部長先生。いきなり姿勢を正します。事情を既に周知してるかのような、B先生。

「あのー。それでですねー。大学医局のほうが。今月をもちまして・・・」

 目をつむるスタッフたち。どうやらみな、事情を知っていたようです。A先生はもちろん、知りません。

「大学の諸般の事情によりー、今後のスタッフの補充は当院にて行うことになりましたー。宜しくおねがいいたしまーす」

 手を目にかざす、中堅医師。言葉もありません。

 中堅医師インタビュー(背後にデス・スター<再建中>)

「頼りないの一言ですね。大学はまあ存亡がかかっているので仕方ないですが・・・コネがないとことか、置き去りにされちゃうんですよね。うちの部長?うん。人って見てたら分かるでしょ?結局年取ったら、上には逆らえないんですよね・・誰だって、自分が大事ですもん」

 何より患者さまの立場を守ることで定評のある中堅医師。しかし今日はかなり感情的な言葉が飛び出します。

「僕らは医療をやる側なんで、ただ従うしかないっていうか。逆らえば非国民扱いですからね。反抗しながら医療のパワーなんて出せませんし。ええ。自分が潰れるだけですよ」

 どうりで、どこか冷めた雰囲気の中堅医師。同情すべきものがあります。

 A先生インタビュー

「ドウシテイシャニナッタカ?ッテキカレルトー・・・ドウシテカッテ・・ソレハイマ、ムシロジブンニキキタイデスネー。コレカラソノリユウヲサガス。ッテイウカー。ジブンサガシナンデスカネ。シゴトッテイウノハ」

 A先生、早くも一皮むけた感じ。

「イリョウガシンポシテモー、ウツワダケツクッテ、アトハハイドウゾッテ、カンジナンデスヨネ。ムセキニンダゾオマエ、ッテイウカ。ウエノツゴウバッカリ、ユウセンサレテ、シタッパハオタガイ、キズヲナメアエッテ・・イウコトデスヨネ。イマノヨノナカ、ソノママ・・・ハンエイシテマスネ」
「(スタッフ)来月から、当直も増えるし・・・」
「コレカラナンデ。タオレルマデヤルノッテ、ドウイウモノナノカナッテ。ソウイウキョウミ、ミタイナノハアリマスネ」

 A先生。持前の若さを生かし、来るべき脅威に立ち向かいます。医療法が変わろうと人事がどうなろうと、診るべきは患者さま、治すのは病気であることに、何ら変わりはないのです。

 役所(病院屋上)。

「こういう名言があります。なぜ山に登るのか?そこに、山があるから。今後の医療の目の前に立ちはだかる、大きな山。その山はあまりにも厳しく、遭難の恐れもあります。それでも最前列で進まなければならない医師たち。その羅針盤は今、根本から揺らぎつつあります。若手の熱意がある限り、頂上への挑戦は続きます。しかしその若手の熱意まで奪ってしまえば、登ることの意味さえ失う。データで長生きを証明するのが正義なのか?医療がサービス業でいいのか?このような依然としてタテマエ的な医療の理想を振り返り、もう一度医療の本当の理想を話し合ってみる重要な機会ではないでしょうか?私は、それを望んでいます」

(終)

 

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