サーガマニュアル2007秋 み む め も
2007年9月17日□ 右側胸部誘導 ・・ 通常の心電図では記録しない、右胸の心電図記録。下壁心筋梗塞の際に記録しないと、配慮のなさを問われる。
□ ミニ医者 ・・ ナースの中で、ドクターなみの態度で物事を語る人間。陰でこう呼ばれることあり。
□ ミニ移植(RISTとも呼ばれることあり)=骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植 ・・ 骨髄移植の際に処置前の免疫抑制剤投与が行われるのは常だが、この投与量を減量して行う方法をさす。移植の前に強力な免疫抑制剤で悪性細胞を駆逐する(←移植前処置という)のは骨髄破壊的であるという指摘が出てきたこと、また悪性細胞の駆逐自体を移植前の免疫抑制剤でなくむしろ移植後の免疫反応で行おうという発想からこの方法が生まれた。なお薬剤の減量といっても使用される薬剤の免疫抑制効果そのものは強力で、具体的にはpurine誘導体が中心に使用される。しかし従来の「骨髄破壊的」な骨髄移植と比較して優れているかどうかの比較はなされていない。
□ ミノマイシン ・・ テトラサイクリン系抗生物質。点滴と内服がある。異型肺炎が好適応。副作用としては肝障害など。ときに血管痛(なので生食100でなく500などの大きい点滴に混ぜることも)、膵炎の原因となることも。現場では「ミノ」と略される。
□ ミリスロール(日本化薬) ・・ 亜硝酸剤の点滴。狭心症・心筋梗塞で投与。標準的投与方法(体重50kgとして):?急性心不全・不安定狭心症・・初期原液で1ml/hr≒0.17μg/kg/min、維持量6-12ml/hr。?血圧コントロール・・初期原液で3ml/hr≒0.5μg/kg/minで20ml/hrまで。収縮期血圧90mmHg以上はキープする。ただし数日以上の点滴は「耐性」を招く。これに対して「ニトロール」は耐性を招きにくいとのデータあり。
□ ミルリノン ・・ 商品名はミルリーラ。PDE?阻害剤。心拍出量↑、末梢血管抵抗↓。急性心不全で他の薬剤が無効なとき使用。
□ むずむず脚症候群=レストレスレッグシンドローム=restless legs syndrome=RLS ・・ 夜間に足がむずむず感じてそれで眠れなくなる原因不明の疾患。6-8割では睡眠中の周期性の四肢運動が出現。40-50歳代に好発。一般的な検査所見では異常を呈さないため、結局うつ病や不眠症と誤診されることが多い。専門家によると、以下の問診で4つとも満たすなら間違いないという。?手足を動かしたい欲求あり、?安静時に症状悪化、?動き回ると楽になる、?夕方以降に増悪。具体的な検査としてはポリソムノグラフィーが必要となる。治療としてはまず生活習慣の改善(カフェイン・アルコール摂取禁止、特に夕方以降)、下肢マッサージ・ストレッチ。内服ではパーキンソン病治療薬。
□ ムンテラ ・・ 家族への説明。ムント(口)+セラピー(療法)という言葉の組み合わせが発展して勝手にできあがった造語。「MT」とカルテに記載する輩もいるが、これも自然に派生した言葉で、いわゆる正式な医療用語ではない。
□ 名義貸し(めいぎがし) ・・ 以前は公然と行われていた、履歴書のみ他病院に勤務して給料がおりるという仕組み。特に大学院生は授業料支払いながらの大学勤務なので、モチベーションという意味で必要なものだった。名義を貸してもらう病院側はとりあえず書類上の人数確保。しかし、国の機関はこれをもともと知っていたはず。これを公な騒ぎにすることで、大学病院崩しと民営化、民間病院経営圧迫、医療費抑制などに持っていこうとした役人らの利己的な意図が垣間見える。
