サーガマニュアル2007秋 N O
2007年9月17日□ NASH=non-alcoholic steatohepatitis=非アルコール性脂肪肝炎
脂肪肝がまず背景にあり、肝臓の病理組織でアルコール性の所見がありながら実は飲酒歴が乏しいもの。
これは進行性のものであり、肝硬変・肝癌への進行もありうる。原因不明の肝硬変をみたときは思い出す必要がある。
大多数が原発性で、内臓脂肪の蓄積による肥満→脂肪細胞がアディポサイトカイン放出→インスリン抵抗性(平たく言うと糖尿病体質)という病態が根本にあり、メタボリックシンドロームを呈している。
発病のメカニズムについては、もとは脂肪肝だったのが脂肪肝炎という病態に進行するという説(two hit hypothesisという。first hitが肝脂肪沈着で、second hitが炎症、という意味)が有力。
脂肪肝の患者で、血小板減少や線維化マーカーが上昇してきたらこれを疑う。確定診断には肝生検を要し、脂肪肝炎の所見をみる(非アルコール性の疾患ながらアルコール性肝障害に類似なのがポイント)。特にMallory体・肝細胞膨化があれば肝硬変への移行率が高い。
治療はあくまでもメタボリックシンドロームの治療だが、有効性が示されているものとしては糖尿病の薬のうちのメトホルミン、チアゾリジン誘導体、フィブラート系薬剤、UDCAにEPL、ビタミンEなど。
□ NAFLD=non-alcoholic fatty liver disease=非アルコール性脂肪性肝障害 ・・ 単純性脂肪肝(予後良好)と、NASH=non-alcoholic steatohepatitis=非アルコール性脂肪肝炎(進行性で、肝硬変・肝癌への進行もあり)の総称。
□ nCPAP=nasal continuous positive airway pressure=経鼻的持続気道陽圧療法=ネーザルシ−パップ=シ−パップ ・・ 鼻マスクhttp://www.gussuri.jp/chiryou-annnai.htmlを装着して気道に圧を加える。閉塞型の睡眠時無呼吸症候群に対する治療法の1つ(他には口腔内装具、耳鼻科での手術)。1998年より保険適応で、一定の基準をクリアする必要がある。目安はAHI=無呼吸低呼吸指数(1時間あたりの10秒以上無呼吸+安静覚醒時の50%以下の低換気)が20以上、脳波上で睡眠障害あり、症状(昼間の眠気)あり、が主なもの。
※ http://www.m-junkanki.com/kennsinn/kennsinn_apnea.htmlも参考に。
流れとしては、入院→ポリソムノグラフィーで適応決定→nCPAP施行し設定を決定→退院、となることが多い(数日間)。
nCPAPによって症状の改善、合併症の減少などいい報告は多いのだが、実際のコンプライアンス(いわば継続率みたいなもの)は50-80%と、脱落例が多いのが主治医を悩ませる。機械の扱いに患者がついていけてない、または治療そのものによる不快感・違和感という理由が大半だ。
□ NERD ・・ GERD(胃食道逆流症)のうち、内視鏡で異常所見がない、すなわち症状だけのもの。H18.6月より一部のPPI(タケプロン)が保険適応。症状は胸焼けだけでなく胃もたれを併せ持つことも多い。そこで、その場合酸を抑えるPPIでは十分でなくモサプリド(ガスモチン)の併用が好ましい。
□ NICE STUDY ・・ 日本でのCOPDに関する疫学調査(2004)。無症状に近いCOPD患者が実はかなり潜在していることが明らかに。
□ NIPPON DATA 80 ・・ 2005年夏に日本動脈硬化学会が発表した、一般日本人対象の生活習慣病とその予後を分析した調査。1980年から14年も追跡。
・ 総コレステロール260mg/dl以上になると一気に総死亡リスク大
・ 全癌・肝臓癌のリスクは総コレステロール値が低いほど高い(低く下げるのがいけない、という意味でなくて、癌の場合栄養状態が悪化しているからという結果的な意味だろう)
・ PCI後のACS患者に対して積極的にLDL-Cを下げた。69mg/dl以下まで徹底的に下げた群では冠動脈内のプラーク(血栓)がいずれも縮小した(アイバスで確認)。
