サンダル先生R 火曜日 ? 午後の検査
2007年12月24日午後2時。病棟を自主回診。合間、詰所内の各ドクターと意見の交流。
「今日のレントゲン。肺線維症の方の」シャーカステンに胸部写真。
「わ。影、よけい増えてんのとちゃいます?」ザッキーが見上げる。
「白いとこは増えてるように見えるが・・・体位が撮る時に微妙に違うから」
「効かんのちゃうんかな〜」
嫌な医者だ・・でも大学で山ほど見てきた。
ザッキーはカルテをバスンとたたんだ。彼は受け持ちをかなり外されており・・病棟での仕事は少なかった。
「シロー。どうだ?」シローに見せる。
「ええ・・・熱はガタッと下がってるようですが・・それだけでは判定できませんね」
「熱も大事だが、呼吸状態が良くならないと実感が」
「酸素データは・・・厳しいのが続いてますね。酸素は6リッター」
10ある目盛の6。
「酸素マスクで無理なら、リザーバーの大きなマスク。挿管は避けたい」
「いったん挿管したら厳しいでしょう・・・」
「2次感染の機会も作りたくないしな・・・」
正直、まともに(こだわりなくスタンダードに)相談できるのはこの男だけだ。
写真を前に、とめどなく会話の水が流れる。1滴、1滴という風に。
僕は椅子から両足を前に、ダンと叩きつけた。
「もうすぐだな・・・気管支鏡、行ってくる!」
「自分が!」シローもやってきた。
1階の透視室。
「じゃ頼む。細胞診でマリグナントセル(悪性細胞)が出た。でも組織型がハッキリせん。CTで影はハッキリせんのだが」
「痰を検査したキッカケは?」シローはマイ内視鏡を取り出し、動きを確認。
「ヘビースモーカー。俺は痰の培養するついでに、細胞診も出してる」
「親切ですね・・・すみませーん」
本来そういう患者にはすべきだと思うが、保険で目をつけられそうだし擬陽性の問題もあろう。
シローによる前処置。局所麻酔のスプレー。50代男性が苦そうに。
オークナースがモニターをつける。
「ブヒブヒ」
「静かにやらんか静かに!」と、静かに怒鳴った。
「ブヒ!」吸引の音がシュー、と響く。そのチューブを気管支鏡へ。
CTを天にかざし、シローはカメラを両手で持った。
「今日、トシキ医長からの検査のついででSq(扁平上皮癌)疑いが見つかったんですよね?その人とは・・」
「いや。また別人だ。医長からの紹介は肺門に大きな影があってな」
「この症例も診断はそうかもしれませんね。ヘビースモーカーだし」
「ああ・・!」
気管分岐部。は問題なし。その次の分岐が問題だ。
僕らは同時にツバを飲んだ。
「(同時)あ・・・」
黒ずんだ病変が見つかった。出血はない。シローは今のうちにと、他の部位を確認。
「ここも、ない・・・ここも、ない」
「おいナース。生検の準備は?」
「ブヒ?」
「聞いてろ!」
怒鳴りながら、シローに渡す針なし注射器。中には局所麻酔液。ポン、ポンと次々に注入。反射の咳は抑えられ、観察は容易になる。
チュイーン。カシャチュイーン。写真を記録する音。
「おいナース!鉗子こっちへ」シローの横で、僕が催促。
「鉗子ですか?」いま一つのナース。
「耳、そうじしとけ!」
奪って、カメラ横よりシュシュシュ、シュシュ、シュ・・・と挿入。
シローは目標を設定。
「では、見せてください」
「透視、出せ!おい早くしろ!」
患者の呼吸に合わせ、ポチっとつかむ。
素早くシュシューンと引き戻される鉗子。
先っぽを開いて見る僕。
「よし、あったあった!おい!さわるな!」
オークナースが手を差し出していた。
「意味分かってんのか?おまえ・・・ったく」
「ブヒ」
こうして何度か生検し、出血は少量におさえ終了。
僕らは防護服を脱いだ。
「ふう、お疲れシロー!」
「整形から術前評価(心機能)頼まれた患者、診てきます!」
「じじいの依頼?」
「ええ。オペ前の患者。オペが明日っていうから」
「もっと前に相談しろよな・・・でもそれで機能が悪かったら?」
「いつものように、断行するでしょうけど」
「やれやれ・・・」
タオルで顔を拭き、シローは出て行った。
僕は気管支鏡を洗浄。さっき撮影の写真が次々に出てくる。
「・・・・・」
ハードディスクの中身も確認。
オークナースはメモを持って立っている。
「ブヒ。病棟より報告です」
「なに?」
「重症のステロイド患者さんが悪寒で調子が悪いとぶつぶつ・・」
「他のドクターが対処してくれたのかな。で?」
「カテーテルで何人かの先生がカテ室かなでも詰所にはいるみたいかな」
「あんなあ。あんた日本語で話せよ。もうイライラする・・も、ええ!出る!」
上り階段でいったん転倒。
「たたりじゃ・・・」
脚を引きずりながら、詰所へリターンズ。