□ メイロン ・・ 重炭酸。つまりアルカリ化剤。高カリウムの治療、アシドーシスの補正に使われる(※以前、アドレナリンの作用が現弱されるといわれていたが最近の研究では影響ないようである:2006年日本医師会雑誌)ほか、メニエル病でもよく使用。高炭酸ガスの場合はそれを助長するので使用すべきでない。ボトルではナトリウム負荷にも注意。
□ メキシチ−ル=メキシレチン ・・ 心室性の不整脈に使用される。最近は糖尿病性の末梢神経障害の使用も。副作用としては肝障害、精神症状に注意。血中濃度の測定がときに必要。
□ メタ(meta=metastasis) ・・ 癌の転移。
□ メタボリックシンドローム=MS=metabolic syndrome=代謝異常症候群
まず基礎に生活習慣の偏りがあり、それによって内臓脂肪が蓄積、これによって脂肪細胞の機能異常、特にアディポサイトカイン分泌異常を引き起こす。で、高脂血症、高血圧、糖尿病をきたし動脈硬化を起こしていく、いわゆる複合型リスク病態。
2005年4月の最新の基準によると・・内臓脂肪の蓄積がある(巻尺でウエスト周囲径・・ベルト位置でなく、ヘソまわり・・で男性85cm以上、女性90cm以上)のが必須条件で、あと以下3つのうち2項目を満たす場合。
?高脂血症(中性脂肪150以上 かつ/または HDL=善玉コレステロール;40未満)
?高血圧(上が130以上 かつ/または 下が85以上)
?糖尿病(空腹時で110以上)。
※ ただしここでの高脂血症、糖尿病、高血圧は従来の基準のものとは異なる。
※ 日常臨床での内臓脂肪量測定(CTで内臓脂肪面積100cm2以上→内臓脂肪蓄積あり)と血中アディポネクチン濃度測定が強調されている。
ところでこの基準は議論を呼んでいる。というのは女性で腹囲90cm以上と定義したら、実際リスク集積者の半数以上を見逃してしまう、というのだ。最近では動脈硬化性疾患の合併も考慮し、具体的にはカットオフ値を男性83.7cm、女性80.0cmの目安と考える意見が有力である。これに関してはさらなる検討が進められている。
※ ところが「日本ではエビデンスに基づかない診断基準が作られている。その例の1つがMSである」、という指摘があり議論を呼んでいる。詳しくは日経メディカルhttp://medical.nikkeibp.co.jp/で。
メタボリックシンドローム各論↓
○ 糖尿病性大血管症
糖尿病は、それがないのと比べて冠・脳血管障害のリスクが3-4倍に上昇する。
血糖是正による心血管イベントの抑制効果は・・明らかなはずだが実はエビデンス不足。
そこでJDCS=Japan diabetes complication study:日本の2型糖尿病の合併症の発症要因を解明するための前向き研究:が行われている。
○ 高脂血症
動脈硬化疾患ハイリスク患者の場合は、たとえLDL-Cが正常でも十分な管理が必要であることは十分示された。ではどこまで下げたらいいのか、それが今のトピックス。アメリカでは「重度ハイリスク」という分類(糖尿病などリスクが多い人、ACSなど)を分類し、その場合は70mg/dl未満まで下げる必要性を提唱した。日本ではJ-LITという調査によるデータが今のところスタンダードな指標とされている。つまり一次予防でLDL-C 160mg/dl未満、二次予防で100mg/dl未満。
○ 高血圧
第一選択薬は5つ。すなわちCa拮抗薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、ACE阻害薬、β遮断薬、降圧利尿薬
α遮断薬も第一選択でもよいがエビデンスなし。
レセルピン系薬剤、ヒドララジン系は臓器保護効果は不十分なので第一選択にはならない。
