サーガマニュアル2007秋 と ど
2007年9月17日□ 当直セット
当直に必要な物品。その病院の食事が食えたもんでなければ各自用意。泊まりなら朝ごはんも準備が必要。あと風呂の確認とシャンプーなどの用具。マンガ、DVDソフト、本、歯磨き道具、携帯電話充電器、パソコン、論文、宿題の準備など。
■ 糖尿病(DM) ・
・ インスリン作用不足による慢性高血糖(→口渇・多飲多尿・倦怠感などの症状)を特徴とし、長期に渡ると血管系・神経系・眼の合併症を引き起こす。
・ 合併症は3大合併症(網膜・腎・神経)+血管系(細小〜大血管まで)など。
? 早朝空腹時血糖値126mg/dl以上
? 75gOGTTで2時間値200mg/dl以上
? 随時血糖値200mg/dl以上
のいずれかが確認されれば糖尿病と診断。
タイプとしては?型と?型のほかに、その他の型、妊娠糖尿病の4群に分けられる。
○ ?型 ・・ おもに自己免疫を基礎にした(HLAなどの遺伝因子に何らかの因子が追加)、ランゲルハンスβ細胞(本来インスリンを合成・分泌)の破壊・消失によりインスリン作用低下。小児〜思春期多い。自己抗体GAD、IAA、ICA、IA-2の陽性率高し。治療はインスリン注射で基礎分泌(中間型あるいは持続型)と追加分泌(速攻型あるいは超速効型)を補う。
○ ?型 ・・ インスリン分泌低下+インスリン抵抗性+環境因子(食いすぎや運動不足、ストレス)+加齢による。薬物治療開始の目安はHbA1c 6.5%以上とされているがリスク因子(高血圧など)があるならそれより以下でも開始すべき。内服不十分のときインスリンに切り替えるが、それによって糖毒性が解除されると再び内服に戻せる可能性はある。
○ 妊娠糖尿病 ・・ 内服は使用しない。食事・運動療法でもってしてもFBS100以上、2時間値120以上なら強化インスリン療法で管理。
・ 食事指導の内容としては、ゆっくりよくかんで腹八分目、朝昼晩と規則正しく、種類自体は多めで食物繊維重視、脂肪は控えめ、と説明。
・ 運動療法にはインスリン抵抗性改善効果もあるが、ASOや狭心症が疑われれば制限せざるをえない。
・ 微量アルブミン尿の時期以降の進展阻止のため、ACEIやARBは有効(DMの降圧薬の第一選択でもある)。
■ 糖尿病性腎症
糖尿病の3-4割に合併する。腎機能低下、蛋白尿という形で現われてくる。前者は糸球体硬化+尿細管間質の線維化により、後者は糸球体基底膜肥厚によるバリアー破たんによる。
糖尿病発症2年までは機能的変化(GFR↑、腎サイズ↑、可逆性アルブミン尿)のみだが、2-5年たつと構造的変化(糸球体基底膜肥厚+メサンギウム拡大)をきたす。この時期から蛋白尿が顕著=顕性腎症・・ここまでくるとpoint of no return・・となる10-20年(←DM発症から)までを潜在性腎症といい、微量アルブミン尿が検出され、高血圧出現や血糖コントロール不良時期となる。
特にこの<顕性腎症>段階での治療の重要性が指摘されている。
治療は血糖・血圧コントロールに蛋白・塩分制限(場合により水分・カリウム・リン)。
□ トキシック(toxic) ・・ 毒性がある、という形容詞。名詞(毒性)は「toxicity」で、「トキスィスィティー」。はあ言いにくい。
□ 特発性間質性肺炎(IIPs)
この中には7つの疾患が含まれる。
? IPF(Idiopathic Pulmonary Fibrosis) ・・ 特発性肺線維症 50-60%
? NSIP ・・ 非特異性間質性肺炎 14-17%
? COP ・・ 特発性器質化肺炎 4-9% ・・ BOOPのこと
? DIP ・・ 剥離性間質性肺炎 1.5-2%
? RB-ILD ・・ 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患 4.8-10%
? LIP ・・ リンパ球性間質性肺炎 4.8-10%
? AIP ・・ 急性間質性肺炎 2.5%
注意すべきは、これらが病理学的分類(外科的生検)に基づいてなされているという点。実際臨床の場でどれもこれも生検というわけにはいかない。というかむしろ生検まで行っている症例は少ないのではないか。
