□ 拘束型心筋症=RCM=restrictive cardiomyopathy ・・ 文字通り、心臓の血液を送り出す部分である心室(硬い心室:stiff ventricleと表現される)の拡張制限が生じる。不思議と収縮力は正常のことが多い。まれな疾患で受け持ったことがない医師が大半。
 原因不明のものもあれば、2次性(熱帯では心内膜心筋線維症、それ以外の地域ではアミロイド−シスが最多)のものもある。
 拡張不全が病態のため収縮力を上げるための強心剤などは無意味で、利尿剤による治療が主体となる。塞栓症頻度が高いので予防投与が必要。

□ 喉頭鏡 ・・ 人工呼吸器をつける前の段階で、挿管チューブの入り口である声門を観察するための道具。ライトの点灯(電池切れのあるなし)は日頃から気をつけておくべき。

□ 高熱=ハイ・フィーバー ・・ 通常は38.0℃以上をさす。39℃もの高度な高熱の場合は、腎盂腎炎、インフルエンザ、膿瘍、病棟ではMRSAもさらに念頭に置く。

□ 後鼻漏(こうびろう) ・・ 鼻水が鼻から出ず、ノドの方に流れてきて咳き込みの原因となる。なので痰による咳だと間違えやすい。原因として副鼻腔炎が最重要。寝ている間に気管に分泌物が貯留し、起床時または昼間時に咳がしつこく出だす。夜間は咳反射が低下しているため割と平気。逆流性食道炎とならんで原因不明の咳の1原因として有名。

□ 項部硬直 ・・ 髄膜刺激徴候を調べる診察法の1つ。患者に横になってもらい、こちらの手を後頭部に置いてそのまま前屈させる。痛くて前屈できないなら陽性、髄膜炎・クモ膜下出血が疑われる。
※ 左右に回転できない場合はパーキンソン病、頚椎疾患を疑う。

□ 高齢者(病態別ポイント)

○ 高血圧

・ 65歳以上の2/3は高血圧(上140以上または下90以上の場合)。
・ 加齢とともに収縮期圧は上昇し、拡張期血圧は低下する→脈圧の開大。高齢者での「収縮期血圧↑」「脈圧の開大」は心血管病リスクとして重要。
・ 調圧因子(とくに圧受容器)の反射機能低下により起立性低血圧(←独立した心血管病死亡の危険因子)、血圧変動(non-dipper型が増加:予後不良)を引き起こす。
  ※ 起立後の血圧低下は、起立直後3分以内の測定が重要。
・ non-dipper , extreme-dipper型、早朝高血圧ではラクナを伴うことが多い。
・ 増加中の早朝血圧上昇=モーニング・サージは交感神経系・RA系の亢進によるもので、心血管事故と関連する。
・ 白衣高血圧も増加中で、この場合積極的な治療は不要。家庭血圧計を診断の手がかりに。JNC VI(米国高血圧診療指針)では家庭血圧の高血圧とは135/85mmHg以上とされている。
・ 欧米ガイドラインでは降圧目標は140/90mmHg未満としているがそれが妥当かどうかのエビデンスはない。
・ 降圧のスピードには配慮が必要で、降圧は緩徐に行い、一般的に初期量は最小常用量の半量から開始し、めまい・立ちくらみに注意しながら4週間間隔以上で増量し、3-6ヶ月以上かけて目標値までもっていく。
・ 合併症のない場合はCa拮抗薬(脳血管障害抑制)、ARBまたはACEI(心・腎保護作用)、少量の利尿薬が第一選択(β遮断薬は有用でなく禁忌多い、α遮断薬は心不全起こすこと多い)。

○ 虚血性心疾患

・ 女性の場合に重症例が多く、生命予後も不良。
・ アスピリン(心血管イベント抑制)は禁忌がない限り使用。
・ β遮断薬は使用しにくいが少量ででも使用する価値はある。目標としては安静時心拍数を55-60/分に下げる。
・ 亜硝酸剤は狭心症には有効だが、(残存虚血なしでの)長期使用についての効果は不明。
・ Ca拮抗薬は短時間作用型<長時間作用型を推奨。
・ 1枝病変の場合、薬物治療での予後も良好。なので血行再建に関しては慎重に検討すべきだが、左主幹部病変や左前下行枝を含む多枝病変で左室機能低下(LVEF 50%未満)例では積極的にすべきである。
・ 急性心筋梗塞において、無症状が25%にみられるという事実がある。
・ 心筋梗塞の急性期治療が発展してはいるものの、高齢者の院内死亡率は20%前後と高い。

○ 脳血管障害

・ くも膜下出血において、女性の頻度は男性の2倍。しかも発症年齢は男性では加齢とともに減少するものの女性ではむしろ加齢で増加し70歳代でピーク。
・ 心房細動(特にNVAF)の増加により心原性脳塞栓が増加中。
・ 痴呆に関してはアルツハイマーでなく脳血管性痴呆のほうを来たしやすい。

○ 肺炎

・ 無熱で呼吸器症状が乏しい例が多い。平素との行動の変化に注意。痰の色も重要。
・ 白血球数は重篤例の早期には減少して左方移動を伴うことがある。
・ 炎症の評価において、他の感染(尿路・じょく創)の合併に注意。