目的は脳・心・腎の合併症の予防である。
<薬物におけるEBM>
・ 高血圧
RA系抑制薬(ARB・ACEI) ・・ 単なる降圧のほかに、糖尿病新規発症抑制(20%)、糖尿病患者の微量アルブミン尿↓による腎障発生抑制
α遮断薬 ・・ 脂質・糖代謝改善作用(インスリン感受性↑、LDL-C↓、HDL-C↑、TG↓)
・ 糖尿病
チアゾリジン誘導体 ・・ 脂質代謝改善作用(HDL-C↑、TG↓)、抗動脈硬化作用(PWV↓、IMT↓)、ステント挿入後の再狭窄率↓
PROactive study:2型糖尿病への投与で心血管イベントが有意に抑制。
メトホルミン ・・ 2型糖尿病の肝臓の糖新生抑制、インスリン抵抗性↓、LDL-C↓、T-Chol↓、TG↓
・ 高脂血症
スタチン ・・ メタボリックシンドローム患者の心血管イベント抑制、糖尿病新規発症抑制
フィブラート系 ・・ 脂質・糖代謝改善作用、冠動脈新患患者の2次予防効果(BIP study)
□ メディカル・コントロール=MC ・・ 医学的観点から、救急隊員が行う応急措置等の質を保証すること。具体的には救急隊員の教育指導、救急の実際の検証・症例検討、病院到着前の指示など。さらに具体的には救急隊員に勉強会などで学ばせ、意外とされてなかった救急活動の事後検証(あくまでも批判でなく)を行い検討し今後に生かし、場合によっては隊員の再教育につながる。またオンラインで救命士と連絡を取り合うドクター(メディカル・ディレクター)の充実。日本でこの体制が充実しているとは言い難く、これら実現のため行政・消防・救命センターの一層の努力が必要。
■ メトクロプラミド(プリンぺランなど)
制吐剤として使用。ドパミン拮抗薬で、その機序ゆえにパーキンソンなど不随意運動の副作用がまれにある。特に小児の投与で不随意運動所見(眼球運動異常、項部後屈、斜頸、頸部痛、後弓張、四肢の伸展・捻転)がみられたら副作用を疑う。海外ではこれを考慮した使用制限の流れがある。
□ メニエル病 ・・ 内耳の水腫により回転性めまいを起こす。若年でも起こしうる。通常はメイロンの点滴かメリスロンなどの内服。自律神経症状の一部との鑑別はほとんどされていない。
□ メプチンエアー ・・ 喘息の頓服・水色キャップのスプレー。息苦しいときに使用。通常は1日2回まで。使用しすぎは頻脈のもと。子供用に「メプチン・キッドエアー」あり。喘息の吸入薬を吸う場面は映画でもおなじみで、最近では『コール』でダコタ・ファニングが吸っていた。
□ 免疫グロブリン製剤 ・・ 原料は多数の健康人の血中免疫グロブリンであり、それらを精製・濃縮したのが本剤である(血液製剤)。おもに重症感染症の増悪時に、抗生剤と併用される。実際の投与量は地域によって保険上のしばりがあり様々。細胞外増殖菌(インフルエンザ菌、緑膿菌、ブドウ球菌などの一般的な感染菌)では効果が期待できるが、細胞内増殖菌(レジオネラ、結核菌など)・マイコプラズマ・クラミジア肺炎、真菌には有効性は期待できない。投与が早すぎるとショック・血圧低下につながるのでゆっくり(1-2時間で)、通常は3日間投与する。これにより腎不全を起こすと不可逆性になりやすい。
■ 免疫グロブリン静注(IVIg)療法 ・・ 小児疾患(ITP、川崎病など)や神経疾患(ギランバレー、CIDP、MMN)、重症感染症(前述)や低ガンマグロブリン血症などに用いられる治療法。400mg/kg/dayで5日連日投与だが経験的なものであり投与量に科学的な根拠があるわけではない。なお点滴開始30分後に副作用(ショック、風邪のような症状など)が出やすいので最初の速度は抑え目が望ましい。また遅発性の副作用として無菌性髄膜炎が1割(経度)、顆粒球減少(一過性)などがある。
