■ SIADH=バゾプレシン(ADH)不適合分泌症候群=バゾプレシン分泌過剰症

 低ナトリウム血症の原因の1つ(頻度は全体の1/3ともいわれている)。本来、脳の視床下部で産生されるADH(抗利尿ホルモン)が同部位、あるいは異所性に過剰分泌されるために起こる。

 背景に基礎疾患があるはずで、悪性腫瘍(肺小細胞癌による異所性産生が最多)・中枢神経疾患(脳幹部ニューロンの調節障害により)・肺(肺炎やCOPDなどの呼吸不全により左心房の圧受容体が刺激され迷走神経経由でADH分泌抑制解除)の疾患が多い。薬剤性では抗癌剤のビンクリスチン、シクロフォスファミドがある。

 症状は低ナトリウムによるものが主体で、ナトリウム濃度が120を切ると消化器症状など、110切ると痙攣・意識障害となり致命的。この病態での患者の体液量そのものは増加しているが軽度であり、病態自体が完成すると尿中ナトリウム排泄によって体液量の増大はむしろなくなる。外観としての浮腫はみられないのが特徴。

 治療の基本は水分制限(1日800-1000cc)と基礎疾患の治療。薬剤ではデメクロサイクリンが第一選択で、尿細管へのADH作用に拮抗し水の排泄を促進する。あとフロセミドも有効だが水の出しすぎでナトリウムも失いのに注意。ナトリウムは食塩相当で1日10g以上は補給する。

 ナトリウムの急速な補正は橋中心髄鞘崩壊=central pontine myelinolysis=CPMなどの浸透圧性脱髄症候群を合併する危険がある。実際の補正は前日比10mEq/lを超えない濃度上昇を目安に行う。初期補正到達目標値も125mEq/l程度にとどめる。

※ 「フィズリン」というバゾプレシンの経口剤が2006年7月認可。今のところ適応が<異所性バゾプレシン産性腫瘍によるSIADH>のみだが今後SIADH全体の適応承認が期待されている。

□ Sicilian Gambit ・・ 抗不整脈剤の選択においては従来Vaughan Williams分類を参考に治療がされてきたが、CAST試験(Ic薬による予後↓)を受けてその意義(経験的な分類であること)そのものが疑問視され(つまり過去の経験蓄積が否定的とされ)、欧米の専門家によって作り直された分類。分類の特徴としては、病態生理学的アプローチ・・発生機序→成立条件→受攻性因子(最も治療に適した部分)を特定→標的分子(治療のターゲットになる部分を特定)→薬剤選択というステップをたどる。このプロセスは一覧表の活用によって実行される。もっと根本的な原因(カテコラミンやホルモンのレベル)にまでさかのぼった視点で治療を行うという観点(アップストリームアプローチ)ももつ。詳細は日本循環器学会雑誌にて(ガイドライン2004年版)。

□ sigmoid septum(シグモイド セプトゥム) ・・ S字状中隔。心室中隔基部が内側に張り出し、中隔がS字状にみえる。高血圧・加齢的な所見で病的意義は通常ないが、まれに左室流出路を狭窄させるタイプもあるという。

□ SIRIUS試験 ・・ 従来型ステントと薬剤溶出ステント=DESとの予後比較試験。結果→DESで優れた改善率を示したものの、試験開始3年後の予後については改善のデータは出せなかった。自己満足の域をまだ出ていないということか。

□ SIRS=systemic inflammatory response syndrome=全身性炎症反応症候群 ・・ 種々の侵襲(感染など)によって体内で引き起こされるメディエータ(サイトカインなどの情報伝達物質)産生・放出。携帯の電波があちこち飛び交っているような状態。SIRSはつまり「高サイトカイン血症」の状態。

□ sliding hernia(スライディング・ヘルニア)=滑脱型ヘルニア ・・ 食道裂孔ヘルニア(胃が食道のほうへ引っ張られる)の中で最も多い(9割)タイプ。胃酸が逆流して逆流性食道炎を起こすことあり。食道裂孔ヘルニアは高齢者、経産婦に多く、食後の消化器症状が出現し仰臥位で増強する。

