家庭教師の、いや点滴をトライ。

「・・・・・ここかな」
「ぎゃあ!ぎゃあ!」泣く子供。近くで押さえるメンツが僕をうかがう。
「こっち見るな。・・・ここかな?ふん!」
「うぎい!うぎい!」
「違うな・・・ごめん!」失敗だ。

 父親が不信がる。

「先生。まだかな?(小声→)やっぱ大きい病院のちゃんとしたとこでしたほうが」
「まだだよ!でももうすぐ!」
「ホンマかいな・・・」
「・・・・よし!いけた!」

 なんとか入り、採血。引き続き点滴。大汗かいた。
 子供も大人しくなる。

 検査室の女性が結果を。

「ロタウイルス!陽性です!」
「でけえ声で言うな!」
「(ナースら:)ロタロタ!オタオタ!」
「いちいち騒ぐなお前ら!」

 ロタ野郎に、ノロ野郎・・・(意味不明)!

 ナースらはムッとして戻った。

 母親は子供の顔をなでた。

「かわいそうやったね!ひどいことされたね!」
「(どある・・!)」
「もう大丈夫やで!すぐ治るくすり、出してくれるんやって!」
「(言うてないだろが!)」
「で、先生。なんでこうなったんですか?」と言う父親。
「・・・それは」
「・・・・・」
「何かに触った拍子に移った可能性が。おもちゃとか・・・」
「家のおもちゃは、新品でキレイですけど?」父親がムキに。
「いやいや、何も家だけとは限らず・・」
「あわかった。しんちゃんの家や。あそこ汚いよな。母さん」
「(やれやれ・・・)」

 オムツ替えのときの注意などは、ナースら通してさせてもらった。

 事務長のはからいで、病院のあちこち(手すりや便器など)が改めて清掃され始めた。次亜塩素酸ナトリウムで拭いて水拭き。僕らも石けんで手洗い。

「ネクスト!」
「ブヒ。関節の痛み」
「アホ!それは整形だろ!」
「ふしぶしの痛み」
「どある・・ならいい」

 30歳男性。倦怠感、ふしぶしの痛み。高熱。

「インフルエンザだろどうせ・・・」
「インフルエンザです!」
「ちょ、ちょっと待ってよ。検査してから・・・」
「周囲の皆がインフルエンザなんです!なので僕もたたっ・・・!」
「すんませんいきなりメーン!棒で。おいこれ!」

 綿棒を差しだすと、オークナースは・・・足元をボーッと見ている。
 僕は近くの木の物差し(50cm)を横から伸ばし・・・

「どーう!」
「ブヒッ!」驚いたナースのマスクから、アメがこぼれ落ちた。
「何アメなめとんか!マスクは便利よな!間食できて!」

 陰性。

「あれ?陰性だな・・・」
「でも自分はインフルエンザなんです!会社にそう言って休んだんです!」
「・・・・・」
「そ、それって100%の検査じゃないでしょ?」
「ま、ある意味・・」
「責任、取りますから!」

まるでデキ婚する前の青二才だな・・・。

「いいのかな。わかった。症状も合いすぎてるし」
「ありがとうございます!」

 また診断書。

 いったん事務所で休憩。事務長がせっせと病名を打ち込む。

「ユウキ先生。病名多すぎ!」
「いちいち書いてやってんだぞ!」
「それもかえって困るんだよな〜うそうそ!」

「ここの病院も、なんか雰囲気変わってきたよな・・・」
「冬ですからね」
「いやいや。メンバーが入れ替わっただろ。ていうか、妙なのばっか残った。できる奴はスカウトされてしまって。出戻りミチル師長も以前のキレがない。なんか、みんなダルいんだよ。ダルは俺だけかと思っていた」

 事務長は指をポキポキ鳴らした。しかし頭の円形(脱毛)は隠せない。

「ふーっ。そのうち日本全体が、総ダルになるかもですね」

 何か言葉にしたくて、サッとカーテンを開けた。

 ピースをする、そうじのおばちゃん。わざとらしくモップ掃除を再開。

「1億総ダル時代か・・・」

 何を夢見ているんだ・・・オレは。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年5月  >>
27282930123
45678910
11121314151617
18192021222324
25262728293031

お気に入り日記の更新

最新のコメント

この日記について

日記内を検索