サーガマニュアル2007秋 た だ ち
2007年9月17日□ ターゲス=デイリー・プロフィール=デイリー・プロファイル=血糖日内変動 ・・ 糖尿病患者の1日の血糖推移。通常は7回測定。各食事の前後と眠前。合わせて血中IRI(インスリン)、検尿も採取することが多い。
□ 退院サマリー=サマリー ・・ 患者が退院したときに作成する病歴要約の書類。入院時の情報、入院経過、検査結果、退院後の方針
など、書く事は山ほどある。昔は手書きだった・・・。
□ 対光反射 ・・ ペンライトで瞳孔を照らし、光の当たった縮瞳の有無を見る。これが直接対光反射。光の当たってない
もう一方の瞳孔を見るのが間接対光反射。なお、対光反射前の左右の瞳孔の大きさ・左右差も重要だ。
□ 対症療法(たいしょうりょうほう) ・・ 根本的な治療でなく、現在の症状・状態にのみ対処する治療内容。その場しのぎ、ともいえる。
□ 退職金 ・・ ドクターの場合ほとんど受け取れないところが多い。各人、勤務前に確認しておく必要が・・そんな勇気はないだろうな。公立の病院では発生することも多いが、通常は3年以上勤務しないと出ない。人事はそこもきちんと計算している。
□ 帯状ヘルペス(たいじょうへるぺす) ・・ 肋間神経に沿って起こる発疹。痛い。再発ありうる。人には移らない。
□ タミフル ・・ インフルエンザA/Bウイルスの薬で、発症48時間以内なら有効。1歳以下は慎重投与。最近、耐性の報告あり。なお昨年から出たタイプは2年間の品質期限(それまでは1年間しかもたなかった)。したがって昨年処方された分は捨てずに、今年使用しても可。意外と知られていない。
※ 鳥インフルエンザのパニックで、近いうち需要が増加する恐れがある。今のうちに個人的に備蓄することをすすめる(官僚・一部の医療従事者はおそらく独自のルートで入手するだろう)。
□ たこつぼ型心筋症=Ampulla Cardiomyopathy=たこつぼ型心筋障害
極めてまれで70歳以上のすなわち高齢者女性(男性の7倍!)に多く、症状・心電図所見(特に前壁中隔領域のST上昇)は一見AMI(急性心筋梗塞)と思いきや、カテーテル検査では冠動脈に狭窄所見が認められず、左室造影で収縮期に≪たこつぼ≫形状を呈する心室を認める。
具体的には心尖部の収縮が低下し(心尖部バルーン状拡張・無収縮)、これを代償するかのように心基部が過大な収縮をする(心基部過収縮)。
発症後数週間〜一ヶ月以内に心機能は改善するものが多く、予後良好といわれているが中には重症例もある。
原因は内因性カテコラミン増加による心筋障害説が有力。精神的・肉体的ストレスを契機に発症するらしい。中越地震の際にこの患者が増えたのもうなずける。
なお88症例を解析した論文(日本、2001年)によると、男女比1:6.3、年齢10-88歳で平均67歳、初発症状は胸痛・胸部不快が67%、心電図異常(9割がV3-4に最大のST上昇。経過とともにQT延長+巨大陰性T、やがて正常化・・・まさに前壁梗塞の経過をとる)が20%。採血ではトロポニンT陽性が72%と紛らわしい。CPK上昇は52%(壁運動低下部分の大きさのわりに、比較的上昇が少ない)。
心不全・肺水腫が22%に合併、ショックが15%に合併。心破裂、多枝スパズムによる死亡例の報告もあるという。教科書的には、<一過性良性病態>ということになってはいる。
※ 古い論文では原因・病態として「多枝攣縮による気絶心筋」として報告されていたが今はあまり支持されていない。
