サーガマニュアル2007秋 な に ぬ ね の
2007年9月17日□ ナート ・・ 糸で傷口を縫うこと。内科医でも簡単なのはやれるべき。
□ ナーバス ・・ 神経質。
□ 内科認定医 ・・ 日本内科学会が認定する資格。教育病院をある程度研修すれば受験資格が得られる。資格を得ても定期的な学会などに出席しないと単位不足で除名される。試験の合格率は9割。試験の前に自分が受け持った患者の病歴サマリーが必要。サマリーを記載する用紙を無くしてしまうと再発行はされず受験資格を失うので注意。認定更新(25単位必要。学会総会に出ればそれだけで15単位。セルフビデオ問題(有料)・セルフトレーニング問題(有料)を6割以上正解で各5単位というのが泣かせる企画)を怠れば、5年後には学会会場の中での拍手とともに、自動的に資格を失う。なお認定更新に5千円かかる。
□ 内頸動脈 ・・ 死亡を確認するときによく指で触れる首の動脈。職場では「ないけい」と略される。内側に「内頸静脈」がある。どっちも「ないけい」やないけい?頸部の両側に聴診器を当てて、雑音があれば内頸動脈の狭窄を疑う。
□ 内職 ・・ 病棟の夜、患者回診も終わってカルテ書き・書類記入などの雑用に追われること。皮肉っぽい意味で会話に出る。
□ 内腸骨静脈 ・・ 股の両側にある静脈。手指を当てて拍動しているのが「内腸骨動脈」。その内側にある。左右の内腸骨静脈は、骨盤からの「外腸骨静脈」と合流する。
□ 内部告発 ・・ 勤務中である職員からマスコミへの暴露。そこにまだ勤務していることが条件。常日頃から職場環境への不満がある者だろう。民間病院では生活の糧として職場を離れられないスタッフが多いせいか、比較的少ないように思う。
□ なきにしもあらず ・・ 医者がよく学会やムンテラで使用する言葉。
□ 日勤(帯) ・・ ナースの通常の業務時間。朝9−夕方5時くらいが建前だが、とてもそれでは終わらないことが多く、早朝出勤、遅帰りを強いられる。
□ ニトロペン ・・ 狭心症に対して使用する頓服薬の亜硝酸剤。狭心症なら5分以内に軽快するはず。ただし、自然軽快かもしれず。不安定狭心症だと効果が不確実になってくる。連用による血圧低下に注意。飲み込むのではなく、舌下投与でゆっくり溶かす。患者な間では「ニトロ」と略される。
□ 二ボー ・・ 腹部レントゲンで、腸閉塞を示唆する所見。拡張した腸に多量の消化液とガスが貯まった結果、重力でこう見える。
□ 乳頭 ・・ (ここでは十二指腸の場合)十二指腸下行脚の途中にあるデベソ様の部分。穴があり、胆道・膵管へとつながる。胆石を破砕したあと十二指腸に出てこない場合は、乳頭切開(電気で焼き切る)によって排出させたりする。
□ ニューモシスチス・カリニ=Pneumocystis carinii ・・ 免疫不全状態で、肺炎(カリニ肺炎)を起こす。この肺炎はPCP=Pneumocystis carinii pneumoniaと呼ばれていたが、正式にはPneumocystis jiroveci pneumonia、またはニューモシスチス肺炎と呼ばれるようになった。なおカリニは古い教科書では原虫という分類だが現在では真菌かそれに近い微生物(曖昧だなあ・・)ということになっている。確定診断は気管支鏡でBAL(気管支肺胞洗浄)かTBLB(経気管支肺生検)を行い、細胞診あるいは病理組織検査で確定診断する。病院内に病理部があればすぐに診断につながるが、そうでないと1週間くらい待たされる。キットですぐに診断できるPCR法は保険適応外だが確定診断のためにはする価値がある。