サーガマニュアル2007秋 は-2
2007年9月17日□ 肺炎球菌尿中抗原検査 ・・ 血中の肺炎球菌(肺炎・髄膜炎などの際に)の抗原が尿に排出されるのを利用。測定はキットで行う。治療が効いた後でも陽性が持続することがあり、数週間という報告さえある。なのでちょっと以前の発症を検出することがありうるので、問診が重要(既往の感染)。また小児での鼻咽頭の定着による陽性化もあるので過大評価は禁物。以上のことをふまえると本検査は補助的診断の位置づけと考えるべき。
□ 肺炎球菌ワクチン ・・ 商品名ニューモバックス。値段は実費5千円と高いが効果は5年続くとされている。効果そのものには賛否両論あり。COPDの増悪の主な原因菌が肺炎球菌であることを考えると推奨されるべきではあるが、実際これがCOPD患者の予後を改善したというデータはない。
□ 肺癌(治療) ・・ 以下、NSCLC(非小細胞肺癌)とSCLC(小細胞癌)とに分けて。
● NSCLC
○ 中心型早期肺癌 のガイドライン
・ 区域気管支より中枢側に発生した肺癌。そのうち早期癌は、癌の浸潤が気管支壁を超えず、かつリンパ節転移や遠隔転移がない(CT・エコー骨シンチ等で確認)ものをいう。限局性ではあるが多発性の病変もありうる。内視鏡的には病巣の長径が2cm以下であり組織学的に扁平上皮癌であることが原則。
・ 日本では胸部レントゲン+喀痰細胞診によるスクリーニングが有効とされている。CTでのスクリーニングは発見が困難である。
・ 蛍光内視鏡(扁平上皮化生などの早期病変を発見)、気管支超音波(進達度診断に有用)はグレードC(勧めるだけの根拠が明確でない。つまりEBM不足)の段階。
・ 治療は・・
? 外科治療 ・・ 5年生存率80-100%と良好で、根治的治療といえる。
? 光線力学的治療(PDT) ・・ 5年生存率90%以上。好適応は長径1cm以内かつ進達度が粘膜下層まで。
? 気管支腔内照射 ・・ グレードC。
○ ?・?期肺癌(もちろんNSCLC)の治療ガイドライン
・ 標準術式は、肺葉切除+縦隔リンパ節郭清術。症例によって気管支形成術(局所病変が完全切除可能な場合)、隣接臓器の合併切除(胸壁合併切除、横隔膜合併切除、Superior Sulcus Tumor切除など)を選択する。※ Superior Sulcus Tumor切除 ・・ Superior Sulcus Tumorは肺尖部より発生し胸壁に浸潤し腕神経叢、交感神経節、鎖骨下動脈、椎体などに浸潤する肺癌。通常、術前に放射線照射を組み合わせる。5生率は25-30%。
・ 術後の5生率はIA期で70-80%と良好だが、IBで60%へ落ち込み、それ以上だとさらに落ち込んでいく。
・ 術前・後化学療法、術前導入放射線治療の併用について ・・ これにより予後が改善されるという根拠は乏しい(グレードC)。
・ ?・?期でも医学的に切除不能な場合、放射線治療単独の適応がある(ただしグレードB)。
・ VATSに関しては推奨できるだけのデータが揃っておらず(手術との比較試験なし)グレードC。これまでのデータでは?期に関しては手術に比し予後は同等またはそれ以上といわれている。
○ 縦隔リンパ節転移を伴う肺癌の治療ガイドライン
・ 切除可能な?A期 ・・ T3N1では第一選択。一方、T1-3N2の場合の手術意義は明確でない。
・ 特にN2と診断された例の予後は不良であり、この場合は集学的治療(術前化学・放射線療法や術後化学療法)の必要性が指摘されている。しかしいずれも予後改善のデータが出揃っていないのが現状。
○ 隣接臓器浸潤(気管分岐部、胸壁、胸壁肺尖部、横隔膜、左心房、大血管)を伴う肺癌の治療ガイドライン
・ 隣接臓器浸潤の場合、手術データがかなり乏しいのでEBM的な考え方はない。