※ さらに特殊例として、可逆的な左室流出路の狭窄例がある。左心室だけでなく右心室にもみられる。閉塞性肥大型心筋症とは機序がまた異なるという。流出路心筋の括約筋過収縮が考えられている。
□ 多剤耐性(MDR) ・・ 通常は菌の場合に使用する言葉。抗生剤のほとんどが効かない菌(多剤耐性菌)。特に緑膿菌の場合、非常に厳しく、正直治療法がない。
□ 多剤耐性緑膿菌=MDRP ・・ 本来、緑膿菌に対して効くはずのβラクタム系、ニューキノロン系、アミノ配糖体系の抗生物質に耐性を獲得した場合。喀痰培養の抗生剤感受性結果、もしくは治療の過程からそう判断される。なかでも増加しているのはカルバペネム系を加水分解するメタロβラクタマーゼ産生菌だ。用途の広いカルバペネムの耐性化となると、事態はいっそう深刻だ(実際、有効な治療はない)。なので現在は治療というより予防のほうに重点がおかれている。ワクチンの試みもあるが、実用化にまで至ってない。
□ 立ちくらみ ・・ 立ち上がったときにクラクラする。起立性低血圧の症状。通常は立つと血圧は同じか上がるが、本症では逆に下がるのでめまいがする。自律神経失調の症状、あるいはα遮断薬(カルデナリンやハルナール)の副作用だったりもする。
□ 多発性骨髄腫=ミエローマ=MM ・・ 血液疾患。異常な骨髄細胞(腫瘍化した形質細胞)から異常で役立たずな抗体が金太郎飴状態に産生され(M蛋白)、血液がネバくなる。産生の場所のこともあり骨に病変、骨融解で高カルシウム血症も。正常な抗体は減るので感染症のリスク高い。治療はここ30年の伝統、MP間欠療法(メルファラン、プレドニゾロンを4日間併用、以後間欠的に4週間ごとに投与)。M蛋白を指標に。
□ タバコ(による中毒)
・ タバコ1本のニコチン量は7-24mg。致死量は0.5-1.0mg/kg(成人で30-60mgすなわち2本分、乳幼児で10-20mgすなわち1本分)。ただ実際はニコチンの催吐作用・吸収速度(ゆっくり)などにより実際の吸収量は少なめ。
・ 中枢神経・自律神経・運動神経に刺激・興奮的に作用しのち抑制作用を示す。アセチルコリンと異なり分解されるまでの時間が長い。
・ 大量喫煙、タバコ浸出液の摂取では刺激・興奮症状がみられないまま麻痺・虚脱→死に至ることもある。
軽症:嘔気、嘔吐(摂取後初期10-60分以内)、頭痛
重症:振戦、錯乱、虚脱、呼吸筋麻痺
※ 小児では誤飲量が少ないため、悪心・嘔吐、顔面蒼白、下痢、不安興奮程度。
※ 2時間以上たっても症状が出なければほぼ心配なし。
※ 日本小児科学会生活環境改善委員会の指針では、タバコを2cm以上誤飲したり、浸出液を誤飲した場合には胃洗浄を施行し、2cm以下の場合は経過観察するとされている。
・ タバコ摂取に気づいたらまず吐かせる。その際水を飲ませたりして出させようとしてはならない(かえって吸収を招く)。ただし浸出液の摂取の場合は水などを飲ませて直ちに吐かせる。
・ 大量服用時、症状発現時には胃洗浄を施行。
・ 重症例では下剤・活性炭を投与。
・ PAMのような拮抗薬はない。症状に応じて適宜、アトロピン、ジアゼパムなどを投与する。
□ タヒる=タキる ・・ 「tachycardia=頻脈」が語源。モニターが頻脈のときに職場でこう呼ばれる。
□ 短軸 ・・ 楕円があるとすると、その長い径が「長軸」で、それに直行する短い径が「短軸」。心臓の場合(ラグビーボールとすると)、縦切りが「長軸」で、輪切りが「短軸」。
□ 胆石=Gall Stone ・・ 持ってる人で痛みの経験があれば胆嚢ごと取るべき。今は開腹せず腹腔鏡でできる。