□ モーニング・サージ ・・ 夜間→覚醒にかけて交感神経が活性化し、血圧が早朝に上昇してくること。この時間帯は脳卒中の発症が多い。このためいかに早朝の血圧を下げるかが大事だとMRは強調する。
□ モダシン ・・ 抗生剤で、セフェム3世代。緑膿菌用でよく使われていたが、最近は耐性菌も増えている。
□ モニター ・・ 詰所に置いてある、ピコピコ鳴ってる心電図。重症患者か不整脈患者についている。ときに警報音が鳴ったりして職員を驚かせる。
□ モニタリング ・・ ある指標を追いかけること。例えば白血球が今日は増えて、明日は減って・・とかの追跡。
□ 問診表 ・・ 外来受診の前に初診患者の書くもの。既往歴、現在の症状、アレルギー・妊娠の有無など。
□ 薬剤性肺障害 ・・ 薬物有害反応(ADR=adverse drug reaction)のうち呼吸器系のもので、ADRのうちの6-7%を占める。様々な病態を呈するが、最も多いのは薬剤性肺炎で、2000年以降急増している。特に有名なのが間質性肺炎で問題になった金製剤のシオゾール、小柴胡湯、イレッサ。薬剤性肺障害の発生機序はほとんど不明で、病理組織像も多彩。実際の臨床では病理像が得られることは少なく、せいぜいBAL(気管支肺胞洗浄)止まりのことが多い。病態的には肺胞病変、間質性肺炎、過敏性肺臓炎、好酸球性肺疾患などが主体。なお薬剤性肺障害と鑑別すべき病態として、?マイコプラズマ肺炎・細気管支炎、?Pneumocystis jiroveci肺炎、?ウイルス性肺炎、?Coccidioides症(4類の輸入感染症で、Cccidioides immitisによる)、?寄生虫感染症、がある。治療は薬剤の中止のほか、低酸素の状況に応じての酸素投与、ステロイド投与(重症ではパルス)となる。薬剤性肺障害のBAL所見では、総細胞数の増加、細胞分画では好酸球・リンパ球比率の増加、CD4/CD8比の低下が多い。
□ ミニ医者 ・・ ナースの中で、ドクターなみの態度で物事を語る人間。陰でこう呼ばれることあり。
□ ミニ移植(RISTとも呼ばれることあり)=骨髄非破壊的同種造血幹細胞移植 ・・ 骨髄移植の際に処置前の免疫抑制剤投与が行われるのは常だが、この投与量を減量して行う方法をさす。移植の前に強力な免疫抑制剤で悪性細胞を駆逐する(←移植前処置という)のは骨髄破壊的であるという指摘が出てきたこと、また悪性細胞の駆逐自体を移植前の免疫抑制剤でなくむしろ移植後の免疫反応で行おうという発想からこの方法が生まれた。なお薬剤の減量といっても使用される薬剤の免疫抑制効果そのものは強力で、具体的にはpurine誘導体が中心に使用される。しかし従来の「骨髄破壊的」な骨髄移植と比較して優れているかどうかの比較はなされていない。
□ ミノマイシン ・・ テトラサイクリン系抗生物質。点滴と内服がある。異型肺炎が好適応。副作用としては肝障害など。ときに血管痛(なので生食100でなく500などの大きい点滴に混ぜることも)、膵炎の原因となることも。現場では「ミノ」と略される。
□ ミリスロール(日本化薬) ・・ 亜硝酸剤の点滴。狭心症・心筋梗塞で投与。標準的投与方法(体重50kgとして):?急性心不全・不安定狭心症・・初期原液で1ml/hr≒0.17μg/kg/min、維持量6-12ml/hr。?血圧コントロール・・初期原液で3ml/hr≒0.5μg/kg/minで20ml/hrまで。収縮期血圧90mmHg以上はキープする。ただし数日以上の点滴は「耐性」を招く。これに対して「ニトロール」は耐性を招きにくいとのデータあり。