喀痰・BAL液からの陽性率は高く、血漿でも半数の確率で陽性との報告がある。臨床経過はAIDSがない場合は短期間に症状(発熱・呼吸困難)・肺病変(CTで肺門中心から始まる両側性スリガラス陰影→進行→浸潤影)が出現、AIDSある場合は数週間を経て肺病変が顕在化。AIDSのあるほうが臨床像は複雑となる。白血球は通常増加し、なかでも多形白血球の増加が著明だが、白血球減少例は予後不良。半数の患者でリンパ球が減少。病状進行の指標としてKL-6、βーDグルカンは有用。
□ ニューモシスチス肺炎 ・・ (前項目参照)
□ ニューモビリア=pneumobilia=胆道気腫症 ・・ 腹部CTあるいは腹部エコー検査の際に、肝臓にときにみられるちっちゃな空気像。胆管内のガスが映ったもの。どちらかといえば左葉に多い。通常は、既往の乳頭切開術で腸管の空気が迷い込んだもの。あるいはオペ後。無害。
□ 尿蛋白 ・・ 尿に出る蛋白。通常は尿検査での項目をさす。尿検査での感度以上に蛋白が出ると陽性となる。激しい運動をしたあとにも(代謝が亢進するので)陽性になることがある。
□ 尿糖 ・・ 尿に出る糖。通常は尿検査での項目をさす。老人では血糖が正常でも尿糖だけ検出されやすくなる。
□ 尿閉 ・・ 前立腺肥大・神経因性膀胱などのために、尿で膀胱がパンパンなのに出てこない状態。夜間救急に来て、バルーンで導尿せざるをえないことがある。
□ 尿路感染(UTI) ・・ 腎臓〜膀胱にかけていずれかの炎症。細菌感染が多い。女性の膀胱炎が大半で、排尿時の痛み、頻尿がみられる。病棟では尿道カテーテル留置者。以前は膀胱洗浄
がよく行われていたが、最近では疑問視(感染が上部まで拡がるおそれ)する声が多い。
□ 尿細管壊死 ・・ 腎臓の中の微細な管の壊死。肉眼ではもちろん見えない。急激な腎不全を引き起こした病態。
■ 認知症 ・・ 脳の器質的障害により知能が不可逆的に低下した状態。大きく2つ、アルツハイマー病(原因不明の脳細胞の急速脱落→脳の委縮・変性)と脳血管性認知症(脳の動脈硬化で部分的にあちこち虚血、まだら状に障害。メタボによる背景あるのが常)に分類。
□ ネーザル=ナザール=N ・・ 経鼻酸素吸入。1リットル刻み。必要により1リットルずつ増量。酸素吸入の限界は10-15リットルだが鼻からの場合はせいぜい3-4リットルまで。それ以上はマスクに切り替える。なお二酸化炭素が貯留しやすい肺気腫などの病態では0.5リットルずつで調整しないと容易にナルコーシスを招く。
□ 寝当直(ねとうちょく) ・・ 夜間にあまり呼ばれない病院当直業務。実は夜間帯ナースの配慮によるところが大きい。ただし年末・GWの当直では期待できない。
□ 粘液栓 ・・ ネバい痰が気管支(たいていは分枝)を塞いだ状態。そこから先は空気の行き来がないので肺炎を起こしやすい。CTで直接みかけるものを特別に「mucoid impaction(ムコイド・インパクション)」という。
□ 捻挫・靭帯損傷
◇足関節
・ 通常、内がえし後の足関節痛と腫脹をきたした形で受診する。
・ ほとんどは内がえし(内側への)負荷で足関節外側部の靭帯欠損を引き起こす。ここには3つの靭帯(?前距腓靭帯<底屈位で緊張し背屈位で弛緩する。損傷をもっとも受けやすい>、?踵腓靭帯、?後距腓靭帯)が存在する。この3つを総称して外側側副靭帯という。
・ 徒手検査法としてADT(前方引き出しテスト。前距腓靭帯損傷で陽性)とTTT(内がえしテスト。前距腓靭帯と踵腓靭帯の合併損傷で陽性)を行う。