□ 胆嚢ポリープ ・・ 胆嚢の内部にときにみられる小さな腫瘤。経過観察とし、3〜6ヶ月ごとに再検査を勧めることが多い。のう胞もそうだが、いつまでフォローを続けるべきかけっこう悩む。
□ 蛋白尿 ・・ 正常人でも1日50-100mg程度は出ておりその場合<生理蛋白尿・・運動後や発熱時、起立時など>というが、病的な蛋白尿は1日150mg以上の場合である。試験紙で調べるのは(±)だとか(+)だとかの定性法。具体的にはこれらは濃度を表しており、
± → 5 mg/dl
1+ → 30 mg/dl
2+ → 100 mg/dl
であると、大まかに示唆するものである。健診でひっかかるのはこのうち±、1+が最も多いが、1+以上は糸球体疾患を疑って精査を勧めるべきとされている。また試験紙での検査は、異常蛋白であるベンス・ジョーンズ、β2-MGは見落としてしまうのでそこは留意しておく必要あり。
IgA腎症が実はかなり見落とされていたという報告(おいおい・・・!)があったこともあり、健診での尿蛋白はこれまで以上に気を遣いたい。
□ タンポナーデ=心タンポナーデ=心タンポ ・・ 心臓の周囲に心嚢液が溜まって、それで心臓が動きにくくなる。血圧低下・脈圧減少・頻脈となる。原因ありとなしがある。
□ 代医 ・・ 学会出張やバイト、病欠のときに立てるピンチヒッター。代わってもらった暁には、おごるかお土産しないと。
□ 大腸憩室炎 ・・ 大腸のうち上行結腸に好発する、憩室内(浅いマンホール)で起こった炎症。便秘で糞が慢性に蓄積すると起こりやすい(なので高齢者に多い)。好発部位の関係で、虫垂炎と誤診されることがある。
□ 大腸ファイバー=大腸内視鏡=コロンファイバー=大腸カメラ ・・ 肛門から入れて見るためのカメラ。下剤で便が十分出ていないと、観察が不十分となる。観察範囲は、直腸→S状結腸→下行結腸→横行結腸→上行結腸→回盲部あたりまで。
□ 代表者会議 ・・ 院長、婦長、検査技師など、各部署の責任者が集まり行われる井戸端会議。本音の議論がここで交わされる。めいめいが部下の意見を反映させる責任を負っているため、ときに戦争となる。
□ 脱臼・(関節面の骨折あり→)脱臼骨折
・ 骨折に伴う脱臼 ・・ Galezzi骨折(橈骨骨幹部骨折+遠位橈尺関節脱臼)、Monteggia骨折(尺骨近位部骨折+橈骨頭脱臼)など。
・ 末梢循環不全があれば少なくとも6-8時間以内に血流再開の必要性あり。
・ コンパートメント症候群では12時間以内に筋膜切開を行う。
◇ 手関節
・ 遠位橈尺関節亜脱臼 ・・ 前腕回旋障害、脱臼部の骨性隆起。レントゲンで前腕回内外による(橈骨・尺骨の)位置関係変化あり。整復後1ヶ月間ギプス固定。
・ 月状骨周囲脱臼、月状骨脱臼 ・・ 高度な手関節背屈で起こる。整復後1ヶ月間ギプス固定。正中神経圧迫による手根管症候群合併もあり。
◇ 肘関節
・ 全脱臼の2割。神経・血管(上腕動脈)損傷の危険度が高い。
・ 前方脱臼は肘関節屈曲位で前腕後方より外力加わったとき、後方脱臼は肘関節過伸展位で手をついた際。後方脱臼が多い。
・ 非観血的に整復。とくに後方脱臼では肘関節を屈曲し前腕を末梢方向に牽引して整復(Depalma法)。
◇ 肩関節
・ 大関節のなかで最も脱臼しやすい(5割)。95%が前方脱臼(肩関節の外転・伸展・外旋による)であり次いで後方脱臼。
・ 前方脱臼 ・・ 肩峰は過度に突出、前方に上腕骨頭を触知する。腋窩神経がしばしば損傷され上腕外側の知覚消失が起こる。
◇ 肩鎖関節
・ 肩峰に下向きの力がかかって生じること多い。