「今日のレントゲン。肺線維症の方の」シャーカステンに胸部写真。
「わ。影、よけい増えてんのとちゃいます?」ザッキーが見上げる。
「白いとこは増えてるように見えるが・・・体位が撮る時に微妙に違うから」
「効かんのちゃうんかな〜」
嫌な医者だ・・でも大学で山ほど見てきた。
ザッキーはカルテをバスンとたたんだ。彼は受け持ちをかなり外されており・・病棟での仕事は少なかった。
「シロー。どうだ?」シローに見せる。
「ええ・・・熱はガタッと下がってるようですが・・それだけでは判定できませんね」
「熱も大事だが、呼吸状態が良くならないと実感が」
「酸素データは・・・厳しいのが続いてますね。酸素は6リッター」
10ある目盛の6。
「酸素マスクで無理なら、リザーバーの大きなマスク。挿管は避けたい」
「いったん挿管したら厳しいでしょう・・・」
「2次感染の機会も作りたくないしな・・・」
正直、まともに(こだわりなくスタンダードに)相談できるのはこの男だけだ。
写真を前に、とめどなく会話の水が流れる。1滴、1滴という風に。
僕は椅子から両足を前に、ダンと叩きつけた。
「もうすぐだな・・・気管支鏡、行ってくる!」
「自分が!」シローもやってきた。
1階の透視室。
「じゃ頼む。細胞診でマリグナントセル(悪性細胞)が出た。でも組織型がハッキリせん。CTで影はハッキリせんのだが」
「痰を検査したキッカケは?」シローはマイ内視鏡を取り出し、動きを確認。
「ヘビースモーカー。俺は痰の培養するついでに、細胞診も出してる」
「親切ですね・・・すみませーん」
本来そういう患者にはすべきだと思うが、保険で目をつけられそうだし擬陽性の問題もあろう。
シローによる前処置。局所麻酔のスプレー。50代男性が苦そうに。
オークナースがモニターをつける。
「ブヒブヒ」
「静かにやらんか静かに!」と、静かに怒鳴った。
「ブヒ!」吸引の音がシュー、と響く。そのチューブを気管支鏡へ。
CTを天にかざし、シローはカメラを両手で持った。
「今日、トシキ医長からの検査のついででSq(扁平上皮癌)疑いが見つかったんですよね?その人とは・・」
「いや。また別人だ。医長からの紹介は肺門に大きな影があってな」
「この症例も診断はそうかもしれませんね。ヘビースモーカーだし」
「ああ・・!」
気管分岐部。は問題なし。その次の分岐が問題だ。
僕らは同時にツバを飲んだ。
「(同時)あ・・・」
黒ずんだ病変が見つかった。出血はない。シローは今のうちにと、他の部位を確認。
「ここも、ない・・・ここも、ない」
「おいナース。生検の準備は?」
「ブヒ?」
「聞いてろ!」
怒鳴りながら、シローに渡す針なし注射器。中には局所麻酔液。ポン、ポンと次々に注入。反射の咳は抑えられ、観察は容易になる。
チュイーン。カシャチュイーン。写真を記録する音。
「おいナース!鉗子こっちへ」シローの横で、僕が催促。
「鉗子ですか?」いま一つのナース。
「耳、そうじしとけ!」
奪って、カメラ横よりシュシュシュ、シュシュ、シュ・・・と挿入。
シローは目標を設定。
「では、見せてください」
「透視、出せ!おい早くしろ!」
患者の呼吸に合わせ、ポチっとつかむ。
素早くシュシューンと引き戻される鉗子。
先っぽを開いて見る僕。
「よし、あったあった!おい!さわるな!」
オークナースが手を差し出していた。
「意味分かってんのか?おまえ・・・ったく」
「ブヒ」
こうして何度か生検し、出血は少量におさえ終了。
僕らは防護服を脱いだ。
「ふう、お疲れシロー!」
「整形から術前評価(心機能)頼まれた患者、診てきます!」
「じじいの依頼?」
「ええ。オペ前の患者。オペが明日っていうから」
「もっと前に相談しろよな・・・でもそれで機能が悪かったら?」
「いつものように、断行するでしょうけど」
「やれやれ・・・」
タオルで顔を拭き、シローは出て行った。
僕は気管支鏡を洗浄。さっき撮影の写真が次々に出てくる。
「・・・・・」
ハードディスクの中身も確認。
オークナースはメモを持って立っている。
「ブヒ。病棟より報告です」
「なに?」
「重症のステロイド患者さんが悪寒で調子が悪いとぶつぶつ・・」
「他のドクターが対処してくれたのかな。で?」
「カテーテルで何人かの先生がカテ室かなでも詰所にはいるみたいかな」
「あんなあ。あんた日本語で話せよ。もうイライラする・・も、ええ!出る!」
上り階段でいったん転倒。
「たたりじゃ・・・」
脚を引きずりながら、詰所へリターンズ。
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