□ ミルリノン ・・ 商品名はミルリーラ。PDE?阻害剤。心拍出量↑、末梢血管抵抗↓。急性心不全で他の薬剤が無効なとき使用。
□ むずむず脚症候群=レストレスレッグシンドローム=restless legs syndrome=RLS ・・ 夜間に足がむずむず感じてそれで眠れなくなる原因不明の疾患。6-8割では睡眠中の周期性の四肢運動が出現。40-50歳代に好発。一般的な検査所見では異常を呈さないため、結局うつ病や不眠症と誤診されることが多い。専門家によると、以下の問診で4つとも満たすなら間違いないという。?手足を動かしたい欲求あり、?安静時に症状悪化、?動き回ると楽になる、?夕方以降に増悪。具体的な検査としてはポリソムノグラフィーが必要となる。治療としてはまず生活習慣の改善(カフェイン・アルコール摂取禁止、特に夕方以降)、下肢マッサージ・ストレッチ。内服ではパーキンソン病治療薬。
□ ムンテラ ・・ 家族への説明。ムント(口)+セラピー(療法)という言葉の組み合わせが発展して勝手にできあがった造語。「MT」とカルテに記載する輩もいるが、これも自然に派生した言葉で、いわゆる正式な医療用語ではない。
□ 名義貸し(めいぎがし) ・・ 以前は公然と行われていた、履歴書のみ他病院に勤務して給料がおりるという仕組み。特に大学院生は授業料支払いながらの大学勤務なので、モチベーションという意味で必要なものだった。名義を貸してもらう病院側はとりあえず書類上の人数確保。しかし、国の機関はこれをもともと知っていたはず。これを公な騒ぎにすることで、大学病院崩しと民営化、民間病院経営圧迫、医療費抑制などに持っていこうとした役人らの利己的な意図が垣間見える。
□ メイロン ・・ 重炭酸。つまりアルカリ化剤。高カリウムの治療、アシドーシスの補正に使われる(※以前、アドレナリンの作用が現弱されるといわれていたが最近の研究では影響ないようである:2006年日本医師会雑誌)ほか、メニエル病でもよく使用。高炭酸ガスの場合はそれを助長するので使用すべきでない。ボトルではナトリウム負荷にも注意。
□ メキシチ−ル=メキシレチン ・・ 心室性の不整脈に使用される。最近は糖尿病性の末梢神経障害の使用も。副作用としては肝障害、精神症状に注意。血中濃度の測定がときに必要。
□ メタ(meta=metastasis) ・・ 癌の転移。
□ メタボリックシンドローム=MS=metabolic syndrome=代謝異常症候群
まず基礎に生活習慣の偏りがあり、それによって内臓脂肪が蓄積、これによって脂肪細胞の機能異常、特にアディポサイトカイン分泌異常を引き起こす。で、高脂血症、高血圧、糖尿病をきたし動脈硬化を起こしていく、いわゆる複合型リスク病態。
2005年4月の最新の基準によると・・内臓脂肪の蓄積がある(巻尺でウエスト周囲径・・ベルト位置でなく、ヘソまわり・・で男性85cm以上、女性90cm以上)のが必須条件で、あと以下3つのうち2項目を満たす場合。
?高脂血症(中性脂肪150以上 かつ/または HDL=善玉コレステロール;40未満)
?高血圧(上が130以上 かつ/または 下が85以上)
?糖尿病(空腹時で110以上)。
※ ただしここでの高脂血症、糖尿病、高血圧は従来の基準のものとは異なる。
※ 日常臨床での内臓脂肪量測定(CTで内臓脂肪面積100cm2以上→内臓脂肪蓄積あり)と血中アディポネクチン濃度測定が強調されている。
ところでこの基準は議論を呼んでいる。というのは女性で腹囲90cm以上と定義したら、実際リスク集積者の半数以上を見逃してしまう、というのだ。最近では動脈硬化性疾患の合併も考慮し、具体的にはカットオフ値を男性83.7cm、女性80.0cmの目安と考える意見が有力である。これに関してはさらなる検討が進められている。