・ 単純な胸壁浸潤の場合T3でありリンパ節転移しだいでIIB以上となるが、その他(上述)の臓器では無条件でIIIBと決まる。なお胸壁浸潤でリンパ節転移なしのcT3N0M0(IIB)ならば肺葉切除以上の根治術+胸壁合併切除が推奨され予後が期待できる(5生率50%弱)。N1-2になると推奨への言及はない。
・ 気管分岐部の浸潤する癌は手術のリスクが大きく、cN01症例で(N2を否定すること)病変が気管支分岐部周囲に限局する場合に推奨。
・ 横隔膜、左心房、大血管の切除に関しては根拠に乏しくグレードC。
○ 切除不能肺癌(もちろんNSCLC)の治療ガイドライン
・ ?期 ・・ 根治TRTが可能な局所NSCLCには、化学療法(グレードA)が強く勧められる。化学放射線療法(化学療法+TRT)の適応にならない場合(高齢者やPS不良例)でも根治的単独TRTを行う(グレードB)。化学放射線治療はPS1・2の全身状態良好患者に行う。TRTと化学療法は同時併用で行い、TRTは1日1回2Gyの通常分割照射(60Gy/30回/6週)が推奨されている。
※TRT:放射線療法
・ ?期 ・・ 化学療法は生存期間・QOLを改善する(グレードA。ただし高齢者ではグレードB)。対症療法(BSC)に比し生存期間中央値(MST)で6-8週、1年生存率を10%改善する。化学療法では従来よりシスプラチンを含むことが好ましいとされ、新規抗癌剤の登場もあったが併用による有効性の差はごく僅かである。プラチナ製剤が使用不可なら新規抗癌剤の単剤が推奨されている。
○ 再発NSCLCの化学療法
・ セカンドラインとしてはドセタキセルの投与を行う(グレードB)。BSCより予後良好。
● SCLC
○ LD-SCLC:限局型(ただし?期以外)
・ 初期治療として、化学療法+TRTの同時併用を行う(グレードA)。これでCRが得られればPCI(予防的全脳照射)を行う(グレードA
○ ED-SCLC:進展型
・ PS4を除き、初期治療として化学療法を行う(グレードA)。シスプラチン+エトポシドの併用が標準的治療である(グレードA)。シスプラチン+イリノテカンも有用だがグレードB。PS不良例でも単剤より多剤併用を行う。
・ 無治療SCLCではMSTが4ヶ月以内なのに対して、併用化学療法の場合のそれは10ヶ月以上を越す。
○ 再発
・ 前治療終了90日以上の再発でも化学療法への反応は期待できるが根拠という点では乏しい(グレードC)。
□ 肺気腫 ・・ ごく一部は先天性。大半は喫煙の積み重ね。機能しない肺が空胞様に拡大し、呼吸不全をきたす。高度だと在宅酸素療法が必要。手術は確実でない。また根治する薬もない。酸素は予後を改善し、喫煙は進行を遅らせる、この2点だけしかわかってない。
□ 肺血栓塞栓症(PTE)=エコノミークラス症候群 ・・ 肺塞栓症と肺血栓症を総称して呼ぶ。肺動脈が血栓で塞がれて起こる呼吸困難。原因は下肢から飛んできた血栓のことが多い。
□ 肺水腫 ・・ 肺の中が水浸しで呼吸が苦しくなる。大まかにいうと以下に分類。
? 心原性肺水腫 ・・ 心臓のせいで、つまり心不全で肺水腫になる。
? 非心原性肺水腫 ・・ 心臓のせいではないが、肺炎など心臓以外の内臓疾患で起こった肺水腫。
? 低アルブミン血症による肺水腫 ・・ 栄養不良による。末期癌か点滴のカロリー不足など。
? 薬物による肺水腫 ・・ 薬物により肺の中の血管の隙間が開き、水分が肺にたまる。尾崎豊の死因。
? 溺水による肺水腫
※ 特殊な例で、『高地肺水腫』あり。映画「バーティカル・リミット」を参照。ステロイド注射剤(デキサメサゾンと思われる)の取り合いとなった場面が見苦しい。専門家によるとあそこまで劇的には効かないらしい。
□ 肺性心 ・・ 肺のせいで心臓が悪くなった状態、と覚える。正確には肺高血圧のために右心不全となった状態だ。肺気腫から続発したものが多い。
□ 肺動脈(PA) ・・ 右心室から出る、肺の手前の血管。つまり血は静脈血で酸素が少ない。途中で左右の2つに分かれる。