・ Rockwoodの分類では?〜?タイプに分類され、タイプ?:捻挫、タイプ?:亜脱臼、タイプ?:完全脱臼、タイプ?:タイプ?+鎖骨遠位端の後方転位、タイプ?:タイプ?+鎖骨遠位端の上方転位、タイプ?:鎖骨遠位端が肩峰や烏口突起下方にある(肺・腕神経叢の損傷ありうる)。
・ タイプ?・?は保存的治療。タイプ?は保存か手術かで意見分かれる。タイプ?以降は観血的整復となる。
◇ 足関節
・ 高所からの墜落が多い。内方、後方脱臼が多い。多くが脱臼骨折の形をとる。
・ 骨折を伴う場合は観血的整復。
◇ 膝関節
・ 前方脱臼 ・・ 膝の過伸展、後方脱臼 ・・ 膝関節屈曲時の回旋力によるもので、前方脱臼のほうが多い。
・ 前方脱臼では非観血的、後方脱臼は観血的に整復。
◇ 股関節
・ 後方脱臼がほとんど。高エネルギー外傷が多い。
・ 前方脱臼 ・・ 屈曲外転位に対する強い外転で起こる。屈曲・外転・外旋認める。
・ 後方脱臼 ・・ 股関節屈曲時+大腿骨長軸方向への外力で起こる。屈曲・内旋・内転認める。後方脱臼した大腿骨頭により坐骨神経が損傷されることあり。
・ 非観血的に修復可能が多いが全身麻酔が必要。
□ ダブルルーメン ・・ 太目のIVHカテーテル。2ルートある。カテコラミンやFOYなど、単独でいきたいルートが必要なときなどに使用。だがふつうのシングルカテーテルに比べて感染しやすい。
□ 致死性不整脈 ・・ 心室細動(Vf)と心室頻拍(VT)の総称。基礎となる心疾患があるかないかで以下に分類。
● 基礎心疾患あり→陳旧性心筋梗塞、拡張型心筋症など。
● 基礎心疾患なし→Brugada(ブルガダ)症候群、QT延長症候群
□ 中隔基部 ・・ 心室中隔(左心室と右心室の間の壁)の上方部分。心室中隔を流れる冠動脈の血流はまず基部から→下部(心尖部)へと。なので心室中隔の基部の動きの良し悪しで、ある程度冠動脈の病変部位を推定することが可能なときもある。「ベース」と呼んだりもする。
□ 注射当番 ・・ 朝・晩とある注射・点滴を、レジデントが中心となって1人ずつ回る、その当番。レジデントが少ない医局では院生や助手までが借り出される。
□ 虫垂炎 ・・ 右下腹部痛が特徴的だが、実際はみぞおちの痛みで初発する。血液検査で白血球増加を認めれば手術を視野におき抗生剤開始となる。腹部CTでは本来の虫垂部分がlowにぼやけるのが特徴。
※ 虫垂が盲腸先端まで映り、かつ直径が6?以下で炎症がなければ正常な虫垂と診断する。
□ 腸管浮腫 ・・ イレウスの際にみられる、水分が腸の中だけでなく腸の壁に貯留した状態。このため腸が重たくなり、動けなくなる。利尿剤で対処するが、循環不全対策の補液も重要。
□ 腸間膜動脈閉塞 ・・ 腸の血流をつかさどる動脈の閉塞。激烈で進行性の腹痛を呈する。腸は次第に壊死していくので早期診断が重要。心房細動など塞栓しやすいリスクの有無も重要。
□ 腸間膜静脈閉塞 ・・ 腸の血流をつかさどる静脈の閉塞。麻痺性イレウスを呈し、腸管浮腫が起こる。なので動脈閉塞とは全く病態が異なる。静脈は通常流れが遅いので、凝固傾向が背景にあることが多い。脱水・寝たきりなど。
□ 調剤薬局=院外薬局 ・・ 病院内に薬局を経営すると薬が余ったりしたとき損が大きい、ということで病院の外に建てられ契約した薬局。品数が豊富なのがメリットだが、通常中が狭いのと薬剤師が「いらんこと」言ったりトラブルが収集しにくいのが難。
□ 腸閉塞=イレウス ・・ 腸が何らかの原因で「詰まる」か「麻痺する」。これにより便が進まなくなり吐いてしまう。自力ではまず治せない。絶食と補液と鼻に入れるチューブが治療の基本。腹部の手術歴の多い人によくみられる。別名「イレウス」。