・ 外側側副靭帯損傷はグレードで3つに分けられ、グレード?:前距腓靭帯の部分断裂+踵腓靭帯は断裂なし・・・ADT(-) , TTT(-)、グレード?:前距腓靭帯の完全断裂+踵腓靭帯は断裂なし〜部分断裂・・・ADT(+) , TTT(-)、グレード?(不安定型):前距腓靭帯・踵腓靭帯ともに完全断裂・・・ADT(+) , TTT(+)。
・ 基本治療はギプス・シーネ固定→松葉杖。グレード?(不安定型)では外科的修復を選ぶこともある。
◇膝関節
・ 膝関節は内側を内側側副靭帯(MCL)が支え、外側を外側側副靭帯(LCL)と外側複合体(弓状靭帯など)と関節包が支えている。前十字靭帯(ACL)は徑骨の前方移動を制御、後十字靭帯(PCL)は徑骨の後方移動を制御。
ACLとPCLは関節内靭帯であるため損傷されれば関節内血腫を認める。ただし血腫はMCL単独でもみられることがある。
・ ACL損傷の多くは膝関節の非接触外傷により起こる。一方PCL損傷の多くは膝下の下腿部を直接打撲することによる(膝下に外傷あるとき強く疑う)。MCL損傷では膝内側に圧痛あること多い。
・ 徒手検査法としては、ACL損傷:Lachmanテスト、N-testなど、PCL損傷:後方落ち込み、後方引き出しテストなど。MCL・LCL損傷は下腿内外反テストで評価する。
・ 基本治療はギプス・シーネ固定。ACL・MCL損傷では膝軽度屈曲位固定、PCL損傷では膝伸展位固定。
□ 年俸制 ・・ 1年間の給与を書面で契約、これにしたがって給与が振り込まれる。大学病院では存在しない。12分割で通常支給されるが、この場合当然ボーナス名目の支給はない。ただしボーナス前に途中退職、という残念なアクシデントは避けられる。
■ 脳血管性認知症 ・・ 脳の動脈硬化による認知症。メタボが背景にあり急激な経過をとる。人格水準は保たれるがイライラ・不安・怒りっぽい特徴あり(アルツハイマーは天然ボケっぽい)。
□ 脳梗塞
脳の血管がつまった病気。血栓が徐々に出来て詰まったか、よそから血栓がきていきなり詰まったか。
確定診断にあたり、問診も必要。たとえば<発症時刻、昼か夜間か><何時間続いてるか><突然か徐々にか><TIAらしき前触れ症状があったか><不整脈を言われていたか>など。脳外科にコンサルトする前に情報を収集しておく必要がある。また脳梗塞と間違えそうな疾患(髄膜炎、脳炎、外傷、てんかん、低血糖、高血糖による非ケトン性昏睡、肝硬変、低ナトリウム、薬物中毒など)も除外しておくべき。初期のCTでは脳出血がないかどうかのため。梗塞はあとで出現する場合もある。なおCTでは脳実質ばかり見がちだが脳幹部の観察も忘れずに。前回の写真があれば取り寄せる。
大きくは?脳血栓と?脳塞栓に分けられる。
?として「TIA」という脳梗塞なりかけ状態があるが、ここでは省く。
?は動脈硬化で脳の血管が次第に塞がれる状態。
?は心臓の中か頚動脈に出来ていた血栓が脳まで飛んで、脳の血管を詰まらせた状態。
?のほうは壊死する範囲が広く、後遺症も重大。
脳梗塞の症状はいろいろだが、意識障害、麻痺、構語障害などがある。 脳梗塞の中でも心房細動による心原性脳塞栓が増えてきた。リウマチ熱の減少とともに弁膜症の頻度が減ったものの、それによらない心房細動(NVAF)が増加してきたからである。これはなにも高血圧や糖尿病のあるなしは関係なく、加齢との関係が強い。特に70歳以上で急増する。高齢化が進むので頻度も増すわけだ。前述のように後遺症が重いので、これの予防は重要な課題だ。