この血管に血栓が詰まると「肺血栓塞栓症」と呼ばれる。
□ 肺胞蛋白症=pulmonary alveolar proteinosis=PAP ・・ 肺胞・呼吸細気管支内に(つまり末梢気道に)サーファクタントが貯留する疾患。先天性、基礎疾患のある二次性、特発性とがある。30-50代に多く男>女。
本邦では9割が特発性で、この原因が抗GM-CSF抗体(本症に特異的!)であることが最近発見された。
この自己抗体が肺胞内のGM-CSF活性をブロックし、最終的に肺胞内のサーファクタントが蓄積する。つまり本症は自己免疫疾患である。
症状は労作性呼吸困難、咳嗽、喀痰、軽度の発熱などで無症状も多い。画像では初期はスリガラス陰影で進行すると斑状融合影。CTでのメロンの皮状陰影(crazy paving sign)は有名。
採血ではKL-6などの線維化マーカーも上昇、気管支鏡でのBALF→乳白色で好酸性・PAS陽性の無構造物質などを認め、この物質はさらに生検(TBLB)にて証明される。
治療はGM-CSF(吸入)療法が有効。3ヶ月の無治療期間ののちに開始され、3ヶ月かけて吸入・休薬を繰り返す。コストが高いのが難。
※ GM-CSFは増殖性のサイトカインで、肺胞マクロファージを活性化させてサーファクタントの代謝(分解・再利用して一定の秩序保つ)を回転させる。本症では自己抗体により本機能が低下する。
□ ハイポ ・・ 通常は「甲状腺機能低下症」のことを指す、医者用語。心臓超音波などで動きの悪い場所をさすときにも使う表現。
□ 博士号=ティーテル=学位 ・・ 実験→論文作成→教授らの検閲→手直し→検閲→医局内で合格→提出→学内で合格してやっと与えられるもの。
□ 白衣 ・・ 医者・ナース・技師らが着る衣類。通常は病院から支給され、洗濯も随時してくれる。汚い白衣は院内感染と患者・家族の信頼失墜につながる。
□ ハチ刺傷 ・・ ハチ毒にはヒスタミン・セロトニン(痒み・痛み)、キニン類(発赤・熱感・腫脹)などからなる。毒性の強さはスズメバチ>アシナガバチ>ミツバチ>クマバチ。アレルギー反応起こすことあり2つに分けられる。?局所アレルギー:アシナガバチに多い。刺された周囲に蕁麻疹。反応が大きいと次回刺されたときにアナフィラキシー起こす恐れあり。?全身アナフィラキシー反応:スズメバチに多い。刺されて直後〜15分内に起こる。
ミツバチは針を残すので爪で弾き飛ばす。局所ならステロイド軟膏、抗ヒスタミン・抗セロトニン剤処方。
□ 白血球=ロイコ=しろ ・・ 炎症を起こすと増える。ステロイドの副作用や脱水、白血病でも上がる。心筋梗塞の初期なども。少ない場合は重症感染や白血病、薬の副作用なども疑う。
□ 派閥(はばつ) ・・ グループどうしの確執。病院同士、医局同士、医局内のグループどうしなど、スケールは大小あり。
□ 針刺し事故
・ B型肝炎の場合 ・・ ワクチン定期的接種、事故後の対応は全体的に徹底されているらしい。免疫なしで針刺し事故した場合、グロブリンを投与の上48時間以内にワクチン投与を追加する。
・ C型肝炎の場合 ・・ ある検討では実際に急性C型を発症するのは4%前後と低め。予防的にインターフェロンをいくかどうか、発症した時点でいくかどうかなどの点では統一した見解はない。予防投与によって、その後インターフェロンすることになった場合の治療効果減弱、インターフェロンそのものによるアナフィラキシーなどへの心配がある。一方、発症後の投与は有効だというデータが多い。実際、1ヶ月間は労災でみてくれる。
・ 針刺し事故時の対応 ・・ 針刺し部の血液を搾り出し、流水で洗浄10分し、消毒。終わったら採血(一般+HCV抗体)。患者側のHCV-RNA定量を測定し、ウイルス量を確認。事故後半年間は血液検査でのフォローを続ける。
□ ハルン=尿量。ハルントータル=1日尿量。