※ 外科的生検 ・・ 胸腔鏡、あるいは開胸による生検を最低2箇所から行う。 リスクがある程度あるので、よほど必要に迫られた場合に限るだろう。
間質性肺炎の診断そのものは比較的容易だ。胸部のラ音・労作時息切れがあれば胸部CT(できればHRCT)と採血(KL-6)、スパイログラムで、ほぼ非・侵襲的に行われるのが現状。
※ 採血の活動性はLDH , CRP , KL-6 , SP-D , SP-Aなどで。動脈血ガスの分圧較差も参考になる。
間質性肺炎と診断して、僕らが次に知りたいのは・・
? 2次的なものではないかという疑問(リウマチなど膠原病、薬剤性)
※ 抗核抗体160倍以上は膠原病を疑う
? 活動性は高いのか
? ステロイドが効くタイプなのかどうか
医師の関心はこれらに集約される。このうちステロイドが効くかどうか・・の点が最も関心が持たれる。それを調べるために生検を行うようなものだが、実際病勢そのものが進行して生検どころではないとき、または患者が生検を拒否したりなどで病型が不明のときでは、試験的にステロイド(あるいは免疫抑制剤)を投与、ということもある。これでもしステロイドが劇的に効けばNSIPかCOPだったんだろう、という後付け解釈をしたりする。だが頻度の最も高いIPFではステロイドは効果が期待できない(緩解にまで至れるのはごくわずか)という意見が支配的だ。この<ごくわずか>とか<期待できない>とかいう講演会の表現には僕らヤキモキさせられている。というわけで、ステロイドの?副作用、と?証明されていない延命効果が、いまだにIPFにステロイドがためらわれる理由なのだ。
欧米では抗線維化薬の開発が進められ、日本ではピルフェニドンが軽症例の悪化を抑制(急性増悪を有意に減らした)することがわかってきている(臨床試験?相まできており、これをパスすれば認可が目前)。重症例にも有効な新しい薬剤の登場を期待したい。
ではもう1度関心を持ちながら、各分類について掘り下げていこう。
? IPF(Idiopathic Pulmonary Fibrosis) ・・ 特発性肺線維症 50-60%
予後不良で2.5-5年の予後。1-3割に肺癌合併。
? NSIP ・・ 非特異性間質性肺炎14-17%
進行は比較的緩やかで、亜急性〜慢性の経過をとる。そのため予後もIPFに比べると比較的良好。しかし病理学的な定義があいまいで、その概念そのものに疑問が持たれている。
? COP ・・ 特発性気質化肺炎 4-9% ・・ BOOPのこと
亜急性の進行。一部は急性。ふつうの肺炎と誤診されない限り、予後はよい。が、再燃を繰り返すことがある。
? DIP ・・ 剥離性間質性肺炎 1.5-2%
? RB-ILD ・・ 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患 4.8-10%
この2つについて・・禁煙だけで軽快することありステロイド反応性で予後良好。平均50歳前後で高齢者ではない。
相違点としては
・ DIPで症状が強く、低酸素血症例が多い。
・ 胞隔炎はDIPで著明で均一であるが、RB-ILDではbronchiolocentric distributionである。
・ DIPのほうが予後が悪い。
? LIP ・・ リンパ球性間質性肺炎 4.8-10%
ステロイド反応性で予後良好だが死亡例ありと、症例がまれなせいか、あまりよく分かってないところが多い。
? AIP ・・ 急性間質性肺炎 2.5%
死亡率は60%以上で多くは半年以内に死亡する。
いろんな用語が出てきて混乱するが、UIPという用語もある。これは何か。
UIP:Usual Interstitial Pneumoniaつまり通常型間質性肺炎。
IPFの典型的な組織像の名称である。
内容は、胸膜直下、小葉辺縁部より始まる線維化であり、?正常肺〜早期線維化巣〜終末像(蜂巣肺)まですべての時系列病変が含まれた、不均一で混沌としたしかし特徴的な病変である。?線維芽細胞巣の存在、?炎症細胞に乏しい、の所見も。
※ 直前暗記(IPFは知ってるものとして、あと6つ暗記)
< 立派最強ロボコップ でっぷりA級 人気なし >
・ 立派 ・・ LIP:リンパ球性間質性肺炎