超急性期のt-PAの投与で3割に改善をみるというが、実際のところほとんど行われていない(出血への考慮などからだろう)。なので現在の関心ごとは予防(不整脈の治療、内服の抗凝固療法)のほうに集まってきている。
※ t-PAは保険適応が2005 10月認められた。協和発酵のアクチバシン、三菱ウェルファーマのグルドパがそれ。ただし使用をする前に、講演会(年に数回あるらしい)での講習を受けることを学会(日本脳卒中学会)から推奨されている。
※ 大阪では次回H18.9/13(水)大阪大学中之島センターで夜7時からあります。
※ 2004年報告のJ-ACT(Japan Alteplase Clinical Trial)ではt-PAの至適投与量(欧米より少なめ)による副作用などの検討がなされ、結果的には大きな問題はなかった。
□ ノーコール ・・ 当直用語で、夜中に呼び出しが一切なかったという喜びの表現。
(類)ローコール:高脂血症のくすり。
□ 脳室内穿破(のうしつないせんぱ) ・・ 脳出血が脳実質内にとどまらず、脳のさらに深層の空間である脳室(髄液が循環している)の中に吹き出した状態。重篤で手術を検討。血圧はむしろ早急に下げなければならない。
□ 膿胸 ・・ 肺のすぐ外のわずかな隙間、「胸膜腔(ふつうここは無菌)」に膿が貯留した状態。膿とはつまり菌と白血球が戦った成れの果て。これ自体行き場がなくなるので、強い炎症を起こしてくる。閉鎖された空間での炎症なので点滴や内服などの薬は届きにくく、通常は管(トロッカー)を挿入した上での持続排液(ドレナージ)を要する。もし膿を包む被膜が破れて、肺内の気管支と交通を持てば、膿が肺内に吸引されてたちまち広範な肺炎となる恐れがあり(稀なケースではあるが)、そこまでの可能性も想定しておく必要がある。
□ 脳動脈 ・・ 脳を下から見ると、ウイリス動脈輪という、いわば阪神高速の環状線のようなものがありここを動脈血がそれそれと流れている。ここから前大脳動脈2本(豊中方面)、中大脳動脈2本(港区・東大阪方面)、後大脳動脈2本(堺・八尾方面)が分枝する。中大脳動脈はさらに脳の深層で垂直に<穿通枝>を送り出す(ここで詰まったらラクナ梗塞)。前・中・後大脳動脈の行き着く先、インター出口付近が<皮質枝>。皮質枝は皮質だけでなくその内側の髄質にも血液を送る。
■ 脳腸相関 ・・ 中枢神経系と消化器の機能的関連。交感神経と副交感神経、それと脳腸ペプチドで互いの連絡経路をもつ。このメカニズムが病態の中心をなすのがIBS。内臓知覚のプロセス(消化管からのシグナル→脊髄後角ニューロン→脊髄視床路→大脳辺縁系ぼ賦活化し痛み発生。これらをセロトニンニューロンなどが抑制)も解明されており、これが腹痛に抗うつ薬が効くゆえんといわれている。
■ 脳ドック
費用は検査メニューの多さによって4-20万円ほどの差がある。MRI,MRA,超音波を通常含むが、超音波が入ってないことがある。頸動脈病変を見逃す可能性があるので不可欠と考えるべき。
以下の項目を行うことが本ドック達成を意味する(つまりしてないとドックと言うには不十分)。
http://www.snh.or.jp/jsbd/gaido.html
・ 問診・診察(神経学的所見、頸部血管雑音)
・ 一般検査(血液・尿)で背景把握
・ 心電図(心房細動の有無)
・ 頸部血管超音波検査 ・・ 頸動脈狭窄を!
・ 認知機能検査(長谷川式など)←映画「明日の記憶」でおなじみ!
・ MRI(通常のT1/T2だけでなくFLAIR画像も!)・・ 無症候性脳梗塞、脳腫瘍を発見
・ MRA ・・血管狭窄・閉塞、動脈瘤を!