□ NMP22 ・・ NuMA蛋白(細胞分裂のとき出現する蛋白の1つ)の一種で、癌細胞に多めに発現する。尿中NMP22は尿路上皮癌の補助診断として有用。膀胱癌では尿中細胞診より陽性率が高いとの報告あり。膀胱鏡検査を検討する前に確認しておきたい。
□ no change ・・ 患者が安定しているときにカルテによく記載される表現。
□ non-dipper(ノン・ディッパー) ・・ 血圧は昼間上がって夜間は下がるのが常。高血圧でもそのパターンがいちおう守られているのがdipper型で、夜間でも血圧が高いのがnon-dipper。夜間の血圧上昇は脳卒中・心筋梗塞との関連が明らかなため、non-dipperは明らかに心血管病が発生しやすい。
□ NSAID=エヌセイド=非ステロイド性抗炎症剤 ・・ 痛み止めとして使われることが多い。代表がアスピリン。アメリカでは薬局で買える。『ダイハード3』でブルース・ウィリス、『マイ・ボディガード』でデンゼルワシントンが何度も飲んでいた。しかし慢性使用は胃潰瘍と腎障害に注意。この薬剤は痛み止め以外にも、将来は発癌予防、アルツハイマー病予防への応用が期待されている。
□ NSAID潰瘍
NSAIDによる胃・十二指腸潰瘍。つまり副作用。日本の統計では長期投与により胃潰瘍で15.5%、十二指腸潰瘍1.9%の発見率らしい。
診断されれば直ちにNSAIDを中止だが、どしても中止できない理由があれば、PPIあるいはPG製剤により治療を行う。なおピロリ除菌によってNSAID潰瘍を予防できるというデータはない。
副作用発現の機序に「dual insult hypothesis」という仮説があり、それによると2つの機序がある。
? primary insult ・・ 胃酸によりNSAIDが細胞膜透過性を獲得し、細胞内に蓄積されて代謝障害を起こし、粘膜上皮を破綻させる。
? secondary insult ・・ 内因性PG(プロスタグランジン)の抑制・・・正確にはPG合成酵素であるCOX(シクロオキシゲナーゼ)阻害により粘膜防御機構を破綻させる。
※ PGは消化管の細胞の粘液産生や微小循環に促進的に働く物質。
■ NVAF=nonvalvular atrial fibrillation=非弁膜症性心房細動
脳梗塞のうちの心原性塞栓の50%であり、脳梗塞患者の15%はNVAFに起因する。無治療のままだと年間2-5%の頻度で塞栓症を合併する。洞調律の群と比較するとリスクは5倍に膨れ上がる。実際、NVAF患者の3割は脳塞栓を起こす。
予防のためにアスピリン、ワーファリンの投与が行われる。
欧米ガイドラインでは高リスク群を高血圧、心不全、塞栓症既往と定義、本邦ガイドラインではさらに糖尿病、冠動脈疾患を加えている。欧米ガイドラインで、低リスク群にはアスピリン325mg/day(量としては多い)。この低リスク群のうちlone af(孤発性心房細動)では本邦では治療不要、とある。
塞栓の危険性評価に<CHADS2スコア>があり、
・ 脳梗塞・TIA既往あり → 2点
・ 75歳以上 → 1点
・ うっ血性心不全あり → 1点
・ 高血圧あり → 1点
・ 糖尿病あり → 1点
この点数が高いほど塞栓症の危険性が増す。これらリスク有の例では無い群に比べてD-ダイマー値が有意に高い(線溶系亢進するってことは血栓あることの反映)。一方リスク無いNVAFでは線溶系はそれほど亢進してなく、この場合積極的な抗凝固が必要ない理由となる(でもアスピリン投与することがある)。
なお欧米で高リスク群に投与されるワーファリンの効きの目安としてはPT-INR 2.0-3.0とキツめあるが、本邦75歳以上では1.6-2.6と控えめなのも異なるところ(70歳以上ではINR 2.2を越えると出血の合併症が増え、特に2.6以上で急激にリスクが増す)。75歳未満では米国同様のINR 2.0-3.0を推奨。
□ obesity(オベスィティー) ・・ 肥満。日本ではBMI 25kg/m2以上をさす。うち8-9割は内分泌疾患を伴わない、過食・運動不足による<単純性肥満>。
□ OMI=陳旧性心筋梗塞 ・・ 心筋梗塞を起こして1ヶ月以上経ったもの。油断すると心不全を合併する。