・ 最強ロボ ・・ RB-ILD:呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患
・ コップ ・・ COP:特発性器質化肺炎
・ でっぷり ・・ DIP:剥離性間質性肺炎
・ A級 ・・ AIP:急性間質性肺炎
・ 人気なし→ひとけなし ・・ NSIP:非特異性間質性肺炎
<特殊な疾患>
○ 家族性間質性肺炎 ・・ サーファクタント蛋白C(SP-C)遺伝子異常によるもの。
○ Hermansky-Padlak症候群(HPS) ・・ これの間質性肺炎の特徴は、30-40歳代で発症、治療抵抗性で6-7年で死亡。病理学的には基本的にUIPだが、独特な所見としては?型肺胞上皮細胞の著明な泡沫状の腫大、線維化病変内の細胞質に鉄染色陰性の黄色顆粒を持つマクロファージがみられる。
<治療>
? 従来治療:ステロイド ・・ 組織学的IPFでは20-30%で部分的あるいは一過性の有効性が示されるが、病勢維持・完全緩解までもっていけるのはごくわずか。
? 新規の治療:分子生物学的製剤
・ pirfenidone ・・ IPF由来の肺線維芽細胞の増殖やTGF-βによるコラーゲン合成、細胞外基質産生を減少させ、またTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生を減少させる。日本では2000年本剤VSプラセボの治験が行われ、内服側のほうで急性増悪頻度の減少を有意に認めた。副作用は4割強に光線過敏症、3割に消化器症状をみた程度で致命的なものはなし。現在第?相試験実施中であり認可が期待されている。
※ TGF-β ・・ 線維芽細胞の遊走能や分化、コラーゲン合成能を促進。
・ TGF-β抑制薬(臨床応用未定)
・ IFN-γ ・・ 活性化Th1細胞より産生される細胞性免疫の活性化因子。線維化を抑制する。北米では効果が確認されており(死亡率低下)注目されている。
・ TNF-α拮抗薬 ・・ TNF-αは線維化を進行させるので。リウマチ・クローン病では応用中で肺線維症への有用性が期待。
・ 血管新生阻害薬 ・・ 血管新生が肺の線維化を促進させることが分かったので。
・ アンギオテンシン変換酵素阻害薬 ・・ IPF患者においてアンギオテンシノーゲンは線維化を進行させるので効果が期待。
・ N-アセチルシステイン(NAC) ・・ IPF患者では抗酸化機構が低下。このとき低下しているGSH(還元型グルタチオン)の前駆体がNAC。吸入の臨床試験中。
・ エンドセリン受容体拮抗薬 ・・ エンドセリンのうち主に肺に存在するET-1はIPF患者で増加。肺高血圧の治療に有効性が示された。
□ 吐血 ・・ 吐くと同時に血が出る。上部消化管(食道〜胃〜十二指腸)出血を疑う。最多は胃・十二指腸潰瘍。
□ 外様 ・・ 医師の間で使われる用語。よその大学出身の医局員。帝大と地方大学との関係を皮肉った表現ともいえる。
□ トランサミン ・・ 止血剤の1つ。凝固系の活性化により止血を図る。しかし凝固系そのものの活性化する病態、例えば心房細動やDICには使用してはいけない。
□ 鳥肌胃炎 ・・ 胃カメラで、胃の胃角部〜前庭部にかけてみられるブツブツ状に密集した小顆粒状隆起。生検でリンパ濾胞の増生を認める。
ヘリコバクター・ピロリ感染に伴う変化(粘膜内にリンパ球が浸潤しリンパ濾胞を形成したもの)と考えられており、若年(20-30歳代で男<女)の胃癌発症のリスクとして注目されている。ピロリが見つかる前は<生理的な変化>で済まされていた。
なおピロリ陽性でも鳥肌胃炎あるとないとでは60倍以上の胃癌リスクがあるという(もちろんあるほうがリスク高い)。日本での約10年の調査(内訳は25名)では、鳥肌肺炎+胃癌と診断された人は平均年齢33.3歳、女性に多く胃癌発生は胃体部に多い、1人を除いて未分化癌(予後悪い)。鳥肌肺炎はいわば胃癌のハイリスクであり、若年で上腹部症状が2週間以上あれば、表面観察が困難なバリウムではなく胃カメラのほうが勧められ、鳥肌あれば生検を、というのが望ましい。
※ 胃炎を認めた際に、胃癌のハイリスクとして意識しておく所見
