「すんません!」「おはよう」「ざいます」「はよう」「ざいます!」

 病院の設計上、患者待合室の前を横切る。痛々しい視線が突き刺さる。9時をもう15分は上回っている。

 内科のもう1診では大学からの派遣が1人。彼は再診専門。しかし再診のほとんどは自分希望だ。そりゃ週1回の先生より常勤に受診したいのは当然だ。で結局時間もたてば、<もうそこでいいから>と徐々に非常勤へと流れていくのだが。

 再診外来の島、というひとつ年下の男は・・・ガニーズ同様どことなくデリカシーがなくガサツな奴だった。以前、共に戦ったことがある。

「島。すまんな!」
 ちょっと覗くと彼は・・・小説を読んでいる。

「・・・・・」
「すげえ集中してやがる・・・!」

 机に座り、横のオークナースに一礼。
「じゃ!ネクスト!」

 80歳女性。体重が120kgほどある。ゆっくりとした足取りで。糖尿病ありインスリン拒否。来る時間がマチマチで、主治医が固定してなかった。これは良くない。整形で腰椎圧迫骨折あり。

「あ〜やっとやっと・・・日が暮れるかと」
「どうも。では・・・」
 診察。カルテは整形のじじい先生の字。

 読めない。

「えっと・・・整形では特に何か」
「カルテに書いとるでしょ」
「(わからん・・・)」

「どこも、異常ないです」
「両脚が腫れていると思いますが・・」光沢、指によるへこみ。
「ああ、これ最近ですなあ。特に」
「採血はしてるんだな・・・」

 整形のじじい先生が採血したとこによると、腎機能がやや低下、BNPも一応測定してるが80程度(やや高いが)。

「変形性の膝関節症も関係あるかもだが。腫れは大腿部から下までずっと。左右差は・・・ハッキリせんな」
横を向くと、オークナースはボケッとつっ立っている。

「おい」
「!はい?」
「手伝え!」
「はい」

 脱がせた服を着る介助をさせ・・・僕はカルテに書き綴った。

「ふだんは何を?」
「テレビばっか見ております」
「どこで?」
「家で」
「そこのどこで?」
「部屋で」
「く・・座って?」
「はい」ばあさんは床に座ろうとした。
「ちょっ?ごめんごめん・・・座りこんでテレビ見てる?」
「ソファに腰かけてそのまま」
「座ったままずっとか・・・」

 失禁がよくあるそうで、オムツ使用。トイレに行く必要がない。するとけっこう長い間・・・

「ナース・これの採血をこちらで。Dダイマー、TAT・・・ほい!」
「ブヒ!」
「結果はあす!」

 ばあさんは、ゆっくりズン、ズンと退室していった。消毒瓶の水平線が波打つ。

 医事課が、心なく積み重ねるカルテ。

「田中くん。落ちるだろ?」
「あ、持っときます!」上から手をかざす。
「あのな・・・」
「頑張りましょう先生!」
「もう1診にもっと回してくれよ・・・あっちはヒマなんだし」
「怒るんですよあの先生」
「俺にシワ寄せは困るんだよ!おい次呼ばないか!」

37歳男性。高熱。

「インフルエンザ、調べるか!」
「ええーっ!」
「そんなに驚くか・・・」

 綿棒を鼻の奥へ・・・ゴシゴシ前後に。

「うおっと」思わずのけぞった。巨大なハナ○○がボコッと!

「ふへ!くしょい!」
「うわっ!」鼻水を浴びた。オークは奥へ逃げた。
「あ〜くしゃみ出た!プルプル!びっくりした!」
「こっちもや・・・」

結果は陰性。

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