サンダル先生R 月曜日 ? 囚人食堂
2007年11月26日 11時台ともなると、施設や開業医からの紹介受診が多くなる。
「なになに紹介状は・・・<腎不全です。お願いします>。どある!これだけかい!」
自己紹介みたいだな・・・。
老人ホーム<ひでぶ園(仮名)>からの紹介。医者が週に2日ほど来る。適宜検査の名目だが、職員の仕事が増えるため通常めったにしない。というか、それが必要なら病院を受診する。
ただ、バイタルだえよければという慣れが災いして、見落とされる病態が多々ある。腎不全も、かなり進行した状態で発見されることが多い。
紹介されたばあさん(90歳)は、クレアチニン6.6mg/dl。カリウムは幸い上がらず。入院。
「こういうケースは、昔からだな・・EBMとか言うとる場合じゃないな。トシ坊みたいに」
「はい?」そのトシ坊が、近くにいた。島と話している。
「トシキ医長。今日はオレ、入院が多い。お願いできるか?」
「僕もシローも手一杯です」
「もう1人、医者がいるだろ!」
「ザッキーですか。彼は・・・」
ザッキーという若手医者がいるが、以前から技術信奉者で・・・それはいいのだが、病棟患者からのクレームが多かった。失言、暴言、無診療。僕らが説教したことがあったが、ブチ切れてケンカになりかかった。それ以来、彼は僕らにあまり口をきかない。
これが大学人事で動く病院なら、医局長に告げ口されて即刻転勤かお叱りなんだが・・・。
ただ、僕らの間では<最後通告>をいつ出すか考えていたほどだった。しかし人手に困ってる事務長にとって、これらはモメゴトにしか過ぎない。
「トシキ。も、ええわ・・俺が診る」
「お願いしましたよ!」
「礼は?」
「えっ?」
「いやいや・・・通じない奴!」
ばあさんを診察。何箇所か打僕の跡が・・・。なるほど、そういう施設かもしれんな。これを見落としてはいけない(入院後に気づくと、どこでどうなったか把握できない)。
インフルエンザもどきの診察を終え、医局へ。
「めし、食うたか〜?」ガラッと戸を開ける。
「じゃ!これで!」早くも身支度した島。
「お帰りか。これから大学で実験か?」
「え。まあ」何か、サッと隠したように見えた。
「ガニーズに言っとけ。ユーバスタード!」
「アホくさ」
「なっおい!」
そのまま彼は帰った。
ソファに、ザッキーが寝ている。僕は彼に<ちゃんとしろ!>と怒鳴ったことがあったが・・・それ以来気まずい。
僕はリモコンのチャンネルをカチカチ変えた。
「・・さんでーす!おおきにおおきに(NHK)」
「なわけですよ〜どう思われます。それはね血液が(思いっきり)」
「そうですね!鍋がおいしい季節だね。そうですね!(いいとも)」
「露天風呂を出た後は、おいしい料理で舌鼓(したづつみ)・・・!(特番)」
「おおっ!うまそうだなあ!あれあれ!」
「うるさいなあ・・・」ザッキーが寝返り。
「今は、寝る時間じゃないよ」
「・・・・・」
「さ、食いに行くか!」
職員食堂へ。大勢で賑わう。しかし雰囲気は刑務所食堂のようだ。囚人のように並ぶ。
ガタイのいかつい兄さんが、旧日本兵みたいな帽子をかぶっている。彼は僕のお皿に目一杯、チキンライスの塊をかぶせた。
「ありがとう」
「お茶で流すなよ〜!」
「げっ」食ってるとこまで見てるのか・・・?