? 胃粘膜萎縮・腸上皮化生 ・・ 1992年のCorreaの仮説に基づく。これによると胃癌というのは以下のプロセスで発生する。まず正常粘膜→表層性胃炎→萎縮性胃炎(低〜無酸状態)→腸上皮化生→(ピロリによって発癌物質である二トロソ化合物を産生)→dysplasia→胃癌。これによると胃粘膜萎縮・腸上皮化生は胃癌の前段階である可能性がある。
※ なので胃粘膜萎縮が加齢によるものだとか、腸上皮化生が胃炎の終末像である、という古い考え方は慎まなければならない。
? 雛壁(すうへき)肥大型胃炎 ・・ 悪性ならば胃癌・悪性リンパ腫、非悪性では過形成の結果生じたもの。
? 鳥肌胃炎
□ トレッドミル ・・ ベルトコンベア式の機械にのって歩いてもらう検査。次第に急勾配、速くなる。前後・また運動中のST・不整脈の有無などで評価。狭心症を見つけるための「定量的」スクリーニング検査。
□ トロポニンT ・・ 急性心筋梗塞を疑った際に検査する項目。由来は心臓の筋肉である心筋。よって心筋炎でも上がるし、
多臓器不全でも上がる。心筋梗塞では発症後4時間位から上昇するので、極めて早期の心筋梗塞では上昇しない点に注意。また心筋梗塞発症後1ヶ月間は陽性が続くので、今陽性だからといって今起こした発作だとまでは言い切れない。
□ トロンビン末 ・・ 凝固剤の粉末。目的は止血。胃カメラで生検・クリッピングなど処置後に使用されたり、消化管出血の
場合に胃チューブから入れたりする。
□ トロンボテスト ・・ 血液の凝固状態を知る検査の1つ。ワーファリン(血栓溶解薬)内服中の患者は定期的に測定。現在では「プロトロンビン時間」での測定が望ましい。
□ 頓服=頓用 ・・ 症状の出現に応じて使用してもらう薬。患者の判断で、ということになる。喘息のスプレー、めまい止め、二トロペン、安定剤などもこれにあたる。
□ 動悸 ・・ 胸がドキドキする、と感じること。不整脈や低血糖発作でおなじみ。しかし血圧の上昇時もこれを感じることがある。もし動悸を感じるならせめて手首の脈を確かめて、ホントに速いのか、脈は不規則なのかを確認するのが望ましい。
□ 動物実験室 ・・ マウスなどの小動物を用いて大学院生・助手たちが実験する無菌の部屋。たまに誰かがウイルスを不意に持ち込んでしまい汚染されて、一時閉鎖に追いやられるケースもあり。
□ 動脈血ガス分析=血ガス=動血 ・・ 腕か股の拍動する動脈から採取した血液で測定する、動脈中の酸素・二酸化炭素などのデータ。これにより酸素の必要量などが決まる。
■ 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年度版
やっと出来上がった、動脈硬化治療に関する日本独自のガイドライン。それまでは2002年の「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」が重宝されていたが日本の大規模研究が組みこめてなかった。
これに伴い高脂血症が<脂質異常症>と呼び名が変わり、各項目にエビデンスレベルとしての信頼度がつけられ、基準・目標の表から総コレステロールを略し、LDL-Cが取って替わるようになった。
さらにnon-HDL-C(TCからHDL-Cを引き算したもの)という指標が唱えられ、これはTGに関するリポ蛋白を表現するもの。
http://www.mikinaika.com/advace/coresterol.html
□ 動脈瘤(aneurysm) ・・ 脳血管や大血管などにできうる、動脈の部分的な拡張。拡大・破裂を防ぐには血圧管理が重要。
□ ドクター・バンク ・・ ドクターの仲介屋。ドクターからでなく、ドクター出向先の病院から一定期間利益を得る。急成長企業の1つ。
□ ドブタミン=dobutamine ・・ カテコラミン製剤の1つ。心臓の収縮力を増加→心拍出量増加→血圧上昇させる作用。肺血管拡張作用もあり肺うっ血時に最適。
□ ドレーン ・・ 体にたまった液・膿などを外にくみ出すトンネル。太いほど詰まりにくくて有利。ドレーンとはその「管」を指し、入っている状況を「ドレナージ」という。映画『追跡者』のクライマックス、ウェズリースナイプスが胸を撃たれ血胸の状態となりドレーンが入れられているが、これを悪役が抜いてしまう場面がある。あのあと入れ直しだな(苦笑)。
