内視鏡室では、患者さんが横になって待っている。

「では・・・!」

 薄暗い部屋。画像などを見る。カルテの記録。シローの依頼で・・・47歳女性。逆流性食道炎疑い。合併症とかはない、と。

「ブヒ。ブスコは注ってる」
「ブス子?あ、ブスコパンな。ドルミカム、少量準備」

 患者に軽く説明、希釈された鎮静剤ドルミカムがゆっくり注入。
「・・・・・さん。よし。いこ!」
 内視鏡の先をマウスピースの中、めがける。

 右横に、放射線医師(以下、東郷)がひっつく。

「・・・東郷。あとで代わるか?」
「つつ、次でええし」
「・・・ここだな・・・よし!」喉頭を横目に、食道内へ。狭いが柔らかいトンネル。空気で膨らむも縮み、また膨らむ。

「終了前に、もう一度見るが・・・炎症はないな。食道には」
「はいはい」

 大きな胃という名の空洞。しかし今回、教科書通りでない位置関係。変形してる。度重なる潰瘍があったのか。既往ではそうなってるが。PPI(プロトンポンプインヒビター)出現の前は、潰瘍の治療はかなり苦労してた。

 プシュー、プシューと空気を送る。ぜん動が度々起こり、視界が手前に押しやられる。

「ブスコ・・・効き悪かったな」
「ブス子?」
「シッ!」

 十二指腸は正常。胃に戻り出口の手前。反転し、下から上を見上げる。胃角部・・・胃潰瘍好発部位・・・にただれたような潰瘍病変。

「これは・・・ただの潰瘍ではないかもしれん。生検しよう」
「ブヒ!」ナースが手伝う。
「そこで・・閉じて!待て待て・・う〜ん・・はい閉じる!」
「ブヒ!」組織が捕まえられ、手前に持っていく。
「よし!取れた・・だろ?」

生検鉗子の先端が開き、東郷は見入った。
「ん?はいはい!あったあった!」
「結果によってはEMR(内視鏡的粘膜切除術)だな・・・結果待ちだ!」

 終了。伝票記入。そうする間にも、東郷やナースが次の人の前処置。

「58歳女性。膵臓癌のうちの膵頭部癌疑い。膵臓周囲のリンパ節腫脹。MRCPで膵管がやや不整。エラスターゼは・・測定してないじゃないかザッキーのやつ!」

 内視鏡で、転移・浸潤の所見がないかどうか・・・。患者は鎮静剤で眠りかけた。

「東郷。挿入するところ、やれ」
「い、いいよわし」
「やれって。やらなきゃいつまでたっても」
「わし、わし・・・」

臆病にも、東郷は奥の闇へと消えた。

「しょうがない奴・・・」

 胃までは、問題はなさそうだ・・・。問題は・・・。

 十二指腸の入口へ。球部といって円めの部屋。
「これは・・・やや狭窄になってる」

 癌による圧排で、内腔が狭まっている。今後、狭窄が進行すれば食事が通らない。

「場合によってはオペで物理的に対処しないと・・・」

 胃で一部領域に凹凸。インジゴカルミン染色では・・どうやら問題はなさそうだ。

「次!」

 近くで用意されてる超音波。人手の関係で、胃カメラ・超音波も両方担当。

 この午前中だけで胃内視鏡8名。腹部超音波7名。心臓超音波7名。
 その間トレッドミルなども。

 当然、昼までに終わるわけもない。

 こちらにも<十分な朝食>という前処置が必要だ。

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