□ 心不全 

 心臓はポンプ。通常、この力が弱くなり→出てくる血液が不足した場合を指す。メインである左心室が弱った「左心不全」のことを指すことが多いが、これが進行すると右心室まで巻き込み、「左心不全」+「右心不全」=「両心不全」と呼ばれる。左心不全の所見としては、胸部レントゲンでの心拡大+両側胸水貯留の2所見が典型的。

※ 世界的な権威である米国心臓病学会(ACC)と米国心臓協会(AHA)のガイドラインが2005年8月に4年ぶりに改訂された。特に変更・強調された点としては・・

・ 心不全のステージングを4段階に分類(A/B/C/D)。

・ Aの段階の者:つまり危険因子のある者に関しては早期発見・コントロールにつとめれば心不全を減らせる。

・ <うっ血性心不全>という病名のうち、<うっ血性>という言葉を不適切と判断、除外した。これは、うっ血による症状がないのに心臓に障害がすでに出ているケースが多いからだという。なので<うっ血性・・>と診断したところで、それは遅すぎた診断なのだ。早期発見の重要性を意識した意見だ。

・ ICD(植え込み型除細動器)適応の拡大を推奨。

・ 循環器医師は終末期心不全患者(Dの段階)へのホスピスケア(患者・家族との相談の上での)を勧めることにも関心を寄せるべき。 

心不全=収縮不全+拡張不全

○ 拡張不全の特徴 ← トピックス

・ 収縮不全に比べて高齢者(有病率は75歳以上で最多)、女性に多い。
・ うっ血性心不全のうち、実際1/3以上が正常の駆出率である(正常駆出率=正常EFは50%以上)。
・ 収縮不全が出現しているときには拡張不全がすでに合併していることが多い。
・ 高血圧が基礎疾患であることが多い。一方で収縮不全は虚血性心疾患の占める割合が高い。
・ 死亡率に関しては(拡張不全と収縮不全との比較)見解は統一されていない。
・ 拡張能を規定する因子は?左室弛緩能(収縮期に発生した張力を低下させる過程で、拡張早期に起こる)、?左室スティフネス(左室の受動的硬さ)
  ?→?の順に起こってくるといわれている。

  ?の障害が起こると左室圧下降速度の低下→左房・左室圧較差が低下→急速流入期における左室流入障害をきたす。
  ?の障害が起こると左室に血液が流入した際の左室圧の上昇が大きくなる。

  いずれにしても左房から左室への流入障害が起こる → 心拍出量の低下 → 左室への流入量維持のため、左房圧が上昇 → 肺うっ血 → 胸水・両心不全へ

 なので拡張障害単独によっても肺うっ血をきたしうる(つまり肺うっ血は収縮障害だけによるものではない)。

・ 実際の臨床の場では超音波ドプラ法から推定していく。なお心不全がなくてこの(ドプラ法)所見が<早期発見>された65歳以上のうち、11-15%が5年以内に心不全を発症したという報告がある。

○ 心不全そのものの診断

・ 症状 ・・ 呼吸困難、咳(以上2つは運動・臥位で増強)、倦怠感(心拍出量↓のため)、浮腫。
・ 聴診所見 ・・ ?・?音、ラ音。
・ 胸部レントゲン ・・ 心拡大、うっ血、胸水。
・ ANP/BNP ・・ ともに心不全の重症度に伴い上昇する。健常人のBNP濃度はANP濃度の約1/6。BNPは?左室駆出率、?左室拡張末期圧、?血中ノルエピネフリン、?エンドセリン-1(この??は心筋細胞障害因子)と相関する。ANPは?との相関はあまりない。BNPは200pg/mlを越えると運動耐容能が急激に低下する。
・ 心電図、心臓超音波検査

これらで心不全の診断と重症度把握、基礎疾患の大まかな検索を行う。

必要によりけりだが、同様に非侵襲的に以下の検査が追加される。

・ 心筋シンチ=RI ・・ 心筋の血流量をみるが、あくまでも相対的なもの。血流が特に低下してそうな部分を検出する。絶対量を示すものではないので異常所見=血流低下とは限らない。核種としては123I-BMIPP(心筋のエネルギーの6割以上が脂肪酸のβ酸化に依存することを利用し、心筋障害を反映させる)、MIBG(交感神経機能を反映。交感神経の亢進は心筋酸素消費量を増加させ心機能を低下させるほか、不整脈を増やす)
・ PET ・・ 相対的なシンチに対し、PETでは絶対的な血流量を測定できる。核種は18F-FDG(糖代謝を反映)。
※ 心筋のエネルギー源は遊離脂肪酸とブドウ糖。正常心筋では6割以上を脂肪酸のβ酸化に頼るが、虚血心筋では解糖系へと代謝経路が切り替わり、ブドウ糖利用増加が虚血の程度を反映することになる。これを利用したのがさきほどの18F-FDG PETである。

 心不全の治療について

○ β遮断薬

・ 投与はあくまでも<start low and go slow(低用量で開始し3-6ヶ月で維持量へ)>。
・ ある程度の低血圧・徐脈は副作用としてでなく、主作用による理にかなった生体反応として受け止める考え方が必要だという。しかしめまい・倦怠感の症状まで起こしてくるなら減量・中止は止むを得ない。
・ 耐糖能・糖尿病悪化という副作用はβ2受容体遮断による副作用であり(骨格筋での糖利用減少)、β1選択性のものを選べばその点は解決できるという。
  カルベジロールはインスリン抵抗性の改善作用があり、ACEIやARBには耐糖能改善作用があるため併用も勧められる。
・ 心不全で本剤の適応が見直されたといっても、実際BNPが500-600pg/mlを超えた場合、β遮断薬の導入が困難な場合が多い。