当直に必要な物品。その病院の食事が食えたもんでなければ各自用意。泊まりなら朝ごはんも準備が必要。あと風呂の確認とシャンプーなどの用具。マンガ、DVDソフト、本、歯磨き道具、携帯電話充電器、パソコン、論文、宿題の準備など。
■ 糖尿病(DM) ・
・ インスリン作用不足による慢性高血糖(→口渇・多飲多尿・倦怠感などの症状)を特徴とし、長期に渡ると血管系・神経系・眼の合併症を引き起こす。
・ 合併症は3大合併症(網膜・腎・神経)+血管系(細小〜大血管まで)など。
? 早朝空腹時血糖値126mg/dl以上
? 75gOGTTで2時間値200mg/dl以上
? 随時血糖値200mg/dl以上
のいずれかが確認されれば糖尿病と診断。
タイプとしては?型と?型のほかに、その他の型、妊娠糖尿病の4群に分けられる。
○ ?型 ・・ おもに自己免疫を基礎にした(HLAなどの遺伝因子に何らかの因子が追加)、ランゲルハンスβ細胞(本来インスリンを合成・分泌)の破壊・消失によりインスリン作用低下。小児〜思春期多い。自己抗体GAD、IAA、ICA、IA-2の陽性率高し。治療はインスリン注射で基礎分泌(中間型あるいは持続型)と追加分泌(速攻型あるいは超速効型)を補う。
○ ?型 ・・ インスリン分泌低下+インスリン抵抗性+環境因子(食いすぎや運動不足、ストレス)+加齢による。薬物治療開始の目安はHbA1c 6.5%以上とされているがリスク因子(高血圧など)があるならそれより以下でも開始すべき。内服不十分のときインスリンに切り替えるが、それによって糖毒性が解除されると再び内服に戻せる可能性はある。
○ 妊娠糖尿病 ・・ 内服は使用しない。食事・運動療法でもってしてもFBS100以上、2時間値120以上なら強化インスリン療法で管理。
・ 食事指導の内容としては、ゆっくりよくかんで腹八分目、朝昼晩と規則正しく、種類自体は多めで食物繊維重視、脂肪は控えめ、と説明。
・ 運動療法にはインスリン抵抗性改善効果もあるが、ASOや狭心症が疑われれば制限せざるをえない。
・ 微量アルブミン尿の時期以降の進展阻止のため、ACEIやARBは有効(DMの降圧薬の第一選択でもある)。
■ 糖尿病性腎症
糖尿病の3-4割に合併する。腎機能低下、蛋白尿という形で現われてくる。前者は糸球体硬化+尿細管間質の線維化により、後者は糸球体基底膜肥厚によるバリアー破たんによる。
糖尿病発症2年までは機能的変化(GFR↑、腎サイズ↑、可逆性アルブミン尿)のみだが、2-5年たつと構造的変化(糸球体基底膜肥厚+メサンギウム拡大)をきたす。この時期から蛋白尿が顕著=顕性腎症・・ここまでくるとpoint of no return・・となる10-20年(←DM発症から)までを潜在性腎症といい、微量アルブミン尿が検出され、高血圧出現や血糖コントロール不良時期となる。
特にこの<顕性腎症>段階での治療の重要性が指摘されている。
治療は血糖・血圧コントロールに蛋白・塩分制限(場合により水分・カリウム・リン)。
□ トキシック(toxic) ・・ 毒性がある、という形容詞。名詞(毒性)は「toxicity」で、「トキスィスィティー」。はあ言いにくい。
□ 特発性間質性肺炎(IIPs)
この中には7つの疾患が含まれる。
? IPF(Idiopathic Pulmonary Fibrosis) ・・ 特発性肺線維症 50-60%
? NSIP ・・ 非特異性間質性肺炎 14-17%
? COP ・・ 特発性器質化肺炎 4-9% ・・ BOOPのこと
? DIP ・・ 剥離性間質性肺炎 1.5-2%
? RB-ILD ・・ 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患 4.8-10%
? LIP ・・ リンパ球性間質性肺炎 4.8-10%
? AIP ・・ 急性間質性肺炎 2.5%
注意すべきは、これらが病理学的分類(外科的生検)に基づいてなされているという点。実際臨床の場でどれもこれも生検というわけにはいかない。というかむしろ生検まで行っている症例は少ないのではないか。
