夕方。職員がみな帰っていく。夕方の田舎の風景。

「いいとこだなー・・・俺、将来ここがいいなー(浅はか)」

 職員食堂でたそがれる。外来を通ると・・・

「こはいかに?」

ばあさんが車いすでうなだれている。

「あああ!あんた!」夫のじいさんが腕をつかむ。
「あんたって?」
「あんたって?あんたに決まってるだろが!」

つまり、調子が悪くなった妻を連れて来た。

「いかんわ。農作業が終わって布団も準備してたら!」

入院の準備がしてある。

検査をしようとするが・・・おばさんナースがじっと見る。

「センセ。検査は、うち呼び出しになってるがな」
「だけど救急、掲げてんでしょ?呼ぶようになってるし」
「呼ぶんですか?本当に?」
「そ、そうですよ。検査しなきゃだって・・・」

1時間後。

「おーい!結果おそいぞー!うわっ?」

ラボに座っているのは、そこの院長。

「はい、出ました!結果!」
「出ましたって・・・」

 検査の人間ははるか遠方の町での待機。呼び出しで来るには非現実的な距離だった。

「院長先生、すみません」
「いやいや。近いから」そしてサッと帰る。

ムンテラ。家族総勢16人。

「これは、肺炎といいまして・・」

みな、顔色変えずに僕を見る。鋭い眼光。

「何か、ありますか?」

すると、みなの顔が1つの視線に向けられる(キーパーソン)。田舎の特徴だ。



夜10時。事務当直より電話

「もしもし?開業医の先生から?代って」
『(年寄り医者)あ~・・74歳女性。しんどさでうちに来て、点滴。内容は・・・。そのときの血圧は・・・(延々10分)』
「あの・・・うちに来られるので?」
『兄弟が、ガンの家系』
「あの・・・」

言葉が一方通行で通じない。

結局、2時間後に布団を持って参上、入院(心不全)。

夜中3時。ローカルな救急隊。

『満床とお聞きしたんですけどな~』
「ええ。そうなんですけど」
『あ~やっぱそうですかぁ~』
「申し訳ありませんが」
『なんとか、ならんですかいな~・・・』

5分後。救急隊より電話。

『なんか、院長先生に聞きましたら』
「ななっ?」
『来てくださいってことなんで、行きますわ!というか、もう来ましたわ!』
「うっそ!おれまだパンツ!」

玄関に降りると、やっぱ院長が!

「オーライ!バックオーライ!スターップ!」

深々と院長に頭を下げる。

「これじゃまるで院長先生が当直みたいで!」
「いやいやいやいや!」
「あとは自分が!」
「寝といてください寝といてください!」
「・・・・・」

押されてしまい、当直室へ。

「いいのかなあ・・・」

1時間後、ナースより電話。

『先生。入院した患者さんですが』
「なにか?」
『点滴しても全然良くならないんですが』
「?」
『院長先生に電話したら、<そこに当直医がおるだろが!>って』
「ええっ?」

対処が終わったのは朝の7時。

そ~っと帰ろうとしたら・・・院長が玄関で草むしり。

「院長先生。昨日はいろいろと」
「ああっ!ううん!御苦労さん!」

どこか深く傷つきながら、僻地をあとにした。

コメント

ユキ
2008年10月23日21:23

お疲れさまですm(__)m
それしかありません。

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