□ チラージンS ・・ 甲状腺ホルモン剤(T4)。甲状腺機能低下症に投与する。副作用に狭心症あり。
□ 退院サマリー=サマリー ・・ 患者が退院したときに作成する病歴要約の書類。入院時の情報、入院経過、検査結果、退院後の方針
など、書く事は山ほどある。昔は手書きだった・・・。
□ 対光反射 ・・ ペンライトで瞳孔を照らし、光の当たった縮瞳の有無を見る。これが直接対光反射。光の当たってない
もう一方の瞳孔を見るのが間接対光反射。なお、対光反射前の左右の瞳孔の大きさ・左右差も重要だ。
□ 対症療法(たいしょうりょうほう) ・・ 根本的な治療でなく、現在の症状・状態にのみ対処する治療内容。その場しのぎ、ともいえる。
□ 退職金 ・・ ドクターの場合ほとんど受け取れないところが多い。各人、勤務前に確認しておく必要が・・そんな勇気はないだろうな。公立の病院では発生することも多いが、通常は3年以上勤務しないと出ない。人事はそこもきちんと計算している。
□ 帯状ヘルペス(たいじょうへるぺす) ・・ 肋間神経に沿って起こる発疹。痛い。再発ありうる。人には移らない。
□ タミフル ・・ インフルエンザA/Bウイルスの薬で、発症48時間以内なら有効。1歳以下は慎重投与。最近、耐性の報告あり。なお昨年から出たタイプは2年間の品質期限(それまでは1年間しかもたなかった)。したがって昨年処方された分は捨てずに、今年使用しても可。意外と知られていない。
※ 鳥インフルエンザのパニックで、近いうち需要が増加する恐れがある。今のうちに個人的に備蓄することをすすめる(官僚・一部の医療従事者はおそらく独自のルートで入手するだろう)。
□ たこつぼ型心筋症=Ampulla Cardiomyopathy=たこつぼ型心筋障害
極めてまれで70歳以上のすなわち高齢者女性(男性の7倍!)に多く、症状・心電図所見(特に前壁中隔領域のST上昇)は一見AMI(急性心筋梗塞)と思いきや、カテーテル検査では冠動脈に狭窄所見が認められず、左室造影で収縮期に≪たこつぼ≫形状を呈する心室を認める。
具体的には心尖部の収縮が低下し(心尖部バルーン状拡張・無収縮)、これを代償するかのように心基部が過大な収縮をする(心基部過収縮)。
発症後数週間〜一ヶ月以内に心機能は改善するものが多く、予後良好といわれているが中には重症例もある。
原因は内因性カテコラミン増加による心筋障害説が有力。精神的・肉体的ストレスを契機に発症するらしい。中越地震の際にこの患者が増えたのもうなずける。
なお88症例を解析した論文(日本、2001年)によると、男女比1:6.3、年齢10-88歳で平均67歳、初発症状は胸痛・胸部不快が67%、心電図異常(9割がV3-4に最大のST上昇。経過とともにQT延長+巨大陰性T、やがて正常化・・・まさに前壁梗塞の経過をとる)が20%。採血ではトロポニンT陽性が72%と紛らわしい。CPK上昇は52%(壁運動低下部分の大きさのわりに、比較的上昇が少ない)。
心不全・肺水腫が22%に合併、ショックが15%に合併。心破裂、多枝スパズムによる死亡例の報告もあるという。教科書的には、<一過性良性病態>ということになってはいる。
※ 古い論文では原因・病態として「多枝攣縮による気絶心筋」として報告されていたが今はあまり支持されていない。
※ さらに特殊例として、可逆的な左室流出路の狭窄例がある。左心室だけでなく右心室にもみられる。閉塞性肥大型心筋症とは機序がまた異なるという。流出路心筋の括約筋過収縮が考えられている。
□ 多剤耐性(MDR) ・・ 通常は菌の場合に使用する言葉。抗生剤のほとんどが効かない菌(多剤耐性菌)。特に緑膿菌の場合、非常に厳しく、正直治療法がない。
