サンダル先生R 月曜日(終) 24 キツい一言
2007年12月12日僕の後ろで、事務長が酒をつぐ。
「まあまあまあ!」
「今日は飲む気分じゃないんだよ!」
「まあまあまあ!」
「そこでもういいストップ!」
「まあまあまあ!今日もいろいろありましたけど!」
「おい!お前な!とうちょう・・」
ミチルが驚いた。
「とう・・何?」
「うう」
「事務長が何かしたの?ちょっと事務長!」
僕は何とかごまかしてあげようと思った。
「とう・・とう・・とうちゃん」
「は?」
「父ちゃん。父がね。今日は当院で人間ドックを受けたいって来たんだよ」
「お父さんが来たの?」
「あ、ああ。でも満床だろ?だから断った」
「ホントは空いてんのに。教えてくれたら」
「げっ・・・」
事務長は無言で去って行った。この2人は付き合っていたが僕は知ってる。事務長の女癖で、彼女が愛想をつかしたことを。
みな野菜とともに、サイコロ型ステーキを各ソースでバラエティを楽しんだ。相次ぐビール注文。明日は仕事のため、ガーリックライスより通常ライスの注文多数。
田中君が立ち上がった。
「ユウキ先生。頑張ってゲットしてください」
「なんで?」
「皆、応援してますから!」
「なに?」
よく見ると・・僕と師長の周囲は距離がある。みなペアができている。
これは・・・どうしたらいいんだ?
「ミチルさん。うちがやっぱり一番だろ?」
「そうね。というか、一番忙しいここが合うわ。時間が過ぎてくし」
「仕事ばかりで自分のこと、やりにくいだろ?」
「実家に帰ったらメシたき女させられるんやで。やっぱ手に職持ってるナースは強いってことよ。30過ぎてるけど」
どある・・・。
「俺も33だしなあ・・・」
「男はええよ。女は子供生まないかんし。アタシも、はよ楽さしてくれる男捕まえな」
「結婚したらこういう仕事は辞めるのか?」
「相手次第やねー。あ〜あ、だれかもらってくれんかな〜も、誰でもええわ〜・・・辞めたいわ、はよ・・・」
結局辞めたいのか・・・。ま、その気持ちも分かる。
「このあと、数人で喫茶店でも行くか!それか俺と・・」
「先生。あかんで」
「な、なに?」
「先生は。パルス療法の患者さんがおるんやから!」
「うぬ・・・」
「家族・本人の希望背負ってるんやで。今日ははよ寝な!」
「うぐう・・」
「明日に備えな!」
きつい一言だった。
ライスも食べ終わり、別の場所へ移動。両方にはオークらが座った。
「ブヒブヒ。進展はどうやねん」
「るさいなほっとけ!」
「今日ははよ寝な!」
「盗み聞きかよあっちいけ!」
熱いコーヒー、冷たいアイスクリームで上アゴがただれそうになる。
「ふう〜食った食った!」
みな、外へ。タクシーで見送られる新人ナース。
「どうもありがとうございました!幸せになります!」
タクシーはブーン、と闇夜のネオンに消えた。
事務長は見届けた。
「ふ〜。寂しいものですね。皆、私たちの前を通り過ぎていく。大丈夫ですか?医長先生」
「うう・・・」医長がうずくまった。
「誰か介抱を。私は用がありますんでこれで!」ダッシュで消えた。
僕は歩み寄った。
「トシ坊。無理に飲んだな?トシ坊!」
「は〜は〜・・・」
「よし!俺が芦屋まで送る!タクシーすまんが!」
ミチルが仕切った。
「あ。あたし神戸方面だから」長身の彼女は余裕で肩をかかえた。
「うっ。でも・・・」
「先生は大阪のど真ん中でしょ?無理があるわ」
「あ、うう・・・・」
さらに神戸方面が2人乗り、タクシーがまた1台去った。
僕とオークナース8人ほどが残された。
高齢ナースが両手をバッと挙げた。
「よっしゃ!次いこか!スポンサーもおることやし!」
「いや、俺。帰るわ・・・」
「振られた?ねえ振られた?」
「誰にじゃ!じゅ、重症の人もいるし」
「はよ帰って寝な!」
「だる!じゃかあし!」
気恥ずかしく、地下道へと逃げ込んだ。
この年齢、この仕事で女にうつつを抜かそうとは思わない。そんなパワーはない・・・。
しかし、<いやそれでも>と思う気持ちは隠せなかった。
地下道は・・カップル限定のファッションショーだった。