○ ACEIとARB

△ ACEI
・ アンジオテンシン?→?への産生を阻害しアルドステロン↓・Na利尿によって降圧するほか、ブラジキニン分解阻害によりNO産生を刺激。
 ※アンジオテンシン?の増加は心血管リモデリングを増強させる。
・ 多くは腎排泄性なので腎不全には慎重に投与すべきだが中には胆汁排泄性のもの(トランドプリル)がありこちらは腎不全でも使いやすい。
・ 副作用は空咳が多い。妊婦には催奇性あり禁忌。

△ ARB
・ AT1受容体レベルでRA系を阻害。咳の頻度が少ない。

○ 抗アルドステロン薬

・ 歴史が古い薬ではあるが、1999年のRALES試験、2003年のEPHESUS試験にて、本剤がACEIやβ遮断薬に併用することで心不全に有効性があることが確認され、その地位が向上。※ ただし重症例での検討。

○ サイトカイン療法、エンドセリン拮抗薬

△ サイトカイン療法
・ 抗TNF−α療法(エタナセプト、インフリキシマブ) ※ 心不全ではTNF−αが増加することが分かっており、心筋炎・心筋症でこれらサイトカインが高値を示すことが多い。
・ 抗炎症性サイトカインによる治療法(特にIL-10)
・ サイトカイン遺伝子治療

△ エンドセリン(ET)拮抗薬
・ 急性心筋梗塞による心不全、あるいは慢性心不全においてエンドセリン(ET)、特にET-1の血中濃度上昇が報告されており、それが高い心不全ほど予後が不良。ET受容体拮抗薬であるボセンタンはET系に特異的に作用し、血管拡張作用、心筋リモデリング抑制作用により心不全に有効。

○ 重症心不全におけるペーシング療法

CRT=cardiac resynchronization therapy=心臓再動期療法 

?心臓の両心室を同時にペーシング+?至適AV間隔の設定、によって、収縮の同期性を高める。

重症心不全の治療の選択肢の1つで、2003年5月より薬事承認。ガイドライン適応は、NYHA ?/?度、QRS幅>130ms、左室駆出率35%以下の重症心不全となっているが、心室のdys-synchrony(右心室と左心室の動きのズレ)の程度を評価して適応を決めようという試みがされている。

刺激の出るリードは当然2本必要で、1本は右心室心尖部でもう1本は冠状静脈洞に留置(冠静脈穿孔が0.5-数%)。これにより中隔側と左室自由壁から左心室を挟み込む形で、同時にペーシングを行う。

血行動態が安定化し、なかでも血圧の上昇が顕著だという。

■ 心房細動=AF

 上室性の不規則な脈。サイナスから突然頻脈の心房細動になるのが「発作性心房細動=パフ」。この場合はサイナスに戻す治療を積極的に行うが、長期化した心房細動は脈拍数の調節を優先する。拡大した左心房は血栓形成→脳梗塞のリスクあり。

 心房細動発症→慢性化のメカニズムとしては、

? 肺静脈起源(PV myocardial sleeve:左心房から肺静脈に一部連続する心筋組織)の異所性興奮
 ※ AFの自発興奮となる場所はPV開口部に集中する。pafへのアブレーション治療の標的となる。

? 心房(一部肺静脈)のリエントリー

? 電気的・構造的リモデリング
 構造変化で伝導が悪化、頻拍でさらに著明となりAF begets AF(AFがAFを生む)の状態となる。
 
 ・・の3極構造として考えられており、これらは互いを助長する。

 治療は↓

 サイナスに戻す<リズム治療>とレートコントロール=レート治療のどちらかを目指すことになる。

 ※1年以上持続、あるいは左心房径5センチ以上は後者の治療を目指すようになる。

 この2つの治療の比較を行った臨床試験が2002年のAFFIRM試験で、結果的にはレート治療に優位性が示された。ただ、リズム治療の群では抗不整脈薬投与でむしろ死亡リスク増加する問題が指摘され(効果不十分なら速やかに中止すべき)、抗凝固療法の必要性も強調された。この米国・カナダの報告は日本のガイドラインと考え方が矛盾するため(アミオダロンの使用多すぎ)、その後日本独自の臨床試験である多施設共同の無作為試験<J-RHYTHM試験>・・不整脈関連ではわが国初の大規模前向き臨床試験・・が2003-2005年実施され2007年3月に発表された。

 中身としてはまず発作性(発症48時間未満で治癒見込あり)と持続性(それ以上持続し1年未満)に分け、さらに各々をリズム治療とレート治療の群にランダムに振り分けた(いずれも抗凝固療法を併用)。

 で、結果的には発作性・持続性の両群でリズム治療のほうが洞調律維持率が高く、推奨された。持続性ではレート治療も有効だが抗不整脈薬の選択が適切なら2年は(半数の例で)洞調律維持効果もあったと判明した。本試験によって従来の日本のガイドラインのQOLへの有効性が裏付けられた。

□ 深夜(帯) ・・ ナースの勤務帯で、通常は深夜0時から早朝、日勤が出勤してくる9時くらいまでをさす。早朝は化粧が取れてしまっていて、見てはいけなかったものを見てしまうことあり。

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