※ ところが「日本ではエビデンスに基づかない診断基準が作られている。その例の1つがMSである」、という指摘があり議論を呼んでいる。詳しくは日経メディカルhttp://medical.nikkeibp.co.jp/で。
メタボリックシンドローム各論↓
○ 糖尿病性大血管症
糖尿病は、それがないのと比べて冠・脳血管障害のリスクが3-4倍に上昇する。
血糖是正による心血管イベントの抑制効果は・・明らかなはずだが実はエビデンス不足。
そこでJDCS=Japan diabetes complication study:日本の2型糖尿病の合併症の発症要因を解明するための前向き研究:が行われている。
○ 高脂血症
動脈硬化疾患ハイリスク患者の場合は、たとえLDL-Cが正常でも十分な管理が必要であることは十分示された。ではどこまで下げたらいいのか、それが今のトピックス。アメリカでは「重度ハイリスク」という分類(糖尿病などリスクが多い人、ACSなど)を分類し、その場合は70mg/dl未満まで下げる必要性を提唱した。日本ではJ-LITという調査によるデータが今のところスタンダードな指標とされている。つまり一次予防でLDL-C 160mg/dl未満、二次予防で100mg/dl未満。
○ 高血圧
第一選択薬は5つ。すなわちCa拮抗薬、アンジオテンシン受容体拮抗薬、ACE阻害薬、β遮断薬、降圧利尿薬
α遮断薬も第一選択でもよいがエビデンスなし。
レセルピン系薬剤、ヒドララジン系は臓器保護効果は不十分なので第一選択にはならない。
目的は脳・心・腎の合併症の予防である。
<薬物におけるEBM>
・ 高血圧
RA系抑制薬(ARB・ACEI) ・・ 単なる降圧のほかに、糖尿病新規発症抑制(20%)、糖尿病患者の微量アルブミン尿↓による腎障発生抑制
α遮断薬 ・・ 脂質・糖代謝改善作用(インスリン感受性↑、LDL-C↓、HDL-C↑、TG↓)
・ 糖尿病
チアゾリジン誘導体 ・・ 脂質代謝改善作用(HDL-C↑、TG↓)、抗動脈硬化作用(PWV↓、IMT↓)、ステント挿入後の再狭窄率↓
PROactive study:2型糖尿病への投与で心血管イベントが有意に抑制。
メトホルミン ・・ 2型糖尿病の肝臓の糖新生抑制、インスリン抵抗性↓、LDL-C↓、T-Chol↓、TG↓
・ 高脂血症
スタチン ・・ メタボリックシンドローム患者の心血管イベント抑制、糖尿病新規発症抑制
フィブラート系 ・・ 脂質・糖代謝改善作用、冠動脈新患患者の2次予防効果(BIP study)
□ メディカル・コントロール=MC ・・ 医学的観点から、救急隊員が行う応急措置等の質を保証すること。具体的には救急隊員の教育指導、救急の実際の検証・症例検討、病院到着前の指示など。さらに具体的には救急隊員に勉強会などで学ばせ、意外とされてなかった救急活動の事後検証(あくまでも批判でなく)を行い検討し今後に生かし、場合によっては隊員の再教育につながる。またオンラインで救命士と連絡を取り合うドクター(メディカル・ディレクター)の充実。日本でこの体制が充実しているとは言い難く、これら実現のため行政・消防・救命センターの一層の努力が必要。
■ メトクロプラミド(プリンぺランなど)
制吐剤として使用。ドパミン拮抗薬で、その機序ゆえにパーキンソンなど不随意運動の副作用がまれにある。特に小児の投与で不随意運動所見(眼球運動異常、項部後屈、斜頸、頸部痛、後弓張、四肢の伸展・捻転)がみられたら副作用を疑う。海外ではこれを考慮した使用制限の流れがある。
□ メニエル病 ・・ 内耳の水腫により回転性めまいを起こす。若年でも起こしうる。通常はメイロンの点滴かメリスロンなどの内服。自律神経症状の一部との鑑別はほとんどされていない。
