映しての線状・網状影が目立って粗大になっていく。また著明な破壊の所見である輪状の蜂巣肺(IPFより網目は小さめ)を呈することも。胸膜は肥厚・プラーク・石灰化があれば特徴的。これら胸膜病変、前述の末梢病変の早期発見にHRCTが有用。呼吸機能検査では拘束性障害が中心で(%肺活量が60%以下なら労災認定対象)、特に全肺気量、努力性肺活量が低下する。
以下の除外診断が必要。慢性間質性肺炎、他の職業性の塵肺、細気管支レベルの間質性肺炎(RB-ILDやDIP)、NSIP、膠原病肺、サルコイドーシス。
治療は対症療法が主体。内服と在宅酸素など。死因は呼吸不全のほかに肺癌がある(死因の20-40%)。
□ アーチスト(←<カルベジロール>の商品名) ・・ 慢性心不全の治療薬の1つ。DCM(拡張型心筋症)やICM(虚血性心筋症)など、心臓収縮力がかなり低下している心臓の収縮力増強を図る。βブロッカーなので増量は心機能をみながらゆっくりで。外来なら最初は毎週通院させたほうがいいが、くれぐれもそれで心不全にさせないように。最近この薬剤で微量アルブミン尿の改善とインスリン抵抗性の改善(←骨格筋の血流増加によるらしい)が報告された。これにより心血管イベント発生の減少を期待できるといわれている。
□ アタP=アタラックスP ・・ 鎮静剤。不穏が強い場合や胃カメラ前によく使用される。
□ アダムス・ストークス発作 ・・ 徐脈による失神発作。
□ アダラート・カプセル ・・ 急な降圧目的に使用されることのある速効性の降圧剤。以前はよく使用されていたが、急な降圧そのものが臓器に悪影響をもたらすということで使用されない方向にある。だが夜間救急など、どうしてもその場をしのぐためやむを得ず使用されているのが現状。その場合舌下投与30分後に血圧を再検。
□ アテレク=アテレクターシス=無気肺 ・・ 肺炎、気道の閉塞や、片側の肺からの圧迫などで片方・または一部の肺が<密封された>状態。菌が閉じ込められているので必然的に肺炎を起こしやすい。肺炎が治ったが肺の真ん中で縮んで押しつぶされ、板状に固まる板状無気肺、肺の外側に銀河系のように部分的に認める円形無気肺などもある。後者は肺腺癌と間違えやすい。巻き込み像のあるなし等で鑑別する。
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