サンダル先生R 火曜日 ? 教わる態度
2007年12月17日 詰所は・・・ピロピロというモニター音のみ。じいさんがまた車いすに座っている。昨日は血の池地獄だった。脳梗塞後遺症で今回狭心症。
僕をずっと見つめている。点滴がつってある。
「ごめんなじいさん・・・貧血で退院が延びたんだってな」
看護記録をサラッと見る。
<2時 同室者より苦情あり。詰所へ連行>
毎日こうでは、同室者もたまらんな・・・。
「あ、来たでえ!来た!」
詰所の奥より、中野おばさんナースが1人。化粧が落ちて妖怪のようだ。
「来た来た。ヒーッ(あくび)。はっ!はっ!はっ!はは・・・!」
「どある。どいつもこいつも人前でアクビしやがって!」
「IVH(中心静脈の点滴)ルートを入れてくださった患者さん!」
「先週な。苦労したよあの人は。で?」
「自己抜去!」
「おい!これでもう何度目だ!」
「いち、にい・・・」
「工夫しろよ。工夫を・・・!」
「ここ2日、高熱が出てたんやが。抜いたら熱が下がったでえ!」
「う、うう・・・」
カテーテル経由の熱が、下がったということか。
「ひひ。ケガの功名やな!」
「例えがそりゃないぜ・・・」
「今度はセーケツに処置しまひょー!」
「なにくっ・・・!」
カテーテル挿入部に菌が侵入すれば、突然高熱がみられてくる。突然の高熱はほかにもインフルエンザ、腎盂腎炎、MRSAなどの院内感染。感染症の比重が多い毎冬、院内感染のリスクをどう乗り切るかが課題だ。
「中野さん。ステロイドパルス療法を行った方の記録は・・・」
「血圧は変わらずだったかな・・・190/97mmHg。あ。高かった」
「きちんと見てんのかよきちんと!」僕は机を叩いた。
「血糖は落ち着いとります夜間176mg/dl」
「思ったほどは上がってないか」
「今日の早朝が336」
「普通に言うな!」
「今、測定したんやってのにすぐ怒る先生やな!」
「指示のインスリン、行け!」
「はいな」
おばさんに続き、その肺線維症の方の病室(無菌ベッド)へ。
寝ているが起こさず。背部の聴診を横から。
「酸素もまだ減らせる状態ではない・・というか昨日と著変ない。いい意味か悪い意味と取るか・・・」
「熱は下がっとるかな〜」
中野おばさんが体温計を挟む。
「さんじゅうご、さんじゅうろく・・」
「(シッ!)」
「なな・・・きゅう」
「・・・・・」
「・・・37.1℃!」
部屋を出ると、モニターの前で放射線科医が睨めっこ。
「おはよう」
「お!今日もいろいろ教えてな!」
「じゃ、このモニター波形を読んでみろ」ボタンを押すと紙がスルーと出る。
「ただの頻脈?わし、循環器素人やし」
「おい!」
詰所奥の休憩室まで、彼は追い詰められた。
「将来、内科医のバイトもこなしたいって言ったのはどこの・・」
「そそ。わし。まあ最初は慣れんもんで」
「お膳立てはないんだよ先生。でないとバイトはつとまらんぜ」
「そやね!はいはい!」
僕がこうして怒るのには訳があった。僕はあちこちの病院事務長のコネで、バイトの斡旋を回していた。マージンはもらってない。ただ、そこそこ信頼できる医師を回さなくてはいけないため、そこは責任がある。<どんな医師でもいいから>と言ってくるバイト先もあるが、もしもの事を考えるといい加減な紹介はできない。
この放射線科医も眼科医も以前からの知り合いだが・・・(彼らのように)ある程度経験を積んでからの教育には無理があった。彼らは手技・結論ばかりを知りたがり、そこまで辿りつくまでの過程を大事にしなかった。
この過程というのは<考え方のプロセス>という意味ではなく、あれこれ悩んで鼻水が出て許しを乞うほどの<心の欲する叫び>であった。順調からは学ぶものは少ない。困難の数がいる。しかしキレイに困難は学べない。
しかしこちらも・・・猫の手を借りたいときはある。発想を変えて、やはり彼らに教え続けることにした。