□ 半座位=セミファーラー位 ・・ 座る角度が直角でなく、45度くらいの角度。心不全・喘息で少し息苦しいときや、腰が悪くて座りにくい人へのレントゲン撮影で望まれる体位。
□ ハンプ ・・ ハンプは商品名で、物質名はカルペリチド。急性心不全のときの利尿剤として、持続投与にて使用。
□ 肺炎球菌ワクチン ・・ 商品名ニューモバックス。値段は実費5千円と高いが効果は5年続くとされている。効果そのものには賛否両論あり。COPDの増悪の主な原因菌が肺炎球菌であることを考えると推奨されるべきではあるが、実際これがCOPD患者の予後を改善したというデータはない。
□ 肺癌(治療) ・・ 以下、NSCLC(非小細胞肺癌)とSCLC(小細胞癌)とに分けて。
● NSCLC
○ 中心型早期肺癌 のガイドライン
・ 区域気管支より中枢側に発生した肺癌。そのうち早期癌は、癌の浸潤が気管支壁を超えず、かつリンパ節転移や遠隔転移がない(CT・エコー骨シンチ等で確認)ものをいう。限局性ではあるが多発性の病変もありうる。内視鏡的には病巣の長径が2cm以下であり組織学的に扁平上皮癌であることが原則。
・ 日本では胸部レントゲン+喀痰細胞診によるスクリーニングが有効とされている。CTでのスクリーニングは発見が困難である。
・ 蛍光内視鏡(扁平上皮化生などの早期病変を発見)、気管支超音波(進達度診断に有用)はグレードC(勧めるだけの根拠が明確でない。つまりEBM不足)の段階。
・ 治療は・・
? 外科治療 ・・ 5年生存率80-100%と良好で、根治的治療といえる。
? 光線力学的治療(PDT) ・・ 5年生存率90%以上。好適応は長径1cm以内かつ進達度が粘膜下層まで。
? 気管支腔内照射 ・・ グレードC。
○ ?・?期肺癌(もちろんNSCLC)の治療ガイドライン
・ 標準術式は、肺葉切除+縦隔リンパ節郭清術。症例によって気管支形成術(局所病変が完全切除可能な場合)、隣接臓器の合併切除(胸壁合併切除、横隔膜合併切除、Superior Sulcus Tumor切除など)を選択する。※ Superior Sulcus Tumor切除 ・・ Superior Sulcus Tumorは肺尖部より発生し胸壁に浸潤し腕神経叢、交感神経節、鎖骨下動脈、椎体などに浸潤する肺癌。通常、術前に放射線照射を組み合わせる。5生率は25-30%。
・ 術後の5生率はIA期で70-80%と良好だが、IBで60%へ落ち込み、それ以上だとさらに落ち込んでいく。
・ 術前・後化学療法、術前導入放射線治療の併用について ・・ これにより予後が改善されるという根拠は乏しい(グレードC)。
・ ?・?期でも医学的に切除不能な場合、放射線治療単独の適応がある(ただしグレードB)。
・ VATSに関しては推奨できるだけのデータが揃っておらず(手術との比較試験なし)グレードC。これまでのデータでは?期に関しては手術に比し予後は同等またはそれ以上といわれている。
○ 縦隔リンパ節転移を伴う肺癌の治療ガイドライン
・ 切除可能な?A期 ・・ T3N1では第一選択。一方、T1-3N2の場合の手術意義は明確でない。
・ 特にN2と診断された例の予後は不良であり、この場合は集学的治療(術前化学・放射線療法や術後化学療法)の必要性が指摘されている。しかしいずれも予後改善のデータが出揃っていないのが現状。
○ 隣接臓器浸潤(気管分岐部、胸壁、胸壁肺尖部、横隔膜、左心房、大血管)を伴う肺癌の治療ガイドライン
・ 隣接臓器浸潤の場合、手術データがかなり乏しいのでEBM的な考え方はない。
・ 単純な胸壁浸潤の場合T3でありリンパ節転移しだいでIIB以上となるが、その他(上述)の臓器では無条件でIIIBと決まる。なお胸壁浸潤でリンパ節転移なしのcT3N0M0(IIB)ならば肺葉切除以上の根治術+胸壁合併切除が推奨され予後が期待できる(5生率50%弱)。N1-2になると推奨への言及はない。