※ 外科的生検 ・・ 胸腔鏡、あるいは開胸による生検を最低2箇所から行う。 リスクがある程度あるので、よほど必要に迫られた場合に限るだろう。
間質性肺炎の診断そのものは比較的容易だ。胸部のラ音・労作時息切れがあれば胸部CT(できればHRCT)と採血(KL-6)、スパイログラムで、ほぼ非・侵襲的に行われるのが現状。
※ 採血の活動性はLDH , CRP , KL-6 , SP-D , SP-Aなどで。動脈血ガスの分圧較差も参考になる。
間質性肺炎と診断して、僕らが次に知りたいのは・・
? 2次的なものではないかという疑問(リウマチなど膠原病、薬剤性)
※ 抗核抗体160倍以上は膠原病を疑う
? 活動性は高いのか
? ステロイドが効くタイプなのかどうか
医師の関心はこれらに集約される。このうちステロイドが効くかどうか・・の点が最も関心が持たれる。それを調べるために生検を行うようなものだが、実際病勢そのものが進行して生検どころではないとき、または患者が生検を拒否したりなどで病型が不明のときでは、試験的にステロイド(あるいは免疫抑制剤)を投与、ということもある。これでもしステロイドが劇的に効けばNSIPかCOPだったんだろう、という後付け解釈をしたりする。だが頻度の最も高いIPFではステロイドは効果が期待できない(緩解にまで至れるのはごくわずか)という意見が支配的だ。この<ごくわずか>とか<期待できない>とかいう講演会の表現には僕らヤキモキさせられている。というわけで、ステロイドの?副作用、と?証明されていない延命効果が、いまだにIPFにステロイドがためらわれる理由なのだ。
欧米では抗線維化薬の開発が進められ、日本ではピルフェニドンが軽症例の悪化を抑制(急性増悪を有意に減らした)することがわかってきている(臨床試験?相まできており、これをパスすれば認可が目前)。重症例にも有効な新しい薬剤の登場を期待したい。
ではもう1度関心を持ちながら、各分類について掘り下げていこう。
? IPF(Idiopathic Pulmonary Fibrosis) ・・ 特発性肺線維症 50-60%
予後不良で2.5-5年の予後。1-3割に肺癌合併。
? NSIP ・・ 非特異性間質性肺炎14-17%
進行は比較的緩やかで、亜急性〜慢性の経過をとる。そのため予後もIPFに比べると比較的良好。しかし病理学的な定義があいまいで、その概念そのものに疑問が持たれている。
? COP ・・ 特発性気質化肺炎 4-9% ・・ BOOPのこと
亜急性の進行。一部は急性。ふつうの肺炎と誤診されない限り、予後はよい。が、再燃を繰り返すことがある。
? DIP ・・ 剥離性間質性肺炎 1.5-2%
? RB-ILD ・・ 呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患 4.8-10%
この2つについて・・禁煙だけで軽快することありステロイド反応性で予後良好。平均50歳前後で高齢者ではない。
相違点としては
・ DIPで症状が強く、低酸素血症例が多い。
・ 胞隔炎はDIPで著明で均一であるが、RB-ILDではbronchiolocentric distributionである。
・ DIPのほうが予後が悪い。
? LIP ・・ リンパ球性間質性肺炎 4.8-10%
ステロイド反応性で予後良好だが死亡例ありと、症例がまれなせいか、あまりよく分かってないところが多い。
? AIP ・・ 急性間質性肺炎 2.5%
死亡率は60%以上で多くは半年以内に死亡する。
いろんな用語が出てきて混乱するが、UIPという用語もある。これは何か。
UIP:Usual Interstitial Pneumoniaつまり通常型間質性肺炎。
IPFの典型的な組織像の名称である。
内容は、胸膜直下、小葉辺縁部より始まる線維化であり、?正常肺〜早期線維化巣〜終末像(蜂巣肺)まですべての時系列病変が含まれた、不均一で混沌としたしかし特徴的な病変である。?線維芽細胞巣の存在、?炎症細胞に乏しい、の所見も。
※ 直前暗記(IPFは知ってるものとして、あと6つ暗記)
< 立派最強ロボコップ でっぷりA級 人気なし >