僕をずっと見つめている。点滴がつってある。
「ごめんなじいさん・・・貧血で退院が延びたんだってな」
看護記録をサラッと見る。
<2時 同室者より苦情あり。詰所へ連行>
毎日こうでは、同室者もたまらんな・・・。
「あ、来たでえ!来た!」
詰所の奥より、中野おばさんナースが1人。化粧が落ちて妖怪のようだ。
「来た来た。ヒーッ(あくび)。はっ!はっ!はっ!はは・・・!」
「どある。どいつもこいつも人前でアクビしやがって!」
「IVH(中心静脈の点滴)ルートを入れてくださった患者さん!」
「先週な。苦労したよあの人は。で?」
「自己抜去!」
「おい!これでもう何度目だ!」
「いち、にい・・・」
「工夫しろよ。工夫を・・・!」
「ここ2日、高熱が出てたんやが。抜いたら熱が下がったでえ!」
「う、うう・・・」
カテーテル経由の熱が、下がったということか。
「ひひ。ケガの功名やな!」
「例えがそりゃないぜ・・・」
「今度はセーケツに処置しまひょー!」
「なにくっ・・・!」
カテーテル挿入部に菌が侵入すれば、突然高熱がみられてくる。突然の高熱はほかにもインフルエンザ、腎盂腎炎、MRSAなどの院内感染。感染症の比重が多い毎冬、院内感染のリスクをどう乗り切るかが課題だ。
「中野さん。ステロイドパルス療法を行った方の記録は・・・」
「血圧は変わらずだったかな・・・190/97mmHg。あ。高かった」
「きちんと見てんのかよきちんと!」僕は机を叩いた。
「血糖は落ち着いとります夜間176mg/dl」
「思ったほどは上がってないか」
「今日の早朝が336」
「普通に言うな!」
「今、測定したんやってのにすぐ怒る先生やな!」
「指示のインスリン、行け!」
「はいな」
おばさんに続き、その肺線維症の方の病室(無菌ベッド)へ。
寝ているが起こさず。背部の聴診を横から。
「酸素もまだ減らせる状態ではない・・というか昨日と著変ない。いい意味か悪い意味と取るか・・・」
「熱は下がっとるかな〜」
中野おばさんが体温計を挟む。
「さんじゅうご、さんじゅうろく・・」
「(シッ!)」
「なな・・・きゅう」
「・・・・・」
「・・・37.1℃!」
部屋を出ると、モニターの前で放射線科医が睨めっこ。
「おはよう」
「お!今日もいろいろ教えてな!」
「じゃ、このモニター波形を読んでみろ」ボタンを押すと紙がスルーと出る。
「ただの頻脈?わし、循環器素人やし」
「おい!」
詰所奥の休憩室まで、彼は追い詰められた。
「将来、内科医のバイトもこなしたいって言ったのはどこの・・」
「そそ。わし。まあ最初は慣れんもんで」
「お膳立てはないんだよ先生。でないとバイトはつとまらんぜ」
「そやね!はいはい!」
僕がこうして怒るのには訳があった。僕はあちこちの病院事務長のコネで、バイトの斡旋を回していた。マージンはもらってない。ただ、そこそこ信頼できる医師を回さなくてはいけないため、そこは責任がある。<どんな医師でもいいから>と言ってくるバイト先もあるが、もしもの事を考えるといい加減な紹介はできない。
この放射線科医も眼科医も以前からの知り合いだが・・・(彼らのように)ある程度経験を積んでからの教育には無理があった。彼らは手技・結論ばかりを知りたがり、そこまで辿りつくまでの過程を大事にしなかった。
この過程というのは<考え方のプロセス>という意味ではなく、あれこれ悩んで鼻水が出て許しを乞うほどの<心の欲する叫び>であった。順調からは学ぶものは少ない。困難の数がいる。しかしキレイに困難は学べない。
しかしこちらも・・・猫の手を借りたいときはある。発想を変えて、やはり彼らに教え続けることにした。
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