□ 膿瘍 ・・ 汚らしい膿。白血球と菌が争って、その戦争が終わったあとの死骸の集まり。だがそのままだと壊死→感染のもととなり、新たな炎症のもととなる。物理的に除去するのが原則。
□ ノロウイルス胃腸炎 ・・ 冬〜春(ピークは1-2月)に流行。全年齢で発症しうる。つまり小児だけでなく老人ホームなどでも問題になる。経口(食事では生ガキに注意)・接触感染で潜伏期24-48時間。嘔気・嘔吐・水様下痢・腹痛。軽快まで1-3日要する。診断キット(3時間かかる)があるのでこれのある病院をなるべく受診する。特効薬はなく点滴中心の治療となる。<厚生省によるQ&A>http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html<東京都福祉保健局の対応マニュアル>http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/micro/noro_manual.html
□ ナーバス ・・ 神経質。
□ 内科認定医 ・・ 日本内科学会が認定する資格。教育病院をある程度研修すれば受験資格が得られる。資格を得ても定期的な学会などに出席しないと単位不足で除名される。試験の合格率は9割。試験の前に自分が受け持った患者の病歴サマリーが必要。サマリーを記載する用紙を無くしてしまうと再発行はされず受験資格を失うので注意。認定更新(25単位必要。学会総会に出ればそれだけで15単位。セルフビデオ問題(有料)・セルフトレーニング問題(有料)を6割以上正解で各5単位というのが泣かせる企画)を怠れば、5年後には学会会場の中での拍手とともに、自動的に資格を失う。なお認定更新に5千円かかる。
□ 内頸動脈 ・・ 死亡を確認するときによく指で触れる首の動脈。職場では「ないけい」と略される。内側に「内頸静脈」がある。どっちも「ないけい」やないけい?頸部の両側に聴診器を当てて、雑音があれば内頸動脈の狭窄を疑う。
□ 内職 ・・ 病棟の夜、患者回診も終わってカルテ書き・書類記入などの雑用に追われること。皮肉っぽい意味で会話に出る。
□ 内腸骨静脈 ・・ 股の両側にある静脈。手指を当てて拍動しているのが「内腸骨動脈」。その内側にある。左右の内腸骨静脈は、骨盤からの「外腸骨静脈」と合流する。
□ 内部告発 ・・ 勤務中である職員からマスコミへの暴露。そこにまだ勤務していることが条件。常日頃から職場環境への不満がある者だろう。民間病院では生活の糧として職場を離れられないスタッフが多いせいか、比較的少ないように思う。
□ なきにしもあらず ・・ 医者がよく学会やムンテラで使用する言葉。
□ 日勤(帯) ・・ ナースの通常の業務時間。朝9−夕方5時くらいが建前だが、とてもそれでは終わらないことが多く、早朝出勤、遅帰りを強いられる。
□ ニトロペン ・・ 狭心症に対して使用する頓服薬の亜硝酸剤。狭心症なら5分以内に軽快するはず。ただし、自然軽快かもしれず。不安定狭心症だと効果が不確実になってくる。連用による血圧低下に注意。飲み込むのではなく、舌下投与でゆっくり溶かす。患者な間では「ニトロ」と略される。
□ 二ボー ・・ 腹部レントゲンで、腸閉塞を示唆する所見。拡張した腸に多量の消化液とガスが貯まった結果、重力でこう見える。
□ 乳頭 ・・ (ここでは十二指腸の場合)十二指腸下行脚の途中にあるデベソ様の部分。穴があり、胆道・膵管へとつながる。胆石を破砕したあと十二指腸に出てこない場合は、乳頭切開(電気で焼き切る)によって排出させたりする。