・ 立派 ・・ LIP:リンパ球性間質性肺炎
・ 最強ロボ ・・ RB-ILD:呼吸細気管支炎を伴う間質性肺疾患
・ コップ ・・ COP:特発性器質化肺炎
・ でっぷり ・・ DIP:剥離性間質性肺炎
・ A級 ・・ AIP:急性間質性肺炎
・ 人気なし→ひとけなし ・・ NSIP:非特異性間質性肺炎
<特殊な疾患>
○ 家族性間質性肺炎 ・・ サーファクタント蛋白C(SP-C)遺伝子異常によるもの。
○ Hermansky-Padlak症候群(HPS) ・・ これの間質性肺炎の特徴は、30-40歳代で発症、治療抵抗性で6-7年で死亡。病理学的には基本的にUIPだが、独特な所見としては?型肺胞上皮細胞の著明な泡沫状の腫大、線維化病変内の細胞質に鉄染色陰性の黄色顆粒を持つマクロファージがみられる。
<治療>
? 従来治療:ステロイド ・・ 組織学的IPFでは20-30%で部分的あるいは一過性の有効性が示されるが、病勢維持・完全緩解までもっていけるのはごくわずか。
? 新規の治療:分子生物学的製剤
・ pirfenidone ・・ IPF由来の肺線維芽細胞の増殖やTGF-βによるコラーゲン合成、細胞外基質産生を減少させ、またTNF-αなどの炎症性サイトカインの産生を減少させる。日本では2000年本剤VSプラセボの治験が行われ、内服側のほうで急性増悪頻度の減少を有意に認めた。副作用は4割強に光線過敏症、3割に消化器症状をみた程度で致命的なものはなし。現在第?相試験実施中であり認可が期待されている。
※ TGF-β ・・ 線維芽細胞の遊走能や分化、コラーゲン合成能を促進。
・ TGF-β抑制薬(臨床応用未定)
・ IFN-γ ・・ 活性化Th1細胞より産生される細胞性免疫の活性化因子。線維化を抑制する。北米では効果が確認されており(死亡率低下)注目されている。
・ TNF-α拮抗薬 ・・ TNF-αは線維化を進行させるので。リウマチ・クローン病では応用中で肺線維症への有用性が期待。
・ 血管新生阻害薬 ・・ 血管新生が肺の線維化を促進させることが分かったので。
・ アンギオテンシン変換酵素阻害薬 ・・ IPF患者においてアンギオテンシノーゲンは線維化を進行させるので効果が期待。
・ N-アセチルシステイン(NAC) ・・ IPF患者では抗酸化機構が低下。このとき低下しているGSH(還元型グルタチオン)の前駆体がNAC。吸入の臨床試験中。
・ エンドセリン受容体拮抗薬 ・・ エンドセリンのうち主に肺に存在するET-1はIPF患者で増加。肺高血圧の治療に有効性が示された。
□ 吐血 ・・ 吐くと同時に血が出る。上部消化管(食道〜胃〜十二指腸)出血を疑う。最多は胃・十二指腸潰瘍。
□ 外様 ・・ 医師の間で使われる用語。よその大学出身の医局員。帝大と地方大学との関係を皮肉った表現ともいえる。
□ トランサミン ・・ 止血剤の1つ。凝固系の活性化により止血を図る。しかし凝固系そのものの活性化する病態、例えば心房細動やDICには使用してはいけない。
□ 鳥肌胃炎 ・・ 胃カメラで、胃の胃角部〜前庭部にかけてみられるブツブツ状に密集した小顆粒状隆起。生検でリンパ濾胞の増生を認める。
ヘリコバクター・ピロリ感染に伴う変化(粘膜内にリンパ球が浸潤しリンパ濾胞を形成したもの)と考えられており、若年(20-30歳代で男<女)の胃癌発症のリスクとして注目されている。ピロリが見つかる前は<生理的な変化>で済まされていた。
なおピロリ陽性でも鳥肌胃炎あるとないとでは60倍以上の胃癌リスクがあるという(もちろんあるほうがリスク高い)。日本での約10年の調査(内訳は25名)では、鳥肌肺炎+胃癌と診断された人は平均年齢33.3歳、女性に多く胃癌発生は胃体部に多い、1人を除いて未分化癌(予後悪い)。鳥肌肺炎はいわば胃癌のハイリスクであり、若年で上腹部症状が2週間以上あれば、表面観察が困難なバリウムではなく胃カメラのほうが勧められ、鳥肌あれば生検を、というのが望ましい。
※ 胃炎を認めた際に、胃癌のハイリスクとして意識しておく所見