・ 気管分岐部の浸潤する癌は手術のリスクが大きく、cN01症例で(N2を否定すること)病変が気管支分岐部周囲に限局する場合に推奨。
・ 横隔膜、左心房、大血管の切除に関しては根拠に乏しくグレードC。
○ 切除不能肺癌(もちろんNSCLC)の治療ガイドライン
・ ?期 ・・ 根治TRTが可能な局所NSCLCには、化学療法(グレードA)が強く勧められる。化学放射線療法(化学療法+TRT)の適応にならない場合(高齢者やPS不良例)でも根治的単独TRTを行う(グレードB)。化学放射線治療はPS1・2の全身状態良好患者に行う。TRTと化学療法は同時併用で行い、TRTは1日1回2Gyの通常分割照射(60Gy/30回/6週)が推奨されている。
※TRT:放射線療法
・ ?期 ・・ 化学療法は生存期間・QOLを改善する(グレードA。ただし高齢者ではグレードB)。対症療法(BSC)に比し生存期間中央値(MST)で6-8週、1年生存率を10%改善する。化学療法では従来よりシスプラチンを含むことが好ましいとされ、新規抗癌剤の登場もあったが併用による有効性の差はごく僅かである。プラチナ製剤が使用不可なら新規抗癌剤の単剤が推奨されている。
○ 再発NSCLCの化学療法
・ セカンドラインとしてはドセタキセルの投与を行う(グレードB)。BSCより予後良好。
● SCLC
○ LD-SCLC:限局型(ただし?期以外)
・ 初期治療として、化学療法+TRTの同時併用を行う(グレードA)。これでCRが得られればPCI(予防的全脳照射)を行う(グレードA
○ ED-SCLC:進展型
・ PS4を除き、初期治療として化学療法を行う(グレードA)。シスプラチン+エトポシドの併用が標準的治療である(グレードA)。シスプラチン+イリノテカンも有用だがグレードB。PS不良例でも単剤より多剤併用を行う。
・ 無治療SCLCではMSTが4ヶ月以内なのに対して、併用化学療法の場合のそれは10ヶ月以上を越す。
○ 再発
・ 前治療終了90日以上の再発でも化学療法への反応は期待できるが根拠という点では乏しい(グレードC)。
□ 肺気腫 ・・ ごく一部は先天性。大半は喫煙の積み重ね。機能しない肺が空胞様に拡大し、呼吸不全をきたす。高度だと在宅酸素療法が必要。手術は確実でない。また根治する薬もない。酸素は予後を改善し、喫煙は進行を遅らせる、この2点だけしかわかってない。
□ 肺血栓塞栓症(PTE)=エコノミークラス症候群 ・・ 肺塞栓症と肺血栓症を総称して呼ぶ。肺動脈が血栓で塞がれて起こる呼吸困難。原因は下肢から飛んできた血栓のことが多い。
□ 肺水腫 ・・ 肺の中が水浸しで呼吸が苦しくなる。大まかにいうと以下に分類。
? 心原性肺水腫 ・・ 心臓のせいで、つまり心不全で肺水腫になる。
? 非心原性肺水腫 ・・ 心臓のせいではないが、肺炎など心臓以外の内臓疾患で起こった肺水腫。
? 低アルブミン血症による肺水腫 ・・ 栄養不良による。末期癌か点滴のカロリー不足など。
? 薬物による肺水腫 ・・ 薬物により肺の中の血管の隙間が開き、水分が肺にたまる。尾崎豊の死因。
? 溺水による肺水腫
※ 特殊な例で、『高地肺水腫』あり。映画「バーティカル・リミット」を参照。ステロイド注射剤(デキサメサゾンと思われる)の取り合いとなった場面が見苦しい。専門家によるとあそこまで劇的には効かないらしい。
□ 肺性心 ・・ 肺のせいで心臓が悪くなった状態、と覚える。正確には肺高血圧のために右心不全となった状態だ。肺気腫から続発したものが多い。
□ 肺動脈(PA) ・・ 右心室から出る、肺の手前の血管。つまり血は静脈血で酸素が少ない。途中で左右の2つに分かれる。
この血管に血栓が詰まると「肺血栓塞栓症」と呼ばれる。
□ 肺胞蛋白症=pulmonary alveolar proteinosis=PAP ・・ 肺胞・呼吸細気管支内に(つまり末梢気道に)サーファクタントが貯留する疾患。先天性、基礎疾患のある二次性、特発性とがある。30-50代に多く男>女。