□ 多剤耐性緑膿菌=MDRP ・・ 本来、緑膿菌に対して効くはずのβラクタム系、ニューキノロン系、アミノ配糖体系の抗生物質に耐性を獲得した場合。喀痰培養の抗生剤感受性結果、もしくは治療の過程からそう判断される。なかでも増加しているのはカルバペネム系を加水分解するメタロβラクタマーゼ産生菌だ。用途の広いカルバペネムの耐性化となると、事態はいっそう深刻だ(実際、有効な治療はない)。なので現在は治療というより予防のほうに重点がおかれている。ワクチンの試みもあるが、実用化にまで至ってない。
□ 立ちくらみ ・・ 立ち上がったときにクラクラする。起立性低血圧の症状。通常は立つと血圧は同じか上がるが、本症では逆に下がるのでめまいがする。自律神経失調の症状、あるいはα遮断薬(カルデナリンやハルナール)の副作用だったりもする。
□ 多発性骨髄腫=ミエローマ=MM ・・ 血液疾患。異常な骨髄細胞(腫瘍化した形質細胞)から異常で役立たずな抗体が金太郎飴状態に産生され(M蛋白)、血液がネバくなる。産生の場所のこともあり骨に病変、骨融解で高カルシウム血症も。正常な抗体は減るので感染症のリスク高い。治療はここ30年の伝統、MP間欠療法(メルファラン、プレドニゾロンを4日間併用、以後間欠的に4週間ごとに投与)。M蛋白を指標に。
□ タバコ(による中毒)
・ タバコ1本のニコチン量は7-24mg。致死量は0.5-1.0mg/kg(成人で30-60mgすなわち2本分、乳幼児で10-20mgすなわち1本分)。ただ実際はニコチンの催吐作用・吸収速度(ゆっくり)などにより実際の吸収量は少なめ。
・ 中枢神経・自律神経・運動神経に刺激・興奮的に作用しのち抑制作用を示す。アセチルコリンと異なり分解されるまでの時間が長い。
・ 大量喫煙、タバコ浸出液の摂取では刺激・興奮症状がみられないまま麻痺・虚脱→死に至ることもある。
軽症:嘔気、嘔吐(摂取後初期10-60分以内)、頭痛
重症:振戦、錯乱、虚脱、呼吸筋麻痺
※ 小児では誤飲量が少ないため、悪心・嘔吐、顔面蒼白、下痢、不安興奮程度。
※ 2時間以上たっても症状が出なければほぼ心配なし。
※ 日本小児科学会生活環境改善委員会の指針では、タバコを2cm以上誤飲したり、浸出液を誤飲した場合には胃洗浄を施行し、2cm以下の場合は経過観察するとされている。
・ タバコ摂取に気づいたらまず吐かせる。その際水を飲ませたりして出させようとしてはならない(かえって吸収を招く)。ただし浸出液の摂取の場合は水などを飲ませて直ちに吐かせる。
・ 大量服用時、症状発現時には胃洗浄を施行。
・ 重症例では下剤・活性炭を投与。
・ PAMのような拮抗薬はない。症状に応じて適宜、アトロピン、ジアゼパムなどを投与する。
□ タヒる=タキる ・・ 「tachycardia=頻脈」が語源。モニターが頻脈のときに職場でこう呼ばれる。
□ 短軸 ・・ 楕円があるとすると、その長い径が「長軸」で、それに直行する短い径が「短軸」。心臓の場合(ラグビーボールとすると)、縦切りが「長軸」で、輪切りが「短軸」。
□ 胆石=Gall Stone ・・ 持ってる人で痛みの経験があれば胆嚢ごと取るべき。今は開腹せず腹腔鏡でできる。
□ 胆嚢ポリープ ・・ 胆嚢の内部にときにみられる小さな腫瘤。経過観察とし、3〜6ヶ月ごとに再検査を勧めることが多い。のう胞もそうだが、いつまでフォローを続けるべきかけっこう悩む。