□ ニューモシスチス・カリニ=Pneumocystis carinii ・・ 免疫不全状態で、肺炎(カリニ肺炎)を起こす。この肺炎はPCP=Pneumocystis carinii pneumoniaと呼ばれていたが、正式にはPneumocystis jiroveci pneumonia、またはニューモシスチス肺炎と呼ばれるようになった。なおカリニは古い教科書では原虫という分類だが現在では真菌かそれに近い微生物(曖昧だなあ・・)ということになっている。確定診断は気管支鏡でBAL(気管支肺胞洗浄)かTBLB(経気管支肺生検)を行い、細胞診あるいは病理組織検査で確定診断する。病院内に病理部があればすぐに診断につながるが、そうでないと1週間くらい待たされる。キットですぐに診断できるPCR法は保険適応外だが確定診断のためにはする価値がある。喀痰・BAL液からの陽性率は高く、血漿でも半数の確率で陽性との報告がある。臨床経過はAIDSがない場合は短期間に症状(発熱・呼吸困難)・肺病変(CTで肺門中心から始まる両側性スリガラス陰影→進行→浸潤影)が出現、AIDSある場合は数週間を経て肺病変が顕在化。AIDSのあるほうが臨床像は複雑となる。白血球は通常増加し、なかでも多形白血球の増加が著明だが、白血球減少例は予後不良。半数の患者でリンパ球が減少。病状進行の指標としてKL-6、βーDグルカンは有用。
□ ニューモシスチス肺炎 ・・ (前項目参照)
□ ニューモビリア=pneumobilia=胆道気腫症 ・・ 腹部CTあるいは腹部エコー検査の際に、肝臓にときにみられるちっちゃな空気像。胆管内のガスが映ったもの。どちらかといえば左葉に多い。通常は、既往の乳頭切開術で腸管の空気が迷い込んだもの。あるいはオペ後。無害。
□ 尿蛋白 ・・ 尿に出る蛋白。通常は尿検査での項目をさす。尿検査での感度以上に蛋白が出ると陽性となる。激しい運動をしたあとにも(代謝が亢進するので)陽性になることがある。
□ 尿糖 ・・ 尿に出る糖。通常は尿検査での項目をさす。老人では血糖が正常でも尿糖だけ検出されやすくなる。
□ 尿閉 ・・ 前立腺肥大・神経因性膀胱などのために、尿で膀胱がパンパンなのに出てこない状態。夜間救急に来て、バルーンで導尿せざるをえないことがある。
□ 尿路感染(UTI) ・・ 腎臓〜膀胱にかけていずれかの炎症。細菌感染が多い。女性の膀胱炎が大半で、排尿時の痛み、頻尿がみられる。病棟では尿道カテーテル留置者。以前は膀胱洗浄
がよく行われていたが、最近では疑問視(感染が上部まで拡がるおそれ)する声が多い。
□ 尿細管壊死 ・・ 腎臓の中の微細な管の壊死。肉眼ではもちろん見えない。急激な腎不全を引き起こした病態。
■ 認知症 ・・ 脳の器質的障害により知能が不可逆的に低下した状態。大きく2つ、アルツハイマー病(原因不明の脳細胞の急速脱落→脳の委縮・変性)と脳血管性認知症(脳の動脈硬化で部分的にあちこち虚血、まだら状に障害。メタボによる背景あるのが常)に分類。
□ ネーザル=ナザール=N ・・ 経鼻酸素吸入。1リットル刻み。必要により1リットルずつ増量。酸素吸入の限界は10-15リットルだが鼻からの場合はせいぜい3-4リットルまで。それ以上はマスクに切り替える。なお二酸化炭素が貯留しやすい肺気腫などの病態では0.5リットルずつで調整しないと容易にナルコーシスを招く。
□ 寝当直(ねとうちょく) ・・ 夜間にあまり呼ばれない病院当直業務。実は夜間帯ナースの配慮によるところが大きい。ただし年末・GWの当直では期待できない。
□ 粘液栓 ・・ ネバい痰が気管支(たいていは分枝)を塞いだ状態。そこから先は空気の行き来がないので肺炎を起こしやすい。CTで直接みかけるものを特別に「mucoid impaction(ムコイド・インパクション)」という。
□ 捻挫・靭帯損傷
◇足関節
・ 通常、内がえし後の足関節痛と腫脹をきたした形で受診する。
・ ほとんどは内がえし(内側への)負荷で足関節外側部の靭帯欠損を引き起こす。ここには3つの靭帯(?前距腓靭帯<底屈位で緊張し背屈位で弛緩する。損傷をもっとも受けやすい>、?踵腓靭帯、?後距腓靭帯)が存在する。この3つを総称して外側側副靭帯という。
・ 徒手検査法としてADT(前方引き出しテスト。前距腓靭帯損傷で陽性)とTTT(内がえしテスト。前距腓靭帯と踵腓靭帯の合併損傷で陽性)を行う。
