へき地での当直はこうだった(非常勤として出向)。
2008年10月23日 連載 コメント (1)夕方。職員がみな帰っていく。夕方の田舎の風景。
「いいとこだなー・・・俺、将来ここがいいなー(浅はか)」
職員食堂でたそがれる。外来を通ると・・・
「こはいかに?」
ばあさんが車いすでうなだれている。
「あああ!あんた!」夫のじいさんが腕をつかむ。
「あんたって?」
「あんたって?あんたに決まってるだろが!」
つまり、調子が悪くなった妻を連れて来た。
「いかんわ。農作業が終わって布団も準備してたら!」
入院の準備がしてある。
検査をしようとするが・・・おばさんナースがじっと見る。
「センセ。検査は、うち呼び出しになってるがな」
「だけど救急、掲げてんでしょ?呼ぶようになってるし」
「呼ぶんですか?本当に?」
「そ、そうですよ。検査しなきゃだって・・・」
1時間後。
「おーい!結果おそいぞー!うわっ?」
ラボに座っているのは、そこの院長。
「はい、出ました!結果!」
「出ましたって・・・」
検査の人間ははるか遠方の町での待機。呼び出しで来るには非現実的な距離だった。
「院長先生、すみません」
「いやいや。近いから」そしてサッと帰る。
ムンテラ。家族総勢16人。
「これは、肺炎といいまして・・」
みな、顔色変えずに僕を見る。鋭い眼光。
「何か、ありますか?」
すると、みなの顔が1つの視線に向けられる(キーパーソン)。田舎の特徴だ。
夜10時。事務当直より電話
「もしもし?開業医の先生から?代って」
『(年寄り医者)あ~・・74歳女性。しんどさでうちに来て、点滴。内容は・・・。そのときの血圧は・・・(延々10分)』
「あの・・・うちに来られるので?」
『兄弟が、ガンの家系』
「あの・・・」
言葉が一方通行で通じない。
結局、2時間後に布団を持って参上、入院(心不全)。
夜中3時。ローカルな救急隊。
『満床とお聞きしたんですけどな~』
「ええ。そうなんですけど」
『あ~やっぱそうですかぁ~』
「申し訳ありませんが」
『なんとか、ならんですかいな~・・・』
5分後。救急隊より電話。
『なんか、院長先生に聞きましたら』
「ななっ?」
『来てくださいってことなんで、行きますわ!というか、もう来ましたわ!』
「うっそ!おれまだパンツ!」
玄関に降りると、やっぱ院長が!
「オーライ!バックオーライ!スターップ!」
深々と院長に頭を下げる。
「これじゃまるで院長先生が当直みたいで!」
「いやいやいやいや!」
「あとは自分が!」
「寝といてください寝といてください!」
「・・・・・」
押されてしまい、当直室へ。
「いいのかなあ・・・」
1時間後、ナースより電話。
『先生。入院した患者さんですが』
「なにか?」
『点滴しても全然良くならないんですが』
「?」
『院長先生に電話したら、<そこに当直医がおるだろが!>って』
「ええっ?」
対処が終わったのは朝の7時。
そ~っと帰ろうとしたら・・・院長が玄関で草むしり。
「院長先生。昨日はいろいろと」
「ああっ!ううん!御苦労さん!」
どこか深く傷つきながら、僻地をあとにした。
コメント
それしかありません。