□ 蛋白尿 ・・ 正常人でも1日50-100mg程度は出ておりその場合<生理蛋白尿・・運動後や発熱時、起立時など>というが、病的な蛋白尿は1日150mg以上の場合である。試験紙で調べるのは(±)だとか(+)だとかの定性法。具体的にはこれらは濃度を表しており、
± → 5 mg/dl
1+ → 30 mg/dl
2+ → 100 mg/dl
であると、大まかに示唆するものである。健診でひっかかるのはこのうち±、1+が最も多いが、1+以上は糸球体疾患を疑って精査を勧めるべきとされている。また試験紙での検査は、異常蛋白であるベンス・ジョーンズ、β2-MGは見落としてしまうのでそこは留意しておく必要あり。
IgA腎症が実はかなり見落とされていたという報告(おいおい・・・!)があったこともあり、健診での尿蛋白はこれまで以上に気を遣いたい。
□ タンポナーデ=心タンポナーデ=心タンポ ・・ 心臓の周囲に心嚢液が溜まって、それで心臓が動きにくくなる。血圧低下・脈圧減少・頻脈となる。原因ありとなしがある。
□ 代医 ・・ 学会出張やバイト、病欠のときに立てるピンチヒッター。代わってもらった暁には、おごるかお土産しないと。
□ 大腸憩室炎 ・・ 大腸のうち上行結腸に好発する、憩室内(浅いマンホール)で起こった炎症。便秘で糞が慢性に蓄積すると起こりやすい(なので高齢者に多い)。好発部位の関係で、虫垂炎と誤診されることがある。
□ 大腸ファイバー=大腸内視鏡=コロンファイバー=大腸カメラ ・・ 肛門から入れて見るためのカメラ。下剤で便が十分出ていないと、観察が不十分となる。観察範囲は、直腸→S状結腸→下行結腸→横行結腸→上行結腸→回盲部あたりまで。
□ 代表者会議 ・・ 院長、婦長、検査技師など、各部署の責任者が集まり行われる井戸端会議。本音の議論がここで交わされる。めいめいが部下の意見を反映させる責任を負っているため、ときに戦争となる。
□ 脱臼・(関節面の骨折あり→)脱臼骨折
・ 骨折に伴う脱臼 ・・ Galezzi骨折(橈骨骨幹部骨折+遠位橈尺関節脱臼)、Monteggia骨折(尺骨近位部骨折+橈骨頭脱臼)など。
・ 末梢循環不全があれば少なくとも6-8時間以内に血流再開の必要性あり。
・ コンパートメント症候群では12時間以内に筋膜切開を行う。
◇ 手関節
・ 遠位橈尺関節亜脱臼 ・・ 前腕回旋障害、脱臼部の骨性隆起。レントゲンで前腕回内外による(橈骨・尺骨の)位置関係変化あり。整復後1ヶ月間ギプス固定。
・ 月状骨周囲脱臼、月状骨脱臼 ・・ 高度な手関節背屈で起こる。整復後1ヶ月間ギプス固定。正中神経圧迫による手根管症候群合併もあり。
◇ 肘関節
・ 全脱臼の2割。神経・血管(上腕動脈)損傷の危険度が高い。
・ 前方脱臼は肘関節屈曲位で前腕後方より外力加わったとき、後方脱臼は肘関節過伸展位で手をついた際。後方脱臼が多い。
・ 非観血的に整復。とくに後方脱臼では肘関節を屈曲し前腕を末梢方向に牽引して整復(Depalma法)。
◇ 肩関節
・ 大関節のなかで最も脱臼しやすい(5割)。95%が前方脱臼(肩関節の外転・伸展・外旋による)であり次いで後方脱臼。
・ 前方脱臼 ・・ 肩峰は過度に突出、前方に上腕骨頭を触知する。腋窩神経がしばしば損傷され上腕外側の知覚消失が起こる。
◇ 肩鎖関節
・ 肩峰に下向きの力がかかって生じること多い。
・ Rockwoodの分類では?〜?タイプに分類され、タイプ?:捻挫、タイプ?:亜脱臼、タイプ?:完全脱臼、タイプ?:タイプ?+鎖骨遠位端の後方転位、タイプ?:タイプ?+鎖骨遠位端の上方転位、タイプ?:鎖骨遠位端が肩峰や烏口突起下方にある(肺・腕神経叢の損傷ありうる)。