? 胃粘膜萎縮・腸上皮化生 ・・ 1992年のCorreaの仮説に基づく。これによると胃癌というのは以下のプロセスで発生する。まず正常粘膜→表層性胃炎→萎縮性胃炎(低〜無酸状態)→腸上皮化生→(ピロリによって発癌物質である二トロソ化合物を産生)→dysplasia→胃癌。これによると胃粘膜萎縮・腸上皮化生は胃癌の前段階である可能性がある。
※ なので胃粘膜萎縮が加齢によるものだとか、腸上皮化生が胃炎の終末像である、という古い考え方は慎まなければならない。
? 雛壁(すうへき)肥大型胃炎 ・・ 悪性ならば胃癌・悪性リンパ腫、非悪性では過形成の結果生じたもの。
? 鳥肌胃炎
□ トレッドミル ・・ ベルトコンベア式の機械にのって歩いてもらう検査。次第に急勾配、速くなる。前後・また運動中のST・不整脈の有無などで評価。狭心症を見つけるための「定量的」スクリーニング検査。
□ トロポニンT ・・ 急性心筋梗塞を疑った際に検査する項目。由来は心臓の筋肉である心筋。よって心筋炎でも上がるし、
多臓器不全でも上がる。心筋梗塞では発症後4時間位から上昇するので、極めて早期の心筋梗塞では上昇しない点に注意。また心筋梗塞発症後1ヶ月間は陽性が続くので、今陽性だからといって今起こした発作だとまでは言い切れない。
□ トロンビン末 ・・ 凝固剤の粉末。目的は止血。胃カメラで生検・クリッピングなど処置後に使用されたり、消化管出血の
場合に胃チューブから入れたりする。
□ トロンボテスト ・・ 血液の凝固状態を知る検査の1つ。ワーファリン(血栓溶解薬)内服中の患者は定期的に測定。現在では「プロトロンビン時間」での測定が望ましい。
□ 頓服=頓用 ・・ 症状の出現に応じて使用してもらう薬。患者の判断で、ということになる。喘息のスプレー、めまい止め、二トロペン、安定剤などもこれにあたる。
□ 動悸 ・・ 胸がドキドキする、と感じること。不整脈や低血糖発作でおなじみ。しかし血圧の上昇時もこれを感じることがある。もし動悸を感じるならせめて手首の脈を確かめて、ホントに速いのか、脈は不規則なのかを確認するのが望ましい。
□ 動物実験室 ・・ マウスなどの小動物を用いて大学院生・助手たちが実験する無菌の部屋。たまに誰かがウイルスを不意に持ち込んでしまい汚染されて、一時閉鎖に追いやられるケースもあり。
□ 動脈血ガス分析=血ガス=動血 ・・ 腕か股の拍動する動脈から採取した血液で測定する、動脈中の酸素・二酸化炭素などのデータ。これにより酸素の必要量などが決まる。
■ 動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年度版
やっと出来上がった、動脈硬化治療に関する日本独自のガイドライン。それまでは2002年の「動脈硬化性疾患診療ガイドライン」が重宝されていたが日本の大規模研究が組みこめてなかった。
これに伴い高脂血症が<脂質異常症>と呼び名が変わり、各項目にエビデンスレベルとしての信頼度がつけられ、基準・目標の表から総コレステロールを略し、LDL-Cが取って替わるようになった。
さらにnon-HDL-C(TCからHDL-Cを引き算したもの)という指標が唱えられ、これはTGに関するリポ蛋白を表現するもの。
http://www.mikinaika.com/advace/coresterol.html
□ 動脈瘤(aneurysm) ・・ 脳血管や大血管などにできうる、動脈の部分的な拡張。拡大・破裂を防ぐには血圧管理が重要。
□ ドクター・バンク ・・ ドクターの仲介屋。ドクターからでなく、ドクター出向先の病院から一定期間利益を得る。急成長企業の1つ。
□ ドブタミン=dobutamine ・・ カテコラミン製剤の1つ。心臓の収縮力を増加→心拍出量増加→血圧上昇させる作用。肺血管拡張作用もあり肺うっ血時に最適。
□ ドレーン ・・ 体にたまった液・膿などを外にくみ出すトンネル。太いほど詰まりにくくて有利。ドレーンとはその「管」を指し、入っている状況を「ドレナージ」という。映画『追跡者』のクライマックス、ウェズリースナイプスが胸を撃たれ血胸の状態となりドレーンが入れられているが、これを悪役が抜いてしまう場面がある。あのあと入れ直しだな(苦笑)。
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