□ SLE(治療)
・ 活動性が高くなければPSL換算0.1-0.3mg/kg/dayで投与するが、活動性高く重症臓器病変を伴う場合は1.0mg/kg/dayまで増量する。
 ステロイドパルスは生命予後を脅かす病態(ARDSやARFなど)に限り考慮する。
・ 活動性高く重症臓器病変を伴う場合はそれだけでなく免疫抑制剤も積極的に併用する。シクロフォスファミド・アザチオプリンは活性化リンパ球の細胞周期を制御する。
・ 重症臓器病変の中でもより炎症が激しい血管炎、ループス腎炎、中枢神経性ループス、間質性肺炎に対してはシクロフォスファミドパルス療法→シクロフォスファミドあるいはアザチオプリン内服維持が適応。
・ シクロスポリン、タクロリムスは薬剤(たとえば長期ステロイド)耐性の改善作用を有する。併用による効果を期待する。
・ 生物学的製剤<CD20抗体療法> ・・ B細胞の表面に特異的に発現するCD20陽性抗原に対する、抗体による治療。H15年9月よりCD20陽性リンパ腫に適応となる(物質名リツキシマブ。商品名リツキサン)。臓器病変合併のSLEへの応用(5例での検討)でも優秀な成績(いずれも数ヶ月で活動性をゼロまでもっていった)をあげており(2005年)今後臨床試験が予定されている。

□ SLX ・・ 肺腺癌の腫瘍マーカー。CEAと並んで測定される。

□ Silent Myocardial Ischemia=SMI=無症候性心筋虚血 ・・ 糖尿病・高齢者に多い。なので症状なくとも定期的な心電図・BNPなどのスクリーニング検査は欠かせない。

□ SP-A , SP-D ・・ 主に?型肺胞上皮細胞より分泌され、免疫調節に役立つ。臨床では肺線維症など多彩な肺病変で上昇をみることがあり補助診断的に測定される。

□ SpO2 ・・ 動脈血酸素飽和度。つまり動脈の中の酸素の濃度。96%以上がおおまかな正常値。90%を切ってると特に急を要する。患者の指先によく付いている、あれ。別名「サチレーション」あるいは「サチュレーション」。

□ SSRI ・・ 選択的セロトニン再取り込み阻害剤。抗うつ剤として使用。代表がパキシル、ルボックス。後者は強迫性障害も適応。うつでは神経間のセロトニン神経伝達が低下している。神経間のセロトニン濃度を高めて、この伝達を促進する。抗不安薬が効かない場合、試みる価値がある。

■ SSRI離脱症候群 ・・ SSRIを1か月服用後、中止または減量したときに出現しうる、めまい・不眠・嘔気・嘔吐・焦燥・頭痛などの症状(詳しくはBlackらによる診断基準を)。なお症状は再服用によって迅速に改善する特徴がある(なので指導しておく必要あり)。

□ SSS ・・ 洞機能不全症候群=洞不全症候群 ・・ 心臓の脈の出発点が怠けた状態。心臓の電気刺激が出ないから脈が出ず、全体的に遅くなったりする。また逆に刺激出しすぎて頻脈になったりする。治療はペースメーカーで。「エスエスエス」と呼ぶので間違いないが、「スリーエス」などとも呼ばれる。

□ ST ・・ 2つある。
? 心電図の虚血診断の部分。
  上昇 → 早期再分極、心筋梗塞、異型狭心症、心膜炎、心筋炎など
  低下 → 労作性狭心症、貧血、ジギタリス中毒など
? 言語聴覚士 ・・ 言語リハビリしてくれる人。需要が大きいが供給が少ない。

□ STA-MCAバイパス術=浅側頭動脈ー中大脳動脈バイパス術 ・・ 内頸動脈あるいは中大脳動脈本幹の閉塞・高度狭窄に対して行われる。脳梗塞(血行力学的な脳梗塞)に対する脳血管バイパス術の有効性を検討する多施設間の共同研究(JET study:Japan EC-IC bypass study)において、脳血管バイパス手術が(投薬のみによる内科治療に比して)脳梗塞再発をよりよく予防することが証明された。その後より本手術が積極的に行われるようになった。現在はより軽症例に対する治療指針を確立すべく<JET 2> が進行中。

□ stable=ステーブル ・・ 安定している状態。カルテの医師記載欄でよく見かける。

□ StageIIIB ・・ 肺癌の場合、多くは片肺の肺癌+それによる胸水貯留を指す。通常は管経由による持続排液(ドレナージ)と化学療法で対処する。

□ SVPC=APC=上室性期外収縮

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