○ 糖尿病

・ 耐糖能は低下する。理由はインスリン抵抗性↑(体組成の変化)、インスリン初期分泌の遅延・低下(膵β細胞の疲弊)。
・ 最近、インスリン抵抗性がミトコンドリア活性の低下と関連するという報告が注目されている。筋肉だけでなくβ細胞にもミトコンドリアの機能低下が生じるというもので、運動で機能回復が望めるという。
・ 多くは成人期に発症しており罹病期間が長い。一方、老年期での発症は軽症で罹病期間も短いことが多い。
・ 高齢者糖尿病治療ガイドラインによると、以下の場合に厳格なコントロールが必要とある。
 ? 空腹時血糖が140mg/dl以上
 ? 糖負荷後血糖値が250mg/dl以上
 ? HbA1cが7.0%以上
 ? 糖尿病性網膜症あるいは微量アルブミン尿を認める場合

□ 行路=こうろ=ホームレス
           
□ 呼吸機能検査=スパイロ=スパイログラム ・・ おもに肺活量と1秒量を測定。肺拡散能は一部の施設で可能。肺活量↓は拘束性障害(肺線維症など)、1秒量↓は閉塞性障害(肺気腫など)を示唆する。開業医で呼吸機能検査やってるとこは、ほとんどない。症例となる人数も少なく人手も要り、あまり儲けにならないからだ。

(現場)いずれも鼻に栓をして、口に紙パイプをくわえてもらう。
・ 肺活量の測定:数回ふつうの息をしてもらい、大きく吸って〜どんどん吸うどんどん吸う→はい吐いて吐いて吐いてず〜っと吐いて!→はい、もうふつうで。お疲れさん。
・ 1秒量の測定:はい、思いっきり息を吸ってぇ・・・はい!そこでビュウッ!と一気に吐き出す!お疲れさん。

□ 呼吸生理 ・・ 基礎医学レベルでの呼吸に関する学問。酸素・二酸化炭素分圧の計算、組織学が加わったりと臨床から離れる。しかし呼吸器科の人間には必須の学問。動脈血ガスデータの解釈には欠かせない。

□ 呼吸抑制 ・・ 血液中の二酸化炭素(分圧)の上昇などによって、呼吸の運動そのものが<自発的に>されなくなってくる場合。二酸化炭素の上昇は肺気腫など肺病変の関与が多いが、神経疾患(ALS、重症筋無力症、多発性硬化症など)の存在も忘れてはならない。

□ 骨シンチ=骨シンチグラフィー=骨シンチグラム ・・ 癌の骨への転移を調べる目的などで撮影する、骨の全体像写真。

□ 骨髄移植=BMT=bone marrow(骨髄)+transplantation(移植) ・・ 移植するための造血幹細胞を、かつてはHLA同一同胞骨髄から得る、という方法しか取れていなかった。厳密にはこのときの方法を「骨髄移植」と呼ぶ。その後HLA一部不一致、非血縁者など適応が拡大し、用いられる細胞・手段も多種多様となり、現在では改めて「造血幹細胞移植」と呼ばれるようになっている。

□ 骨髄抑制=ミエロサプレッション ・・ 血液を造る骨髄の機能が抑制された状態。抗癌剤の副作用などで起こりうる。白血球の減少は感染を、赤血球の減少は貧血を、血小板の減少は出血を招く。化学療法を始めて1〜2週間が骨髄抑制の強い時期。

□ 呼吸抑制 ・・ 呼吸が苦しいと通常呼吸の回数は増えるが、血液中の二酸化炭素が多い病態(肺気腫など)では逆にそれ自体が呼吸の回数を遅くさせ、最悪の場合は呼吸停止となる。肺気腫の患者に睡眠薬・抗不安薬を出せば呼吸抑制となる恐れあり。

□ コスト ・・ 病院の器具の値段を指していう場合と、あと医療従事者の給料・年俸などを意味する場合がある。

□ コベン ・・ 「オーベン」はドイツ語だがこっちは造語。結局はオーベン支配下の研修医を指す。

□ コラーゲン ・・ 臨床での場合は「膠原病(Collagen Disease)」の意で使われる。

□ コンサルト ・・ 目上、オーベンや他科への相談のこと。
 
□ コンタミ ・・ 不純物が検体に入ってしまうこと。取り直し・やり直しに迫られる。なので風邪のときは実験しないほうがいい。

□ コンプライアンス ・・ 病気の分野では「弾性」、つまり伸びやすさの意味で使われる。または、患者が内服をきちんと守れているかの状態。

□ 誤嚥性肺炎=嚥下性肺炎=誤飲性肺炎 ・・ 食べて食道に入るはずが、脳梗塞の後遺症のせいなどで誤って気管に入り、その下の肺で炎症を起こしたもの。窒息に至らず幸いではある。治療薬は通常の肺炎の治療とはチト違い、クリンダマイシンなどで嫌気性菌をターゲットにおくのが通常。食事介助がせっかちだとそれを助長する可能性もある。

□ 「ご指摘のように」 ・・ 学会会場などで質問を受けたときに返答に際して用いる言葉。こう言われると少し気分はいい。

□ ゴーストライター ・・ 多くは教授の論文、刊行本を陰で作成している医者。清書を教授が見て修正、ゴーサイン。書かされている医者が自分を皮肉ってこう呼ぶ。だが引き受けた人間が悪い。

□ ゴルフコンペ ・・ 大学病院に限らずどの病院でも行われるゴルフイベント。順位別に商品が用意され、終了後はフロにつかって雑談が定番。このとき様々な情報が病院どうしで交換される。

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