■ 言うたもん勝ち ・・ 医者の世界でよくあること。カンファレンスなどの場でも、押しの強い人間がものをいう。見習うべき態度とはいえないが、積極性という意味では参考にしてもいいかもしれない。循環器系ドクターはこの気質が多い。例)「その症例、僕が持ちます!」「そのDOAの診断は心筋梗塞!」「(独断で)投与しました治療は奏功!」「次の教授は俺や!」

■ イエスマン ・・ 医者同士でもよく使われる用語。上司に言いなりの人間。大学での出世には不可欠。ところが全スタッフでは民間病院に多い(すがりついてる職員が多いからだ。悪い意味ではない)。特に民間では毎日の出来事を院長に逐一報告するツワモノも多い(見極めて注意すべき)。

■ イエローカード ・・ 薬に重大な副作用が出たときに、即病院へ配られる黄色い「医薬品等安全性情報」の用紙。しかし全ての病院に配られているわけではなさそうだ。主治医の主観で「因果関係あり」となるので、この情報(特に単発の症例)をそのまま鵜呑みにするのは問題がある。

□ 胃潰瘍 ・・ 胃角(胃の形をL型とすればその曲がるとこ)に出来やすい。深いキズなので出血するおそれあり。粘膜までの浅い傷は「びらん」と呼ばれ区別され、この場合「胃炎」などと表現される。
 
□ 医局長 ・・ 医局の雑用係。大学ではふつう講師クラスがつとめる。(大学医局長→)バイト人数の調節、人事の聞きまわり、スタッフ病気時の世話、悩み事相談。決定権がなくすべて教授に筒抜けなので要注意。別名<イエスマンの総合商社>といえば言い過ぎか。

□ 医局費 ・・ 医局の雑費などのために徴収される税金のようなもの。月千円ー1万円などと医局によって幅がある。早く支払わないと上層部に密告される。

□ 医局秘書 ・・ 医局の雑務を一手に引き受ける、縁の下の力持ち。大学医局では英語ができて、頭の回転が速いのが好ましい。医局費をきちんと払うこと。

■ 胃癌

 
● 疫学

□悪性腫瘍による死亡では従来トップだったが1999年以降は肺癌に抜かれて2位。性別では男性で?肺癌、?胃癌、女性では?胃癌(ただし直腸癌+結腸癌=大腸癌とするとこれが?、胃癌は?)。罹患率では男性では?位が胃癌、女性では?位。

□ 死亡にしても罹患率にしても減少の傾向にある。ただし罹患数は横ばいと、見方によっていろいろ。

□ 平均死亡年齢は上昇傾向で、男性71歳、女性74歳。

□ 日本では遠位部に発生しやすい傾向。ピロリはこの部位(非噴門部)の癌と大いに関連がある。

□ ピロリへの胃癌の合併率は国によって様々で、日本・韓国は高率だがインド・タイ・バングラデシュでは低率。
  なので環境要因も関わっていることが予想されている。

● ピロリと胃癌

 トピックスはピロリの主要蛋白であるCagA蛋白の研究である。

・ ピロリ感染から胃癌までの流れ
 幼少時の感染 → 持続感染 → 胃粘膜における炎症で活性酸素が発生しDNA障害、細胞回転↑ → それによる粘膜の脱落・修復 → さらに遺伝・環境要因が加わり → 胃粘膜萎縮(小彎から進展) → 腸上皮化生 → 異型性 → 癌
 ※ 胃粘膜の萎縮は小彎から進展・・する事実がありながら、実際ピロリ菌のための胃生検が行われているのは大彎側である(今後の課題)。
 ※ 上記の流れのうち、胃粘膜萎縮 → 腸上皮化生 → 異型性までの流れが前癌状態といわれる。これの以前の段階で除菌すれば胃癌発症が抑制されるという報告もある。

・ CagA蛋白 ・・ ヘリコバクター・ピロリを構成する主要蛋白。これが胃の上皮細胞に入ると、シグナル伝達系分子SHP-2に結合し、結果的に?細胞の異常増殖、?細胞運動性の亢進を引き起こし、胃癌の発生へとつながるとされ注目されている。なお胃癌の頻度が高い東アジアでのタイプは他の地域のと比べてSHP-2結合活性能や形態変化誘導能が高いので、このために東アジアでの胃癌発生が多いのではないかといわれている。

● 病理

 ○ 胃癌の組織型分類

 以下に関する評価が重要となる。
・ 組織型(大半が腺癌=一般型胃癌、そうでないのは特殊型)

 一般型は?乳頭腺癌、?管状腺癌、?低分化腺癌、?印環細胞癌、?粘液癌
 特殊型は?腺扁平上皮癌、?扁平上皮癌、?カルチノイド腫瘍、?その他の癌
   に分類される。

・ 進達度
・ 癌間質量の過多
・ 浸潤増殖様式
・ 脈管侵襲の程度

 ○ 胃癌の異型度分類

 分化型腺癌を、異型度によって?低異型度癌 と ?高異型度癌 とに分ける。?は腫瘍径が小さい場合で進展も緩やかで転移少ない、?は進行胃癌でみられる。p53蛋白過剰発現率が?でより高度なのも鑑別の方法の1つ。