・ 外側側副靭帯損傷はグレードで3つに分けられ、グレード?:前距腓靭帯の部分断裂+踵腓靭帯は断裂なし・・・ADT(-) , TTT(-)、グレード?:前距腓靭帯の完全断裂+踵腓靭帯は断裂なし〜部分断裂・・・ADT(+) , TTT(-)、グレード?(不安定型):前距腓靭帯・踵腓靭帯ともに完全断裂・・・ADT(+) , TTT(+)。
・ 基本治療はギプス・シーネ固定→松葉杖。グレード?(不安定型)では外科的修復を選ぶこともある。
◇膝関節
・ 膝関節は内側を内側側副靭帯(MCL)が支え、外側を外側側副靭帯(LCL)と外側複合体(弓状靭帯など)と関節包が支えている。前十字靭帯(ACL)は徑骨の前方移動を制御、後十字靭帯(PCL)は徑骨の後方移動を制御。
ACLとPCLは関節内靭帯であるため損傷されれば関節内血腫を認める。ただし血腫はMCL単独でもみられることがある。
・ ACL損傷の多くは膝関節の非接触外傷により起こる。一方PCL損傷の多くは膝下の下腿部を直接打撲することによる(膝下に外傷あるとき強く疑う)。MCL損傷では膝内側に圧痛あること多い。
・ 徒手検査法としては、ACL損傷:Lachmanテスト、N-testなど、PCL損傷:後方落ち込み、後方引き出しテストなど。MCL・LCL損傷は下腿内外反テストで評価する。
・ 基本治療はギプス・シーネ固定。ACL・MCL損傷では膝軽度屈曲位固定、PCL損傷では膝伸展位固定。
□ 年俸制 ・・ 1年間の給与を書面で契約、これにしたがって給与が振り込まれる。大学病院では存在しない。12分割で通常支給されるが、この場合当然ボーナス名目の支給はない。ただしボーナス前に途中退職、という残念なアクシデントは避けられる。
■ 脳血管性認知症 ・・ 脳の動脈硬化による認知症。メタボが背景にあり急激な経過をとる。人格水準は保たれるがイライラ・不安・怒りっぽい特徴あり(アルツハイマーは天然ボケっぽい)。
□ 脳梗塞
脳の血管がつまった病気。血栓が徐々に出来て詰まったか、よそから血栓がきていきなり詰まったか。
確定診断にあたり、問診も必要。たとえば<発症時刻、昼か夜間か><何時間続いてるか><突然か徐々にか><TIAらしき前触れ症状があったか><不整脈を言われていたか>など。脳外科にコンサルトする前に情報を収集しておく必要がある。また脳梗塞と間違えそうな疾患(髄膜炎、脳炎、外傷、てんかん、低血糖、高血糖による非ケトン性昏睡、肝硬変、低ナトリウム、薬物中毒など)も除外しておくべき。初期のCTでは脳出血がないかどうかのため。梗塞はあとで出現する場合もある。なおCTでは脳実質ばかり見がちだが脳幹部の観察も忘れずに。前回の写真があれば取り寄せる。
大きくは?脳血栓と?脳塞栓に分けられる。
?として「TIA」という脳梗塞なりかけ状態があるが、ここでは省く。
?は動脈硬化で脳の血管が次第に塞がれる状態。
?は心臓の中か頚動脈に出来ていた血栓が脳まで飛んで、脳の血管を詰まらせた状態。
?のほうは壊死する範囲が広く、後遺症も重大。
脳梗塞の症状はいろいろだが、意識障害、麻痺、構語障害などがある。 脳梗塞の中でも心房細動による心原性脳塞栓が増えてきた。リウマチ熱の減少とともに弁膜症の頻度が減ったものの、それによらない心房細動(NVAF)が増加してきたからである。これはなにも高血圧や糖尿病のあるなしは関係なく、加齢との関係が強い。特に70歳以上で急増する。高齢化が進むので頻度も増すわけだ。前述のように後遺症が重いので、これの予防は重要な課題だ。
超急性期のt-PAの投与で3割に改善をみるというが、実際のところほとんど行われていない(出血への考慮などからだろう)。なので現在の関心ごとは予防(不整脈の治療、内服の抗凝固療法)のほうに集まってきている。
※ t-PAは保険適応が2005 10月認められた。協和発酵のアクチバシン、三菱ウェルファーマのグルドパがそれ。ただし使用をする前に、講演会(年に数回あるらしい)での講習を受けることを学会(日本脳卒中学会)から推奨されている。
※ 大阪では次回H18.9/13(水)大阪大学中之島センターで夜7時からあります。