「まあまあまあ!」
「今日は飲む気分じゃないんだよ!」
「まあまあまあ!」
「そこでもういいストップ!」
「まあまあまあ!今日もいろいろありましたけど!」
「おい!お前な!とうちょう・・」
ミチルが驚いた。
「とう・・何?」
「うう」
「事務長が何かしたの?ちょっと事務長!」
僕は何とかごまかしてあげようと思った。
「とう・・とう・・とうちゃん」
「は?」
「父ちゃん。父がね。今日は当院で人間ドックを受けたいって来たんだよ」
「お父さんが来たの?」
「あ、ああ。でも満床だろ?だから断った」
「ホントは空いてんのに。教えてくれたら」
「げっ・・・」
事務長は無言で去って行った。この2人は付き合っていたが僕は知ってる。事務長の女癖で、彼女が愛想をつかしたことを。
みな野菜とともに、サイコロ型ステーキを各ソースでバラエティを楽しんだ。相次ぐビール注文。明日は仕事のため、ガーリックライスより通常ライスの注文多数。
田中君が立ち上がった。
「ユウキ先生。頑張ってゲットしてください」
「なんで?」
「皆、応援してますから!」
「なに?」
よく見ると・・僕と師長の周囲は距離がある。みなペアができている。
これは・・・どうしたらいいんだ?
「ミチルさん。うちがやっぱり一番だろ?」
「そうね。というか、一番忙しいここが合うわ。時間が過ぎてくし」
「仕事ばかりで自分のこと、やりにくいだろ?」
「実家に帰ったらメシたき女させられるんやで。やっぱ手に職持ってるナースは強いってことよ。30過ぎてるけど」
どある・・・。
「俺も33だしなあ・・・」
「男はええよ。女は子供生まないかんし。アタシも、はよ楽さしてくれる男捕まえな」
「結婚したらこういう仕事は辞めるのか?」
「相手次第やねー。あ〜あ、だれかもらってくれんかな〜も、誰でもええわ〜・・・辞めたいわ、はよ・・・」
結局辞めたいのか・・・。ま、その気持ちも分かる。
「このあと、数人で喫茶店でも行くか!それか俺と・・」
「先生。あかんで」
「な、なに?」
「先生は。パルス療法の患者さんがおるんやから!」
「うぬ・・・」
「家族・本人の希望背負ってるんやで。今日ははよ寝な!」
「うぐう・・」
「明日に備えな!」
きつい一言だった。
ライスも食べ終わり、別の場所へ移動。両方にはオークらが座った。
「ブヒブヒ。進展はどうやねん」
「るさいなほっとけ!」
「今日ははよ寝な!」
「盗み聞きかよあっちいけ!」
熱いコーヒー、冷たいアイスクリームで上アゴがただれそうになる。
「ふう〜食った食った!」
みな、外へ。タクシーで見送られる新人ナース。
「どうもありがとうございました!幸せになります!」
タクシーはブーン、と闇夜のネオンに消えた。
事務長は見届けた。
「ふ〜。寂しいものですね。皆、私たちの前を通り過ぎていく。大丈夫ですか?医長先生」
「うう・・・」医長がうずくまった。
「誰か介抱を。私は用がありますんでこれで!」ダッシュで消えた。
僕は歩み寄った。
「トシ坊。無理に飲んだな?トシ坊!」
「は〜は〜・・・」
「よし!俺が芦屋まで送る!タクシーすまんが!」
ミチルが仕切った。
「あ。あたし神戸方面だから」長身の彼女は余裕で肩をかかえた。
「うっ。でも・・・」
「先生は大阪のど真ん中でしょ?無理があるわ」
「あ、うう・・・・」
さらに神戸方面が2人乗り、タクシーがまた1台去った。
僕とオークナース8人ほどが残された。
高齢ナースが両手をバッと挙げた。
「よっしゃ!次いこか!スポンサーもおることやし!」
「いや、俺。帰るわ・・・」
「振られた?ねえ振られた?」
「誰にじゃ!じゅ、重症の人もいるし」
「はよ帰って寝な!」
「だる!じゃかあし!」
気恥ずかしく、地下道へと逃げ込んだ。
この年齢、この仕事で女にうつつを抜かそうとは思わない。そんなパワーはない・・・。
しかし、<いやそれでも>と思う気持ちは隠せなかった。
地下道は・・カップル限定のファッションショーだった。
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