□ OT=作業療法士
脂肪肝がまず背景にあり、肝臓の病理組織でアルコール性の所見がありながら実は飲酒歴が乏しいもの。
これは進行性のものであり、肝硬変・肝癌への進行もありうる。原因不明の肝硬変をみたときは思い出す必要がある。
大多数が原発性で、内臓脂肪の蓄積による肥満→脂肪細胞がアディポサイトカイン放出→インスリン抵抗性(平たく言うと糖尿病体質)という病態が根本にあり、メタボリックシンドロームを呈している。
発病のメカニズムについては、もとは脂肪肝だったのが脂肪肝炎という病態に進行するという説(two hit hypothesisという。first hitが肝脂肪沈着で、second hitが炎症、という意味)が有力。
脂肪肝の患者で、血小板減少や線維化マーカーが上昇してきたらこれを疑う。確定診断には肝生検を要し、脂肪肝炎の所見をみる(非アルコール性の疾患ながらアルコール性肝障害に類似なのがポイント)。特にMallory体・肝細胞膨化があれば肝硬変への移行率が高い。
治療はあくまでもメタボリックシンドロームの治療だが、有効性が示されているものとしては糖尿病の薬のうちのメトホルミン、チアゾリジン誘導体、フィブラート系薬剤、UDCAにEPL、ビタミンEなど。
□ NAFLD=non-alcoholic fatty liver disease=非アルコール性脂肪性肝障害 ・・ 単純性脂肪肝(予後良好)と、NASH=non-alcoholic steatohepatitis=非アルコール性脂肪肝炎(進行性で、肝硬変・肝癌への進行もあり)の総称。
□ nCPAP=nasal continuous positive airway pressure=経鼻的持続気道陽圧療法=ネーザルシ−パップ=シ−パップ ・・ 鼻マスクhttp://www.gussuri.jp/chiryou-annnai.htmlを装着して気道に圧を加える。閉塞型の睡眠時無呼吸症候群に対する治療法の1つ(他には口腔内装具、耳鼻科での手術)。1998年より保険適応で、一定の基準をクリアする必要がある。目安はAHI=無呼吸低呼吸指数(1時間あたりの10秒以上無呼吸+安静覚醒時の50%以下の低換気)が20以上、脳波上で睡眠障害あり、症状(昼間の眠気)あり、が主なもの。
※ http://www.m-junkanki.com/kennsinn/kennsinn_apnea.htmlも参考に。
流れとしては、入院→ポリソムノグラフィーで適応決定→nCPAP施行し設定を決定→退院、となることが多い(数日間)。
nCPAPによって症状の改善、合併症の減少などいい報告は多いのだが、実際のコンプライアンス(いわば継続率みたいなもの)は50-80%と、脱落例が多いのが主治医を悩ませる。機械の扱いに患者がついていけてない、または治療そのものによる不快感・違和感という理由が大半だ。
□ NERD ・・ GERD(胃食道逆流症)のうち、内視鏡で異常所見がない、すなわち症状だけのもの。H18.6月より一部のPPI(タケプロン)が保険適応。症状は胸焼けだけでなく胃もたれを併せ持つことも多い。そこで、その場合酸を抑えるPPIでは十分でなくモサプリド(ガスモチン)の併用が好ましい。
□ NICE STUDY ・・ 日本でのCOPDに関する疫学調査(2004)。無症状に近いCOPD患者が実はかなり潜在していることが明らかに。
□ NIPPON DATA 80 ・・ 2005年夏に日本動脈硬化学会が発表した、一般日本人対象の生活習慣病とその予後を分析した調査。1980年から14年も追跡。
・ 総コレステロール260mg/dl以上になると一気に総死亡リスク大
・ 全癌・肝臓癌のリスクは総コレステロール値が低いほど高い(低く下げるのがいけない、という意味でなくて、癌の場合栄養状態が悪化しているからという結果的な意味だろう)
・ PCI後のACS患者に対して積極的にLDL-Cを下げた。69mg/dl以下まで徹底的に下げた群では冠動脈内のプラーク(血栓)がいずれも縮小した(アイバスで確認)。
□ NMP22 ・・ NuMA蛋白(細胞分裂のとき出現する蛋白の1つ)の一種で、癌細胞に多めに発現する。尿中NMP22は尿路上皮癌の補助診断として有用。膀胱癌では尿中細胞診より陽性率が高いとの報告あり。膀胱鏡検査を検討する前に確認しておきたい。
