次は初診23歳男性。2メートルくらいある。丸坊主で不機嫌っぽい。

「入院させてくださいや!おれもうしんどいねん!」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!」
バイタル、診察。別に緊急性はなさそうだが・・。

「これは・・ペースメーカーが入ってる?」
左胸の表面、ポコンと盛り上がる。
「これはどこで?」

「北摂の真珠会病院。ここのライバルやってな。松田すこやかクリニックの紹介でね!」

どある・・・またあそこか。ホントの診断なのか・・・?

「入院してた?」
「わけわからんっすよ。真珠会に入院してペースメーカーを入れられて。半年したら、もう出て行けって」
「・・・・・」

外来カルテ表紙の右上は<0>。若くて生活保護・・の割に歩行はふつうのようだ。仕事ができないような印象じゃないが。

「入院がどうとかいう前に、まず一通りの検査を」
「うっそ!入院だよ入院!」
「アカンって!」

 なんとか廊下へ。車椅子で検査へ。

 一方、隣の島は罵声に手こずっていた。しかしそれもおとなしくなった。

「は〜。ふ〜」
真っ赤になった顔に手をかざし、彼は指示を書いていた。

 数人診たあと、僕は椅子をずっと後ずさって声でうかがった。

「何、叫んでたんだ?」
「あ。入院です。TIA」
「一過性の・・?頭部CTは何も?」
「CTはあとで」
「CTもとらずに、何で診断できんだよ?」
「もう任せましたから!医長先生通して主治医は決まったんです!」
「誰だ?」
「先生」彼は僕を指さした。

こいつ・・・!

引き続き、事務長がやってきた。相変わらず、人の顔色をうかがうようなナメた表情だ。

「先生!こま・・・あ。おはようございます」
「とって付けたふうに言うな・・・」
「ははっ」
「で?お前が来たってことは・・・かなり無理な相談とみた」
「さようで」
「で?」
「は?」
「はよ言え!」
「さきほど入院がありまして」
「島から聞いた。一過性に意識を」
「事務もうっかりしてました。この中年男性はこれまで色々もめてて」
「ブラックリスト・・?」
「盗みの疑い、セクハラ、暴言、それと転倒もかな」
「最後のは違うだろ?」
「島先生が、入院とさせてしまったみたいで。これまで同じケースで入院しましたが、どれも無症状のまま居座って」
「でも今回、ホントの病気かもしれんし。とりあえず証明しないと」

 島が書いた指示をすべてバツ印し、改めて別の指示。

「ったく・・・!」

 この前の入院はもう4年ほど前・・・僕がここに来る前の話だ。

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