・ タイプ?・?は保存的治療。タイプ?は保存か手術かで意見分かれる。タイプ?以降は観血的整復となる。
◇ 足関節
・ 高所からの墜落が多い。内方、後方脱臼が多い。多くが脱臼骨折の形をとる。
・ 骨折を伴う場合は観血的整復。
◇ 膝関節
・ 前方脱臼 ・・ 膝の過伸展、後方脱臼 ・・ 膝関節屈曲時の回旋力によるもので、前方脱臼のほうが多い。
・ 前方脱臼では非観血的、後方脱臼は観血的に整復。
◇ 股関節
・ 後方脱臼がほとんど。高エネルギー外傷が多い。
・ 前方脱臼 ・・ 屈曲外転位に対する強い外転で起こる。屈曲・外転・外旋認める。
・ 後方脱臼 ・・ 股関節屈曲時+大腿骨長軸方向への外力で起こる。屈曲・内旋・内転認める。後方脱臼した大腿骨頭により坐骨神経が損傷されることあり。
・ 非観血的に修復可能が多いが全身麻酔が必要。
□ ダブルルーメン ・・ 太目のIVHカテーテル。2ルートある。カテコラミンやFOYなど、単独でいきたいルートが必要なときなどに使用。だがふつうのシングルカテーテルに比べて感染しやすい。
□ 致死性不整脈 ・・ 心室細動(Vf)と心室頻拍(VT)の総称。基礎となる心疾患があるかないかで以下に分類。
● 基礎心疾患あり→陳旧性心筋梗塞、拡張型心筋症など。
● 基礎心疾患なし→Brugada(ブルガダ)症候群、QT延長症候群
□ 中隔基部 ・・ 心室中隔(左心室と右心室の間の壁)の上方部分。心室中隔を流れる冠動脈の血流はまず基部から→下部(心尖部)へと。なので心室中隔の基部の動きの良し悪しで、ある程度冠動脈の病変部位を推定することが可能なときもある。「ベース」と呼んだりもする。
□ 注射当番 ・・ 朝・晩とある注射・点滴を、レジデントが中心となって1人ずつ回る、その当番。レジデントが少ない医局では院生や助手までが借り出される。
□ 虫垂炎 ・・ 右下腹部痛が特徴的だが、実際はみぞおちの痛みで初発する。血液検査で白血球増加を認めれば手術を視野におき抗生剤開始となる。腹部CTでは本来の虫垂部分がlowにぼやけるのが特徴。
※ 虫垂が盲腸先端まで映り、かつ直径が6?以下で炎症がなければ正常な虫垂と診断する。
□ 腸管浮腫 ・・ イレウスの際にみられる、水分が腸の中だけでなく腸の壁に貯留した状態。このため腸が重たくなり、動けなくなる。利尿剤で対処するが、循環不全対策の補液も重要。
□ 腸間膜動脈閉塞 ・・ 腸の血流をつかさどる動脈の閉塞。激烈で進行性の腹痛を呈する。腸は次第に壊死していくので早期診断が重要。心房細動など塞栓しやすいリスクの有無も重要。
□ 腸間膜静脈閉塞 ・・ 腸の血流をつかさどる静脈の閉塞。麻痺性イレウスを呈し、腸管浮腫が起こる。なので動脈閉塞とは全く病態が異なる。静脈は通常流れが遅いので、凝固傾向が背景にあることが多い。脱水・寝たきりなど。
□ 調剤薬局=院外薬局 ・・ 病院内に薬局を経営すると薬が余ったりしたとき損が大きい、ということで病院の外に建てられ契約した薬局。品数が豊富なのがメリットだが、通常中が狭いのと薬剤師が「いらんこと」言ったりトラブルが収集しにくいのが難。
□ 腸閉塞=イレウス ・・ 腸が何らかの原因で「詰まる」か「麻痺する」。これにより便が進まなくなり吐いてしまう。自力ではまず治せない。絶食と補液と鼻に入れるチューブが治療の基本。腹部の手術歴の多い人によくみられる。別名「イレウス」。
□ チラージンS ・・ 甲状腺ホルモン剤(T4)。甲状腺機能低下症に投与する。副作用に狭心症あり。
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