□ メプチンエアー ・・ 喘息の頓服・水色キャップのスプレー。息苦しいときに使用。通常は1日2回まで。使用しすぎは頻脈のもと。子供用に「メプチン・キッドエアー」あり。喘息の吸入薬を吸う場面は映画でもおなじみで、最近では『コール』でダコタ・ファニングが吸っていた。
□ 免疫グロブリン製剤 ・・ 原料は多数の健康人の血中免疫グロブリンであり、それらを精製・濃縮したのが本剤である(血液製剤)。おもに重症感染症の増悪時に、抗生剤と併用される。実際の投与量は地域によって保険上のしばりがあり様々。細胞外増殖菌(インフルエンザ菌、緑膿菌、ブドウ球菌などの一般的な感染菌)では効果が期待できるが、細胞内増殖菌(レジオネラ、結核菌など)・マイコプラズマ・クラミジア肺炎、真菌には有効性は期待できない。投与が早すぎるとショック・血圧低下につながるのでゆっくり(1-2時間で)、通常は3日間投与する。これにより腎不全を起こすと不可逆性になりやすい。
■ 免疫グロブリン静注(IVIg)療法 ・・ 小児疾患(ITP、川崎病など)や神経疾患(ギランバレー、CIDP、MMN)、重症感染症(前述)や低ガンマグロブリン血症などに用いられる治療法。400mg/kg/dayで5日連日投与だが経験的なものであり投与量に科学的な根拠があるわけではない。なお点滴開始30分後に副作用(ショック、風邪のような症状など)が出やすいので最初の速度は抑え目が望ましい。また遅発性の副作用として無菌性髄膜炎が1割(経度)、顆粒球減少(一過性)などがある。
□ モーニング・サージ ・・ 夜間→覚醒にかけて交感神経が活性化し、血圧が早朝に上昇してくること。この時間帯は脳卒中の発症が多い。このためいかに早朝の血圧を下げるかが大事だとMRは強調する。
□ モダシン ・・ 抗生剤で、セフェム3世代。緑膿菌用でよく使われていたが、最近は耐性菌も増えている。
□ モニター ・・ 詰所に置いてある、ピコピコ鳴ってる心電図。重症患者か不整脈患者についている。ときに警報音が鳴ったりして職員を驚かせる。
□ モニタリング ・・ ある指標を追いかけること。例えば白血球が今日は増えて、明日は減って・・とかの追跡。
□ 問診表 ・・ 外来受診の前に初診患者の書くもの。既往歴、現在の症状、アレルギー・妊娠の有無など。
□ 薬剤性肺障害 ・・ 薬物有害反応(ADR=adverse drug reaction)のうち呼吸器系のもので、ADRのうちの6-7%を占める。様々な病態を呈するが、最も多いのは薬剤性肺炎で、2000年以降急増している。特に有名なのが間質性肺炎で問題になった金製剤のシオゾール、小柴胡湯、イレッサ。薬剤性肺障害の発生機序はほとんど不明で、病理組織像も多彩。実際の臨床では病理像が得られることは少なく、せいぜいBAL(気管支肺胞洗浄)止まりのことが多い。病態的には肺胞病変、間質性肺炎、過敏性肺臓炎、好酸球性肺疾患などが主体。なお薬剤性肺障害と鑑別すべき病態として、?マイコプラズマ肺炎・細気管支炎、?Pneumocystis jiroveci肺炎、?ウイルス性肺炎、?Coccidioides症(4類の輸入感染症で、Cccidioides immitisによる)、?寄生虫感染症、がある。治療は薬剤の中止のほか、低酸素の状況に応じての酸素投与、ステロイド投与(重症ではパルス)となる。薬剤性肺障害のBAL所見では、総細胞数の増加、細胞分画では好酸球・リンパ球比率の増加、CD4/CD8比の低下が多い。
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