※ 2004年報告のJ-ACT(Japan Alteplase Clinical Trial)ではt-PAの至適投与量(欧米より少なめ)による副作用などの検討がなされ、結果的には大きな問題はなかった。
□ ノーコール ・・ 当直用語で、夜中に呼び出しが一切なかったという喜びの表現。
(類)ローコール:高脂血症のくすり。
□ 脳室内穿破(のうしつないせんぱ) ・・ 脳出血が脳実質内にとどまらず、脳のさらに深層の空間である脳室(髄液が循環している)の中に吹き出した状態。重篤で手術を検討。血圧はむしろ早急に下げなければならない。
□ 膿胸 ・・ 肺のすぐ外のわずかな隙間、「胸膜腔(ふつうここは無菌)」に膿が貯留した状態。膿とはつまり菌と白血球が戦った成れの果て。これ自体行き場がなくなるので、強い炎症を起こしてくる。閉鎖された空間での炎症なので点滴や内服などの薬は届きにくく、通常は管(トロッカー)を挿入した上での持続排液(ドレナージ)を要する。もし膿を包む被膜が破れて、肺内の気管支と交通を持てば、膿が肺内に吸引されてたちまち広範な肺炎となる恐れがあり(稀なケースではあるが)、そこまでの可能性も想定しておく必要がある。
□ 脳動脈 ・・ 脳を下から見ると、ウイリス動脈輪という、いわば阪神高速の環状線のようなものがありここを動脈血がそれそれと流れている。ここから前大脳動脈2本(豊中方面)、中大脳動脈2本(港区・東大阪方面)、後大脳動脈2本(堺・八尾方面)が分枝する。中大脳動脈はさらに脳の深層で垂直に<穿通枝>を送り出す(ここで詰まったらラクナ梗塞)。前・中・後大脳動脈の行き着く先、インター出口付近が<皮質枝>。皮質枝は皮質だけでなくその内側の髄質にも血液を送る。
■ 脳腸相関 ・・ 中枢神経系と消化器の機能的関連。交感神経と副交感神経、それと脳腸ペプチドで互いの連絡経路をもつ。このメカニズムが病態の中心をなすのがIBS。内臓知覚のプロセス(消化管からのシグナル→脊髄後角ニューロン→脊髄視床路→大脳辺縁系ぼ賦活化し痛み発生。これらをセロトニンニューロンなどが抑制)も解明されており、これが腹痛に抗うつ薬が効くゆえんといわれている。
■ 脳ドック
費用は検査メニューの多さによって4-20万円ほどの差がある。MRI,MRA,超音波を通常含むが、超音波が入ってないことがある。頸動脈病変を見逃す可能性があるので不可欠と考えるべき。
以下の項目を行うことが本ドック達成を意味する(つまりしてないとドックと言うには不十分)。
http://www.snh.or.jp/jsbd/gaido.html
・ 問診・診察(神経学的所見、頸部血管雑音)
・ 一般検査(血液・尿)で背景把握
・ 心電図(心房細動の有無)
・ 頸部血管超音波検査 ・・ 頸動脈狭窄を!
・ 認知機能検査(長谷川式など)←映画「明日の記憶」でおなじみ!
・ MRI(通常のT1/T2だけでなくFLAIR画像も!)・・ 無症候性脳梗塞、脳腫瘍を発見
・ MRA ・・血管狭窄・閉塞、動脈瘤を!
□ 膿瘍 ・・ 汚らしい膿。白血球と菌が争って、その戦争が終わったあとの死骸の集まり。だがそのままだと壊死→感染のもととなり、新たな炎症のもととなる。物理的に除去するのが原則。
□ ノロウイルス胃腸炎 ・・ 冬〜春(ピークは1-2月)に流行。全年齢で発症しうる。つまり小児だけでなく老人ホームなどでも問題になる。経口(食事では生ガキに注意)・接触感染で潜伏期24-48時間。嘔気・嘔吐・水様下痢・腹痛。軽快まで1-3日要する。診断キット(3時間かかる)があるのでこれのある病院をなるべく受診する。特効薬はなく点滴中心の治療となる。<厚生省によるQ&A>http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html<東京都福祉保健局の対応マニュアル>http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/shokuhin/micro/noro_manual.html
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