座ると、ミチルが横に座ってきた。
「じゃじゃ〜ん」
「・・・・・」
「もうこれ以上、入院は入れませんので!」
「満床か?もぐもぐ。ずず」
「実質的にはね」
「トシ坊医長を、必ず通しておけよ!げっぷ」
「トラブルメーカー、あれどうすんの?入院させて」
「4年ぶりの?あの人は、島が入院させたんだ!オレじゃない!げっぷ」
「でも主治医は・・」
「医長と島が決めたんだ!なあ、何かあったのか?以前!ふぐふぐ」
「あたしはそりゃ知ってるけど。でも師長になる前だったし・・・若かったし」
「どある。蛇足だ今の」
「なに?」
周囲がシン、となった。それくらい師長というのは周囲から窺われる。
「あたしはこれまでみたいに・・・すぐは怒らないわよ」
「あとがないもんな」とは言えず。
しばらくして、彼女の眼が見つめたのが分かった。
「先生。気をつけてね」
「何に?」
ガタン、と彼女は出ていった。
そして見送りながら・・・思った。
「も、もう食ったとは・・・連邦の師長はバケモノか?」
「なになに紹介状は・・・<腎不全です。お願いします>。どある!これだけかい!」
自己紹介みたいだな・・・。
老人ホーム<ひでぶ園(仮名)>からの紹介。医者が週に2日ほど来る。適宜検査の名目だが、職員の仕事が増えるため通常めったにしない。というか、それが必要なら病院を受診する。
ただ、バイタルだえよければという慣れが災いして、見落とされる病態が多々ある。腎不全も、かなり進行した状態で発見されることが多い。
紹介されたばあさん(90歳)は、クレアチニン6.6mg/dl。カリウムは幸い上がらず。入院。
「こういうケースは、昔からだな・・EBMとか言うとる場合じゃないな。トシ坊みたいに」
「はい?」そのトシ坊が、近くにいた。島と話している。
「トシキ医長。今日はオレ、入院が多い。お願いできるか?」
「僕もシローも手一杯です」
「もう1人、医者がいるだろ!」
「ザッキーですか。彼は・・・」
ザッキーという若手医者がいるが、以前から技術信奉者で・・・それはいいのだが、病棟患者からのクレームが多かった。失言、暴言、無診療。僕らが説教したことがあったが、ブチ切れてケンカになりかかった。それ以来、彼は僕らにあまり口をきかない。
これが大学人事で動く病院なら、医局長に告げ口されて即刻転勤かお叱りなんだが・・・。
ただ、僕らの間では<最後通告>をいつ出すか考えていたほどだった。しかし人手に困ってる事務長にとって、これらはモメゴトにしか過ぎない。
「トシキ。も、ええわ・・俺が診る」
「お願いしましたよ!」
「礼は?」
「えっ?」
「いやいや・・・通じない奴!」
ばあさんを診察。何箇所か打僕の跡が・・・。なるほど、そういう施設かもしれんな。これを見落としてはいけない(入院後に気づくと、どこでどうなったか把握できない)。
インフルエンザもどきの診察を終え、医局へ。
「めし、食うたか〜?」ガラッと戸を開ける。
「じゃ!これで!」早くも身支度した島。
「お帰りか。これから大学で実験か?」
「え。まあ」何か、サッと隠したように見えた。
「ガニーズに言っとけ。ユーバスタード!」
「アホくさ」
「なっおい!」
そのまま彼は帰った。
ソファに、ザッキーが寝ている。僕は彼に<ちゃんとしろ!>と怒鳴ったことがあったが・・・それ以来気まずい。
僕はリモコンのチャンネルをカチカチ変えた。
「・・さんでーす!おおきにおおきに(NHK)」
「なわけですよ〜どう思われます。それはね血液が(思いっきり)」
「そうですね!鍋がおいしい季節だね。そうですね!(いいとも)」
「露天風呂を出た後は、おいしい料理で舌鼓(したづつみ)・・・!(特番)」
「おおっ!うまそうだなあ!あれあれ!」
「うるさいなあ・・・」ザッキーが寝返り。
「今は、寝る時間じゃないよ」
「・・・・・」
「さ、食いに行くか!」
職員食堂へ。大勢で賑わう。しかし雰囲気は刑務所食堂のようだ。囚人のように並ぶ。
ガタイのいかつい兄さんが、旧日本兵みたいな帽子をかぶっている。彼は僕のお皿に目一杯、チキンライスの塊をかぶせた。
「ありがとう」
「お茶で流すなよ〜!」
「げっ」食ってるとこまで見てるのか・・・?
座ると、ミチルが横に座ってきた。
「じゃじゃ〜ん」
「・・・・・」
「もうこれ以上、入院は入れませんので!」
「満床か?もぐもぐ。ずず」
「実質的にはね」
「トシ坊医長を、必ず通しておけよ!げっぷ」
「トラブルメーカー、あれどうすんの?入院させて」
「4年ぶりの?あの人は、島が入院させたんだ!オレじゃない!げっぷ」
「でも主治医は・・」
「医長と島が決めたんだ!なあ、何かあったのか?以前!ふぐふぐ」
「あたしはそりゃ知ってるけど。でも師長になる前だったし・・・若かったし」
「どある。蛇足だ今の」
「なに?」
周囲がシン、となった。それくらい師長というのは周囲から窺われる。
「あたしはこれまでみたいに・・・すぐは怒らないわよ」
「あとがないもんな」とは言えず。
しばらくして、彼女の眼が見つめたのが分かった。
「先生。気をつけてね」
「何に?」
ガタン、と彼女は出ていった。
そして見送りながら・・・思った。
「も、もう食ったとは・・・連邦の師長はバケモノか?」
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