本邦では9割が特発性で、この原因が抗GM-CSF抗体(本症に特異的!)であることが最近発見された。
この自己抗体が肺胞内のGM-CSF活性をブロックし、最終的に肺胞内のサーファクタントが蓄積する。つまり本症は自己免疫疾患である。
症状は労作性呼吸困難、咳嗽、喀痰、軽度の発熱などで無症状も多い。画像では初期はスリガラス陰影で進行すると斑状融合影。CTでのメロンの皮状陰影(crazy paving sign)は有名。
採血ではKL-6などの線維化マーカーも上昇、気管支鏡でのBALF→乳白色で好酸性・PAS陽性の無構造物質などを認め、この物質はさらに生検(TBLB)にて証明される。
治療はGM-CSF(吸入)療法が有効。3ヶ月の無治療期間ののちに開始され、3ヶ月かけて吸入・休薬を繰り返す。コストが高いのが難。
※ GM-CSFは増殖性のサイトカインで、肺胞マクロファージを活性化させてサーファクタントの代謝(分解・再利用して一定の秩序保つ)を回転させる。本症では自己抗体により本機能が低下する。
□ ハイポ ・・ 通常は「甲状腺機能低下症」のことを指す、医者用語。心臓超音波などで動きの悪い場所をさすときにも使う表現。
□ 博士号=ティーテル=学位 ・・ 実験→論文作成→教授らの検閲→手直し→検閲→医局内で合格→提出→学内で合格してやっと与えられるもの。
□ 白衣 ・・ 医者・ナース・技師らが着る衣類。通常は病院から支給され、洗濯も随時してくれる。汚い白衣は院内感染と患者・家族の信頼失墜につながる。
□ ハチ刺傷 ・・ ハチ毒にはヒスタミン・セロトニン(痒み・痛み)、キニン類(発赤・熱感・腫脹)などからなる。毒性の強さはスズメバチ>アシナガバチ>ミツバチ>クマバチ。アレルギー反応起こすことあり2つに分けられる。?局所アレルギー:アシナガバチに多い。刺された周囲に蕁麻疹。反応が大きいと次回刺されたときにアナフィラキシー起こす恐れあり。?全身アナフィラキシー反応:スズメバチに多い。刺されて直後〜15分内に起こる。
ミツバチは針を残すので爪で弾き飛ばす。局所ならステロイド軟膏、抗ヒスタミン・抗セロトニン剤処方。
□ 白血球=ロイコ=しろ ・・ 炎症を起こすと増える。ステロイドの副作用や脱水、白血病でも上がる。心筋梗塞の初期なども。少ない場合は重症感染や白血病、薬の副作用なども疑う。
□ 派閥(はばつ) ・・ グループどうしの確執。病院同士、医局同士、医局内のグループどうしなど、スケールは大小あり。
□ 針刺し事故
・ B型肝炎の場合 ・・ ワクチン定期的接種、事故後の対応は全体的に徹底されているらしい。免疫なしで針刺し事故した場合、グロブリンを投与の上48時間以内にワクチン投与を追加する。
・ C型肝炎の場合 ・・ ある検討では実際に急性C型を発症するのは4%前後と低め。予防的にインターフェロンをいくかどうか、発症した時点でいくかどうかなどの点では統一した見解はない。予防投与によって、その後インターフェロンすることになった場合の治療効果減弱、インターフェロンそのものによるアナフィラキシーなどへの心配がある。一方、発症後の投与は有効だというデータが多い。実際、1ヶ月間は労災でみてくれる。
・ 針刺し事故時の対応 ・・ 針刺し部の血液を搾り出し、流水で洗浄10分し、消毒。終わったら採血(一般+HCV抗体)。患者側のHCV-RNA定量を測定し、ウイルス量を確認。事故後半年間は血液検査でのフォローを続ける。
□ ハルン=尿量。ハルントータル=1日尿量。
□ 半座位=セミファーラー位 ・・ 座る角度が直角でなく、45度くらいの角度。心不全・喘息で少し息苦しいときや、腰が悪くて座りにくい人へのレントゲン撮影で望まれる体位。
□ ハンプ ・・ ハンプは商品名で、物質名はカルペリチド。急性心不全のときの利尿剤として、持続投与にて使用。
コメント