 ○ 胃癌の粘液形質分類

 胃・腸粘膜に関する数々の粘液形質マーカーによって、胃癌を胃型、胃腸混合型、小腸型に分類する。

 マーカーは以下の通り。
? 胃腺窩上皮型マーカー ・・ MUC5AC、HGM
? 胃幽門腺型マーカー ・・ M-GGMC-1、MUC6
? 腸型形質 ・・ MUC2
? 小腸型形質 ・・ CD10

● EBウイルス関連胃癌

 EBウイルス(2本鎖DNAウイルス)に感染した上皮細胞が増殖した腫瘍で、胃癌の1割弱を占める。男性に多いが年齢差はない。好発部位は噴門〜胃体上部。転移の頻度は低い。早期癌と進行癌とも頻度に有意差はない。

・ 組織像 : 低〜中分化型腺癌の像、リンパ球浸潤(CD8陽性主体)
・ 内視鏡所見 : 表面陥凹、境界不明瞭で分厚い病変が多い
・ 腫瘍細胞はEBER陽性シグナルがみられ、これを標的にしたISH法によってウイルスを検出する。

● 胃癌検診

・ ペプシンノゲン法
 血清ペプシノゲン(PG)は胃粘膜の萎縮性変化を反映し、萎縮がひどいほど低下する。萎縮性胃炎の進展が胃癌につながることは明らか。なので胃癌の早期発見のマーカー(または無症状患者の胃癌スクリーニング)として使用できる。実際にこれより発見される胃癌は早期の分化型腺癌で、内視鏡的切除可能なものが多く、救命率も高い。ただし胃癌を直接診断する方法ではなく、実際ペプシノゲン陰性の進行癌を見落とす可能性が出る。しかし健診に利用するにはあまりにも陽性率が高くなってしまい現実的ではないなど課題が多い。

・ ピロリ抗体
 大規模な統計より、ピロリ抗体陰性患者からの胃癌発生は皆無という事実がある。なので抗体陽性者から胃癌が発生するわけだが、日本では40歳以上においてすでに7割がピロリ抗体を所有している。なので健診でわざわざ測定する意義は少ない。

※ ピロリ除菌による胃癌抑制効果は証明されていない。なので抗体陽性だからといって除菌して胃癌が予防できる、ということにはならない。

※ ピロリ除菌が成功すれば、およそ半年でピロリ抗体は陰性化し、ペプシノゲンは正常化する。失敗しても双方ともある程度低下がみられる。

以上の2つの方法をいつ、どのような間隔で測定したら有意義かについて、現在検討中の段階。

・ CEA
 胃癌での陽性率は高くない。他のマーカーもスクリーニングとして利用できるほどの価値はない。

● 手術

・ 早期胃癌と進行胃癌という大まかな分類でいうと、早期胃癌の治療成績はほぼ100%である。進行胃癌では拡大切除などの試みはあるものの治療成績改善とまではいっていない。

・ 手術適応を詳しい指標(深達度や転移の程度)で分類したのが2001年ガイドライン ・・ 広く支持されており、これが手術の術式決定のゴールド・スタンダードとされている。しかし基本とするあまり手術の適応そのものを制限してしまう医師も多い。

・ 術後QOLに着目して行われる腹腔鏡下胃切除は、あくまでも限られた施設にとどまる。

・ 早期胃癌では機能温存を図る術式が標準化しつつあり、特に中部早期胃癌に関してはPPG=Pylorus Pre-surving Gastrectomy(幽門保存胃切除術)が行われることが多い。通常は幽門輪から1.5-3cm離して切離する。その際病巣の広さの判定のため、病巣の前後で生検を行うのが必須。幽門を温存することによって、?ダンピング症状の頻度↓、?胆汁逆流による残胃胃炎↓、?残胃癌発生↓が期待されている。

・ 手術の規模順に、(小さいものから)EMR → 縮小手術 → 定型手術 → 拡大手術。

・ 胃切除に際し、最近では合併切除の臓器をなるべく温存する動きもある。例えば膵温存術式(膵臓への直接浸潤や脾動脈周囲リンパ節の明らかな転移は別)。

・ また胃全摘後の再建ルートとしては、最近では術後障害を考慮した?Roux-en Y(ルーワイ)法、?ダブルトラクト法、?空腸間置法が中心。

 ○ EMR=内視鏡的粘膜切除術 ・・ 胃癌の中でも表層に限局してリンパ節転移がないものを対象とした、胃カメラ下での一括切除術。大きさ的には2センチ以下だが場合により3センチ以下も適応。

 ※ ESD=endoscopic submucosal dissection=内視鏡的粘膜下層剥離術 ・・ 最近さかんな(H15あたりから)、EMRよりも適応の拡大した内視鏡下での早期胃癌治療法。まず癌の下の粘膜下層に生食などを局注して、病変部位を下から隆起させる。この病変の周囲を切開後、直接粘膜下層を剥離して腫瘍を一括切除する。従来法(EMR)に比べて穿孔・出血のリスクは高い。最近その合併頻度は減ってきている。

 ○ 縮小手術 ・・ 定型手術よりも切除が部分的に少ない。
 ○ 定型手術 ・・ 従来の手術法で、胃2/3以上切除+D2リンパ節郭清。
 ○ 拡大手術 ・・ 定型手術を超える範囲、つまり他臓器合併切除あるいはD2+αまたはD3リンパ節郭清など。

必要に応じ、手術の前後に化学療法や放射線療法が追加される。


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