60歳、C型慢性肝炎というより肝硬変に近い。

 ヌルヌルとしたゼリーが腹部へ。

「じゃ、そのまま・・・はい、息吸って〜はいて〜・・止めて」
こんな風に、ルーチン通りに観察。
「左葉は・・よしと。右葉は・・・」

 肝臓は委縮ぎみ。腹水はなし。側副血行路というほどでもなし。
 TAE(動脈塞栓)の跡があるが、新規の病変は見当たらず。

さきほどの画面に戻る。
「左葉はともかく、大動脈径が大きめだ」
カラーで観察。さらに下をたどる。
「追えないが、アネウリズム(動脈瘤)あるんじゃないか?」

シャーカステンのフィルムは腹部のみのCT。
「骨盤部も撮らなきゃな・・・と指示!」
聴診器で雑音・・はなし。足背の動脈は両方とも・・触れる。

 こんな風に、主要な部分の病気が疑われれば、関心を末梢にまで及ぼさないといけない。

「ついでに心臓は・・・」
腹部が名目なので、参考までにと大ざっぱに確認。

「・・・・循環器科も受診だな」
消化器外科の患者だが、うちの内科にも通すことに。
「トシ坊。頼んだ」

 椅子から飛び上がり、内視鏡。
東郷が、挿入を試みている。

「・・・・まだか?」
「っと。っと」
「なんだよ?どこがどこか分かってんのか」
「待てい。もうすぐ!」
「・・・3・・2・・・1」
「あれ?」
「かわれって。かわれ!」

イラつき、代わる。

「ここだよ。ここを目指す」
「あ。なんやそうか!」
「どある・・・」

 64歳女性関節リウマチで整形じじいの患者。上腹部痛が度々。

「整形のじいさんは、胆石だろうとか言ってるが・・・」
「わし見たよCT。石はない!」
「だからこれで見てんだよ・・やはり。見ろ!NSAID(エヌセイド)潰瘍だ。多発性」

出血はないが、黄色くただれた領域が何か所も。

「入院だなこれは・・・無断外泊の人はとっとと退院してもらおっと!」
「外泊は男性だろが?この人は女性で」
「例えばだよ。例えば!」

 終了。近くで心臓超音波のスタンバイ。途中、東郷が通せんぼ。

「どけよ?オバサン自転車みたいに!」
「先生!もうちとゆっくり移動せにゃ!俺覚えられん」
「俺も、いつまでたっても終えられん」

 椅子に座り、右手で胃カメラの伝票を書きつつ左手で超音波。
「59歳男性。拡張型心筋症。心筋炎のエピソードがあり以後そのような形態になってる」

 ピー、ピーと白黒記録が終わりカラーへ。ドプラ。圧測定。聴診も。肝臓の観察も。
「両心不全だがそれなり。肝臓へのうっ血もあるが。東郷・・・おい?」

いない。

「も、ええ。伝票記入、と・・・よし!はい終わりましたよ!」

立ち上がり、妙な浮遊感から立ち直り・・・・

ちょっと間があった。内視鏡の準備。患者はまだ外。

「さ!さ!」ピョンピョンと小さく飛び上がる。
「ん?ん?」東郷も僕に合わせる。
「どこいた?ついてろ!ほっ!ほっ!」飛び上がり続ける。
「ほ!ほ!」

実は、中断による眠気を防ぐためやっていた。

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