□ no change ・・ 患者が安定しているときにカルテによく記載される表現。
□ non-dipper(ノン・ディッパー) ・・ 血圧は昼間上がって夜間は下がるのが常。高血圧でもそのパターンがいちおう守られているのがdipper型で、夜間でも血圧が高いのがnon-dipper。夜間の血圧上昇は脳卒中・心筋梗塞との関連が明らかなため、non-dipperは明らかに心血管病が発生しやすい。
□ NSAID=エヌセイド=非ステロイド性抗炎症剤 ・・ 痛み止めとして使われることが多い。代表がアスピリン。アメリカでは薬局で買える。『ダイハード3』でブルース・ウィリス、『マイ・ボディガード』でデンゼルワシントンが何度も飲んでいた。しかし慢性使用は胃潰瘍と腎障害に注意。この薬剤は痛み止め以外にも、将来は発癌予防、アルツハイマー病予防への応用が期待されている。
□ NSAID潰瘍
NSAIDによる胃・十二指腸潰瘍。つまり副作用。日本の統計では長期投与により胃潰瘍で15.5%、十二指腸潰瘍1.9%の発見率らしい。
診断されれば直ちにNSAIDを中止だが、どしても中止できない理由があれば、PPIあるいはPG製剤により治療を行う。なおピロリ除菌によってNSAID潰瘍を予防できるというデータはない。
副作用発現の機序に「dual insult hypothesis」という仮説があり、それによると2つの機序がある。
? primary insult ・・ 胃酸によりNSAIDが細胞膜透過性を獲得し、細胞内に蓄積されて代謝障害を起こし、粘膜上皮を破綻させる。
? secondary insult ・・ 内因性PG(プロスタグランジン)の抑制・・・正確にはPG合成酵素であるCOX(シクロオキシゲナーゼ)阻害により粘膜防御機構を破綻させる。
※ PGは消化管の細胞の粘液産生や微小循環に促進的に働く物質。
■ NVAF=nonvalvular atrial fibrillation=非弁膜症性心房細動
脳梗塞のうちの心原性塞栓の50%であり、脳梗塞患者の15%はNVAFに起因する。無治療のままだと年間2-5%の頻度で塞栓症を合併する。洞調律の群と比較するとリスクは5倍に膨れ上がる。実際、NVAF患者の3割は脳塞栓を起こす。
予防のためにアスピリン、ワーファリンの投与が行われる。
欧米ガイドラインでは高リスク群を高血圧、心不全、塞栓症既往と定義、本邦ガイドラインではさらに糖尿病、冠動脈疾患を加えている。欧米ガイドラインで、低リスク群にはアスピリン325mg/day(量としては多い)。この低リスク群のうちlone af(孤発性心房細動)では本邦では治療不要、とある。
塞栓の危険性評価に<CHADS2スコア>があり、
・ 脳梗塞・TIA既往あり → 2点
・ 75歳以上 → 1点
・ うっ血性心不全あり → 1点
・ 高血圧あり → 1点
・ 糖尿病あり → 1点
この点数が高いほど塞栓症の危険性が増す。これらリスク有の例では無い群に比べてD-ダイマー値が有意に高い(線溶系亢進するってことは血栓あることの反映)。一方リスク無いNVAFでは線溶系はそれほど亢進してなく、この場合積極的な抗凝固が必要ない理由となる(でもアスピリン投与することがある)。
なお欧米で高リスク群に投与されるワーファリンの効きの目安としてはPT-INR 2.0-3.0とキツめあるが、本邦75歳以上では1.6-2.6と控えめなのも異なるところ(70歳以上ではINR 2.2を越えると出血の合併症が増え、特に2.6以上で急激にリスクが増す)。75歳未満では米国同様のINR 2.0-3.0を推奨。
□ obesity(オベスィティー) ・・ 肥満。日本ではBMI 25kg/m2以上をさす。うち8-9割は内分泌疾患を伴わない、過食・運動不足による<単純性肥満>。
□ OMI=陳旧性心筋梗塞 ・・ 心筋梗塞を起こして1ヶ月以上経ったもの。油断すると心不全を合併する。
□ OT=作業療法士
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